公文書の情報公開を巡り、市役所に呼び出した一般市民を幹部職員が「手を引け」などと恫喝したり、明らかに隠蔽とみられる行為を繰り消している福岡県八女市(三田村統之市長)が、市発注業務の決裁文書や契約書を保有していないことが明らかとなった。
一連の文書は、最初の開示請求から2か月以上経った現在も見つかっておらず、誰かが意図的に廃棄したか元々作成されていなかったかを疑わざるを得ない状況。市は「不存在」を認めており、発注業務への支出根拠が否定された格好となっている。
公文書が意図的に廃棄されていれば、公文書毀棄に問われる可能性もある。
■意図的廃棄か“未作成”か
ハンターが八女市に開示請求していたのは、市道整備工事に伴い実施された測量設計業務委託の関連文書。平成28年度から30年度までの間に発注された3件の業務委託の、積算書、下見積り、業者選定理由が分かる文書、仕様書、契約書及び成果物を開示するよう求めていた。
これに対し八女市は、開示決定期限を延長して時間稼ぎ。その間、同じ内容の開示請求を行って、いったん3件とも「不存在」としていた八女市内の女性への決定を取り消し、開示をやり直すなど迷走を続けていた。
同市が16日付けで出したのは、3件の業務委託関連文書の一部を開示するという「部分公開決定」と、文書そのものの存在を否定する「不存在決定」。『市道荷稲五丁野線用地測量設計業務』(平成30年度)については、成果物を除く積算書、発注伺い、契約書、仕様書のすべてがないという結果だった。
文書が存在しない理由として挙げられているのは『工事発注業務において当該資料を確認閲覧後、保管場所への返却不備のため』という訳の分からないもの。市側に確認を求めたところ、「工事を発注した時や監査を受けた時に、元の場所に返さなかったのでは……」と無責任な回答で、ハッキリした理由は分からないという。
実際の土木工事が施行されるにあたって、当該資料は一部を除きまったく必要のないものだ。必要となるのは測量設計の成果物だけで、測量設計業務を委託された業者との契約書や伺いは、その段階で動かす必要さえない。“工事発注業務において~返却不備”という主張は、虚偽と断言してもよい。
不存在決定通知には、市側が言う“監査”がどうのという文言は記されておらず、その場の言い逃れとしか思えない。1件の業務委託だけが、監査の対象になるはずがないからだ。すると、考えられるのは次の二つの理由しかない。
・意図的に廃棄した。
・初めから作成していない。
つまり、都合の悪い内容の文書が含まれているため何者かが捨てたか、もともと対象文書を作成せずに、なあなあで業者に仕事をさせたかのどちらかということだ。
八女市は「そんなことはない」と否定するが、対象文書がない以上、廃棄や未作成を疑われても否定の仕様はない。受託業者も契約書を持っているという可能性はもちろんあるが、それが現物だという保証も証拠もない。本来、役所内にあるべき文書が「不存在」になるなど、あり得ないことだからだ。
業務委託の契約書など関連文書が不存在になった八女市の異常事態について、行政の仕組みに詳しい市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は次のように話している。
「決裁や契約書がないなどいう話は聞いたことがない。杜撰というよりデタラメ。市民への説明責任が果たせないばかりか、業者への支出根拠が失われた状態だ。監査で引っかからなかったのが不思議だが、改めて住民監査請求や住民訴訟が提起されれば、八女市に勝ち目はないのではないか。こうした状態を見逃してきた議会にも責任があるのだから、しっかりと市の実情をチェックすべきだろう」