【自民党総裁選】派閥流動化でもキングメーカーは元総理

河野太郎行革担当相、岸田文雄元外相、高市早苗元総務相の3人が出馬表明している自民党の総裁選。第4の候補の出馬も取り沙汰されるが、永田町では「河野と岸田による事実上の一騎打ち」という見方が圧倒的だ。

若手議員の活発な動きを受けて派閥の締め付けが難しくなっているが、勝敗の鍵を握るとみられているのは、やはりあの人――二度も政権を投げ出した安倍晋三元総理である。

■自主投票確実の麻生派、迷走する二階派

麻生派の領袖・麻生太郎副総理兼財務相は河野氏の出馬に「やる以上は勝つつもりで」と激励したが、実際に支援するのは岸田氏だという。ある麻生派の議員は、情勢をこうみている。
「麻生派として、1人に絞って特定の候補者を支援することはない。自由投票になる」

昨年の総裁選で官房長官だった菅義偉氏の支持を最初に打ち出して政局の主導権を握った二階派は、石破茂元幹事長の擁立に失敗。岸田氏の党改革案で二階俊博幹事長の退任も決定的となっており、派内の焦りは増すばかりだ。

「石破氏の議員を二階派に取り込もうという魂胆がバレてしまった。プライドの高い石破氏はへそを曲げてしまった。うちの派閥を頼る奴はいないだろう。自主投票になるかもしれない」(二階派議員)

■安倍にひれ伏した河野、岸田

落日の権力者を高みから見物しているのが、新たなキングメーカーになりそうな安倍晋三元総理である。

「原発ゼロ」などの主張から“改革派”とみられていた河野氏は、出馬表明の記者会見で突然原発再稼働を容認する発言を行うなど大幅に軌道修正。「保守」という言葉を繰り返して安倍にすり寄った。この姿勢について、河野氏支援の議員は次のように言い訳する。
「威勢だけよくても、票が出ないと勝てません。最大勢力である細田派は実質的には安倍さんのもので、その意向をは無視できません。だから、河野氏はわざわざ安倍氏を訪ねて出馬の意思を伝えに行ったんです」

安倍にすり寄ったのは岸田氏も同じで、当初「森友学園の再調査も」と明言していたにもかかわらず、元首相の不興を買ったとわかるや「再調査はしない」――。岸田氏の出馬を好意的にみていた国民に、弱腰の印象を与えてしまった。

安倍氏は高市氏の支援を打ち出し、細田派からも推薦人を出すよう指示を出している。3人の候補者すべてが、最大派閥を実質的に率いる安倍氏にひれ伏すといった状況だ。

細田派の議員が、「安倍さんは、自分こそがキングメーカーなんだと上機嫌ですよ」と打ち明ける。

細田派からは下村博文政調会長が出馬に意欲を燃やして推薦人を集めていたが、「下村氏は14、5人まで推薦人を集めた。派内で『安倍氏も下村氏』という情報が流れて、一気に20人を超えた。だが、話を聞いた安倍さんは『話が違うだろう。下村氏は何を調子よくやっているんだ』と不快感を示したと聞いている。そこへ、菅義偉首相から呼び出されて『総裁選に出るなら政調会長を辞めろ』と脅された。安倍さんの一言で派閥はどうにでもなるという感じだった」(前出・細田派の議員)

一連の経緯を受けて、下村氏は総裁選出馬を断念している。

■高市嫌う細田派の若手

安倍の号令一下、右へ倣へとなるはずだった細田派も、どうやら高市氏でまとまる見込みはない。安倍氏は細田派がまとまって高市氏の支援に回るよう根回しをかけていたが、ここに来て、同派も一枚岩ではないことが明らかになってきたのだ。

「高市が、保守というより右翼と言った方がいいような出馬表明をやったもんだから、ドン引きしている議員がたくさんいる。嫌っていると言った方がいいかもしれない。総裁選は議員だけではなく地方票もある。現実的に高市氏が勝つのは非常に難しいだろう。細田派としては、高市氏でシバリはかけないと思う。それどころか、河野氏や岸田に流れる若手議員も大勢いて、その動きを黙認することになりそうだ。それでも、安倍さんが認めない候補が勝てないのは事実。この国のトップは、安倍さんなんだ」(前出・細田派の議員)

キングメーカーとしてほしいままに振舞う安倍氏だが、枕を高くして眠る日々が続くとは限らない。実は、政局の裏である疑惑が浮上している。

 

 

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