【鹿児島県政の闇⑤】港湾土木総合評価・災害協定加点が招く「談合」

鹿児県は2016年、県内の港湾土木業者(マリコン)が中心になって組織した「鹿児島県港湾漁港建設協会」と災害協定を結び、17年度から入札の“総合評価”で協会加盟業者にだけに「0.4点」を加点するよう、ガイドラインを改定した。

土木部系県庁OBの業界天下りを背景にした露骨な便宜供与だが、災害協定を使った「加点」が、談合を容易にするための道具になっている可能性は否定できない。

鹿児島の港湾土木行政を歪めている総合評価の実態について、検証を進める。

■落札者を決める「評価値」の算出方法

まず、落札者の決定方法を確認しておきたい。鹿児島県では、入札価格が失格基準価格以上で、なおかつ予定価格の範囲内であることが絶対条件。条件を満たした業者の中の、「評価値」が最も高い者が落札する。

評価値とは、入札に参加した者に対して標準点を与え、さらに各評価項目ごとの基準に従って評価した加算点を加え技術評価点を算出この技術評価点を入札価格で除した値のことである。標準点は、入札に参加した者全てに与えられるもので、調査基準価格以上の入札価格で応札した者には100点を、調査基準価格を下回る入札価格で応札した者には70点が与えられる。計算式にすれば、こうだ。

評価値=技術評価点÷入札価格×定数 =(標準点+加算点)÷入札価格×(定数:100,000,000)

入札価格も重要な要素ではあるが、評価項目ごとの基準に従って算出された加算点が、入札結果に大きな影響を与えることになる。そこで県は、災害協定を利用して加算点を操ることで、マリコン団体に事実上の便宜供与を行える方法を編み出した。

■災害協定で加点「0.4」

マリコン団体と災害協定が結ばれたのは2016年(平成28年)2月。その当時、5千万円以上3億円未満の海上工事における入札の総合評価では、下の評価基準となっていた。

この年まで、「地域貢献度」の中に災害協定による加点の記述はない。それが翌年度は次のように変わる。

県は、災害協定を結んだ団体の加盟業者だけに「0.4点」を加点するようにガイドラインを変更したのだ。満点が10点の評価で、0.4点はわずかな数字と思いがちだが、落札業者を厳しく選別するための道具になる。

県と災害協定を結んでいる「鹿児島県港湾漁港建設協会」に加盟している業者は、評価の満点が「10点」。一方、協会非加盟業者の満点は10-0.4=「9.6点」だ。スタートの段階で大きな差がつくのが分かる。たとえ十分な施工能力があったとしても、応札額や他の評価点で並んだ場合、協会非加盟というだけで勝てないということだ。

協会非加盟業者が落札可能となるのは、多くの協会加盟社が1件受注した後。県の発注工事が少なければ、協会非加盟業者に仕事が回ってくる機会さえなくなる。下は、「企業の施工能力」という評価項目のうちの受注工事量ごとの点数で、年度内に2件目を受注しようとした場合、その業者は初めから「-0.5点」になる。つまり、すでに1件の工事を請負っている業者は、10点満点の加算点が9.5点になるということだ。

前述の通り、協会非加盟業者の満点は9.6点。応札額や他の評価点で並んだ場合、ようやく協会加盟社の9.5点を上回り落札が可能となる。協会に加盟している県内業者は21社。このうち「5千万円以上3億円未満の海上工事」の入札に参加できる業者が一通り受注を決めるまで、非加盟業者は我慢を強いられる可能性がある。総合評価の「0.4点」は、それほど重いということだ。

■調子に乗った港湾マフィア

建設業者は同じような積算ソフトを使うため、各社の応札額が一定の範囲に集まるのは自然な流れだ。施工能力や実績にしても、同じランクの業者であれば、評価で大差がつくことはほとんどないという。同ランクの業者が落札金額で競い合えば、工事価格が下がり、税金の節約にもつながる。しかし、災害協定がもたらす加点が港湾漁港建設協会加盟業者による受注独占を容易にすることで、「談合」の土台が構築されてしまっている。

加点0.4でもこれだけの“弊害”があったのに、県庁OBとマリコンで構成される「港湾マフィア」の欲は膨らむばかり。調子に乗った彼らは、今年4月から災害協定の加点を「0.4」から「0.6」に引き上げるという暴挙に出る。

(以下、次稿)

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