「日本で一番悪かった」元刑事、依存症予防教育アドバイザーに

北海道警察で違法な拳銃摘発捜査を続け、覚醒剤使用などで服役した経験を持つ元警部・稲葉圭昭さん(67)が10月初旬、薬物依存などの正しい知識を発信して依存症への理解を促す「依存症予防教育アドバイザー」資格を取得した。北海道内の有資格者第1号となった稲葉さんは、アドバイザー認定を機に「自身の体験を活かして正しい知識の普及に努めたい」と、今後の活動に意欲を見せている。

■清原和博さんも取得目指す資格

予防教育アドバイザー制度は、厚生労働省の補助金事業として2018年に発足、おもにアルコール、薬物、ギャンブル、ゲームの各依存症について正しい知識を身に着け、予防のための「ライフスキル」を伝える人材を養成する目的がある。

制度を設けたNPO法人アスク(東京都中央区、今成知美代表)によると、現時点の有資格者は141人。依存症の元当事者や家族、支援者などが認定の対象で、医療関係者や教育関係者、司法や矯正行政の専門家などにも有資格者が増えているという。近年では俳優の高知東生さんが同資格を得て受講講座の講師を務めているほか、野球解説者の清原和博さんが取得を目指している話題などが伝えられている。

稲葉さんが資格を得たのは、本年10月6日。認定に際しては自身が体験した薬物依存以外の依存症についても幅広い知識を得る必要があったが、「薬物事件で捕まえるほうと捕まるほうを経験した奴はなかなかいないだろう」との思いで発奮し、丸2日間の講座を受講、北海道で初めて認定試験に及第した。

「自分の体験が世の中のためになるなんて、人生はわからない」と稲葉さん。認定日は奇しくも67歳の誕生日で、「これをきっかけに生まれ変わります。依存症がどんなものか、世の中の理解を進めていきたい」と、アドバイザーとしての活動に意欲を見せる。今後は、一般市民が対象の講演や教育現場での講義で講師を務めるなどの形で、予防教育に貢献していくことになるという。

稲葉圭昭さんは1976年に北海道警採用。本部機動捜査隊、札幌中央署刑事2課などを経て、93年から銃器捜査に携わる。拳銃摘発のための違法捜査に関わり(いわゆる「稲葉事件」)、2002年に覚醒剤使用などで逮捕、免職となった。裁判では実刑判決を受けて服役し、11年9月に刑期満了。現職時代に関わった違法なおとり捜査事件では、拳銃所持で服役したロシア人男性の冤罪を証言、のちの再審無罪判決を導いた。現在、いなば探偵事務所( http://inaba-tantei.com/ )代表。著書に『恥さらし――北海道警 悪徳刑事の告白』(講談社)、『警察と暴力団 癒着の構造』(双葉新書)がある。16年には自著が俳優・綾野剛さん主演で映画化され、『日本で一番悪い奴ら』のタイトルで公開された。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 



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