安倍辞任後も声上げ続ける|ヤジ排除問題原告らが白熱トーク

北海道・札幌で発生から1年3カ月が過ぎる「首相演説ヤジ排除問題」で10月18日、北海道警察を相手に国賠訴訟を闘っている原告2人が札幌近郊で市民向けの講演会に招かれ、安倍晋三前首相退任後も変わらず問題を追及し続ける姿勢を示した。

■不当に排除された桃井さん、大杉さんらが講演

札幌に隣接する北広島市で講演を行なったのは、国賠訴訟の原告・桃井希生さん(25)と訴訟代理人の神保大地弁護士(札幌弁護士会)。地域で活動する「西の里・虹ヶ丘 憲法九条の会」が例会の一環で講演会を企画し、同会員など約20人が足を運んだ。ヤジ排除の被害当事者が公の場で事件の報告に臨むのは、前首相退任後初めて。(下の写真参照)

桃井さんは昨年7月、前首相が参院選の応援演説に立ったJR札幌駅前で「増税反対」などと叫んで大勢の警察官に身体を拘束され、その後約90分間にわたって執拗なつきまといを受けた。

講演では、先に「安倍やめろ」とヤジを飛ばして「排除」された大杉雅栄さん(31)に周囲の聴衆から奇異の眼が向けられていたことを振り返り、「あの排除は絶対おかしい、何もしないまま帰ったら自分を責めることになると思った」と、声を上げたきっかけを語った。

同席した神保弁護士は、のちに道警が警察官職務執行法と警察法を排除の根拠としたことに、「言いわけを考えるのにえらい時間をかけた挙げ句、苦し紛れに警職法とかを持ち出した」と批判。大通地区でプラカード掲出を妨害された人たちのケースを引き合いに、「安倍さん支持のプラカードはまったく妨害されず、批判的なメッセージだけが排除された。警察は表現内容によって対応を変えたことになり、これは大問題」と、警職法適用に無理があることを示した。

約1時間半にわたった講演会では、おもに「言論・表現の自由」の重要さが再確認され、桃井さんが「あきらかにあっち(安倍前首相)のほうが声が大きく、こちらにも言う自由はあった」と強調、のちの訴訟提起については「裁判を通じて『黙ってないぞ』と言い続けたい」と、改めて決意を表明した。

神保弁護士は「安倍さんが演説したのは公道上。誰でも反論の自由があり、議論してもいいほど。それが迷惑なら主催者が対応すればよく、警察が出てくるのはあり得ない」と指摘した。当日は証拠提出された複数の映像も上映され、主催した「九条の会」事務局長の近藤務さん(79)は「改めて『こんなひどいことがあったのか』と実感した。表現の自由は誰にとっても身近な問題で、とても他人事ではない」と、問題への関心を大きくしていた。

この日は小樽市でも一般向けの講演会があり、「安倍やめろ」の大杉雅栄さんが講師に招かれた。おもに表現の自由が話題となったといい、参加した1人は「大杉さんの問いかけは極めて明瞭で、よい講演会だった」と話している。

大杉さん・桃井さんが道警を訴えた国賠訴訟は現在、札幌地裁で審理継続中。次回・第5回口頭弁論は10月28日に開かれ、被告の道警が新たな反論を提出することになる。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 

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