任期満了に伴い来月行われる鹿児島市長選挙の前哨戦が激しさを増す中、元鹿児島市副市長陣営の信じられない“ルール違反”に対し、関係者から厳しい批判の声が上がっている。
■元副市長の事務所に知事の看板と“のぼり旗”
市長選には、元県議会議員の元県議会議員の下鶴隆央氏(40)、元鹿児島市議会議員の上門秀彦氏(66)、元鹿児島市副市長の松永範芳氏(62)の3人が立候補する意向を表明。それぞれの陣営が支持拡大にしのぎを削る状況となっている。
問題になったのは、松永陣営が使用していた看板とのぼり旗。市内谷山にある同陣営事務所の玄関に設置されていたのは、塩田康一鹿児島県知事が7月の知事選で使用した“看板”と同陣営のキャッチコピー「誠実 着実」をデザインした“のぼり旗”だった。
(次の写真は、市内谷山にある松永元副市長の事務所。その下は、知事選で街頭演説する塩田知事。赤い囲みと矢印はハンター編集部。松永事務所が使用した“のぼり旗”は、塩田陣営のものとみられる)
あたかも塩田知事が松永氏と共に政治活動を行っているかのような格好の看板・のぼり旗の配置。ハンターには、関係者から問い合わせが相次ぐ事態となった。
「塩田知事は松永さんを応援しているのか?」、「知事は特定候補の応援はしないと言ったはずだ」、「自民党推薦候補は上門氏。知事は自民党と敵対するつもりなのか」、「下鶴さんは知事のラ・サール、東大の後輩なのに、知事はなんで松永副市長支援なんでしょうか」――。上掲の写真の通りの状況では、松永氏の事務所を見た人が、そうした疑問を抱くのは当たり前だろう。
しかし、直近の定例会見で鹿児島市長選の対応について聞かれた知事は、特定の候補者を支援するようなことはしないと明言しており、周辺にも「中立」を宣言している。誠実な人柄で知られる塩田知事が、わざわざ物議を醸すようなマネをするとは思えない。
■怒る知事陣営の有力支援者たち
そもそも、知事選で塩田氏を支援した人たちが、こぞって松永氏の支援に回っているかというと、そうではない。塩田選対の元幹部は、ほとんど下鶴支援で走り回っているのが実情だ。ではなぜ、松永氏の事務所に塩田知事の看板やのぼり旗が置かれているのか?
塩田陣営の中核にいた複数の関係者に聞いたところ、塩田氏の看板やのぼり旗を松永事務所に設置していいのかどうかの相談を受けた人間は皆無。知事周辺も「聞いていない」と断言する。肝心の塩田知事本人が「迷惑」だというのだから、知らないところで勝手に事が進められたのは明らかだ。
知事本人の意向を無視して、あたかも知事が松永氏を支援しているかのように見せかけたとすれば、有権者を騙す非常にアンフェアな手法である。それで一票を稼ごうというのだから、詐欺的な選挙戦術と批判されても仕方があるまい。19日、市内にある松永後援会の本部事務所にコメントを求めた。
「谷山の事務所でそんなことをやっているとは、取材を受けるまで、まったく知らなかった。驚いている。事務所として知事の看板やのぼり旗を使用したのではない。事実確認したら、ただちに撤去するよう指示する。松永本人にも確認したが、まったく知らなかったと話している」(事務総長だという市役所OB)
塩田知事本人も、松永氏の後援会も知らないところで、誰かが“知事の支援”を偽装した形。ある塩田知事の有力支援者は、次のように話している。
「知事選で塩田陣営の手伝いに入った選挙ブローカーやその仲良しグループが、勝手にやったことではないのか。まさに詐欺的な手法だ。こんなことをやっていると、知事本人が自民党をはじめいろんな方面から疑いの目を向けられることになる。自分たちの利益しか考えない身勝手な連中が、知事を苦境に追い込むようなことは容認できない。知事は中立だ。巻き込むようなマネは、絶対に許さない。松永さんも、かえって迷惑だろう」
鹿児島市長選挙は、11月22日告示、29日投開票の予定で行われる。