福岡県那珂川市が所有するテナントビルを巡り、一部の民間事業者に対する便宜供与が疑われかねない賃貸借契約が存在していることが判明(既報)。改めて賃借の状況を調べてみたところ、実際には飲食店経営者が使用しているスペースの管理料を、市民が支払う形になっていることが分かった。
■客席スペース分の家賃を市民が負担
問題のビルは那珂川市が所有する「ナカイチ」。4階に入居するビアガーデン運営事業者と市の指定管理者との間の賃貸借契約で、実際の床面積が57.18㎡でありながら、契約上は16.62㎡で計算されていた。ナカイチの賃料は床面積1㎡当たり2,265円に設定されており、4階ビアガーデンの月額賃料は約3万8,000円程度だ。
格安賃料になるのは、市が40㎡はある広々とした客席(下の写真)を「公共スペース」として賃貸借契約の対象とはしていないためで、業者にはキッチンスペースだけが貸し出された形になっている。誰が聞いてもおかしな話だろう。
問題は、4階部分の不適切な契約が続いている間、本来負担しなくてもいい「管理費」を市民が支払い続けることになる、ということだ。
市はナカイチの管理業務を民間の指定管理業者に委託しているが、その委託費はテナントが指定管理者に支払う家賃を基に計算されている。例えば、4階の場合は契約書にあるキッチンスペース分の家賃が指定管理者に支払われ、残りの面積分は市が管理者に支払う仕組みだ。
そのため、4階のビアガーデン運営事業者が使用していながら賃料が発生していない客席スペースの「管理料」を、市民が支払うという不適切な状態になっている。4階の契約を使用実態に即した内容にすることで、市=市民の負担は軽くなるはずだ。
■背景にあるのは……
ちなみに、ナカイチにかかる令和2年度の管理委託費は年間で2,953万3,000円。4階ビアガーデンの客席部分約41㎡が契約に含まれていれば、毎月約9万円×12か月≒108万円前後の税金が節約できる計算となる。
今年4月からナカイチの管理業務を行っている会社は取材に対し、「賃収が増えれば、管理費が下がる」ことを認めたうえで、「4月に指定管理業者となったばかりで、それ以前の契約の経緯を聞いていない。(4階店舗の賃料は)安いとは感じていた」と話している。
当該契約を締結した当時の指定管理者には、契約の経緯を知るべく質問状を送ったが、出稿までに回答はなかった。
なぜこのような、不可解な契約がまかり通ったのか――。背景を探るための取材過程で浮上したのは、那珂川の“まちづくり”に深くかかわった人物の存在だ。複数の市関係者からその人物と市の親密な関係を示唆する証言が出ており、今度の配信記事で詳しく報じていく予定である。