鹿児島県内の港湾土木業者(マリコン)を中心に組織された「鹿児島県港湾漁港建設協会」と県の癒着が顕在化した。仕組みは単純で、県と協会が結んだ災害協定を利用して入札における総合評価の点数を増し、協会加盟社による公共工事の独占を図るというものだ。お定まりの構図ではあるが、その背景にあるのは県から協会、あるいはマリコン各社への天下りである。
利権に群がる関係者にとっては表面化すれば都合の悪い話。県は関連文書の情報開示に激しく抵抗し、所管課の職員は平気で嘘をつく。情報開示をできる限り遅らせ、その間に対策(逃げ道)を考えるのもよくあるパターンだ。マリコン疑惑を追うハンターの情報公開請求は、県側の意図的な引き延ばしにあい、規定の5倍近くもの時間がかかることになった。
■情報公開請求に抵抗する県
マリコン疑惑を追及するきっかけとなったのは、2016年に県と鹿児島県港湾漁港建設協会が結んだ災害協定。この協定が、港湾土木工事の入札総合評価を歪める原因になっていると睨んだからだ。
最初に情報公開を求めたのは6月23日で、請求書に記載したのは以下の内容だった。
①鹿児島県が民間事業者等と結んでいる災害に関する協定の運用基準(*協定締結の基準、要件などの文書)。
②県が、平成28年に鹿児島県港湾漁港建設協会と結んだ「災害・事故発生時の海上における応急対策に関する協定」に関する全ての文書(*伺いや決裁、協定締結までの経緯が分かる記録文書、鹿児島県港湾漁港建設協会が県に提出した文書等を含む)。
①に対して県は、協定の運用基準は作成していないと回答。②に関しては、「協定締結までの経緯が分かる文書」のみを開示し、他の関連文書については存在さえ明らかにしないという対応だった。
関係部局がそれぞれの都合で災害協定を結んでいる現状には驚いたが、県として運用基準自体を作成していないというのだから仕方がない。無いものを出せとは言えない。しかし、鹿児島県港湾漁港建設協会と結んだ災害協定に関する文書が、「協定締結までの経緯が分かる文書」だけであるはずがない。
協定締結後に災害が起きていれば、取り決めに従って出動要請が発出されているはずだし、それに対する対応の記録も残るはずだ。災害復旧にかかった費用は県が支払うのだから、公費支出に関する文書も残る。災害に備えて協会が日常的に行っている活動の報告書もあるだろう。“関連文書が不足している”――記者は当然抗議した。
これに対し、県の担当者は「請求内容が、協定締結までの経緯が分かる文書に限定したものだと判断した。意図的な非開示ではない」と強弁する。しかし、開示請求書には「災害・事故発生時の海上における応急対策に関する協定に関する全ての文書」と明記している。括弧書きの中の「協定締結までの経緯が分かる記録文書」があくまでも漏れがないよう念押ししたものであることは、子供でも分かるはずだが、非を認めないのが役所。出動要請に関する文書の存在は認めたものの追加で対象文書を出すことを頑なに拒なに拒んだため、やむなく7月25日付けで次の開示請求を行っていた。
・鹿児島県が鹿児島県港湾漁港建設協会と結んだ「災害・事故発生時の海上における応急対策に関する協定」に基づき業者側に要請した内容と、その要請に対する業者側の対応が分かる文書(*業務遂行の有無に関わらず、すべての記録)。
・鹿児島県内で起きた災害や事故を受け、港湾空港課が発注した業務に関する決裁文書、契約書(平成28年以降の分)。
■時間稼ぎ
県側の主張に合わせて譲歩したつもりだったが、この開示請求への対応は、ただの時間稼ぎだった。下が開示決定期間の延長通知である。
前述した通り、最初に関連文書の開示請求を行ったのは6月23日。県は、勝手に一部だけの開示にとどめておいて、改めて請求したとたん「延長」と言い出した。延長通知にある9月4日まで引っ張られた場合、ハンターが求めている文書を入手するまでに70日以上かかる計算だ。鹿児島県情報公開条例が定めた開示決定期限は「15日以内」となっており、規定の5倍近くの時間を無駄にされた格好となる。隠蔽の臭いが濃くなったと言うべきだろう。
今月8日に開かれた自民党鹿児島県連の会議の席上、外薗勝蔵県議会議長がマリコン業界を追求するハンターの記事について言及し、不快感を示したという。土建屋でもある議長にとっては、目障りな記事ということだ。県の土木部系職員にしても、天下り先との関係を批判するハンターに、これ以上の材料を与えたくないというのが本音だろう。だが、どれだけ抵抗しても無駄なあがきでしかない。鹿児島県とマリコン業界の闇については、さらに詳しく報じる予定だ。