全国町村会は、地方自治法第263条の3の規定により総務大臣が所管する「地方6団体」として位置付けされており、国への意見申し出、国会への意見書提出が認められている組織だ。全国の都道府県に町村会が置かれており、福岡県では31町村が「福岡県町村会」を構成する。
その福岡県町村会の会長で全国町村会の副会長も務めているのが、指定暴力団「太州会」との密接な関係を背景に田川郡大任町を支配してきた永原譲二町長である。
地元選出の国会議員まで味方につけ我が世の春を謳歌してきた永原氏だが、足元の田川郡では中核都市・田川市で弟の二場公人氏が3期目を目指した市長選において惨敗。大任町内でも、町政刷新を訴え、たった一人の戦いを続けてきた次谷隆澄町議がトップ当選するなど影響力低下が顕著となっている。
そうしたなか、“記録に残る限りでは初”となる福岡県町村会の「会長選挙」が、来月6日に行われることになった。
■町村会首長アンケートの結果は・・・
ハンターは昨年10月、大任町を除く30町村に対し、それまでに調べ上げた永原氏と太州会の関係を報じた際の記事などを同封した上で、大分県日田市にある自身の長男名義の別荘で「賭け麻雀」を行っていたことも明記。暴力団追放に力を入れてきた本県において、永原氏のような人物が福岡県町村会の会長として相応しいと考えているのかどうかを問うアンケートを実施した。
回答したのは、たったの9町。残り21町村からは何の連絡もなかった。関係者を通じて無回答となったある首長に理由を尋ねたところ、返ってきたのは「永原のことには関わりたくない」という困惑気味の回答。別の首長は、「(永原氏が)いい人だと思っている町村長は少ないはずだけど」と語っていた。永原氏への不信感は、確実に広がっているとみて差し支えあるまい。
回答した9人の首長のうち、“永原譲二町長を、福岡県町村会の会長として相応しいと思われますか?”という問いに対して、『(相応しいと)思う』と答えた首長は皆無。9人すべてが『分からない』か、無回答という結果だった。
判断理由は、事前に協議でもしたのか、「真偽が確認できない」「真偽がわかりかねる」「内容を把握していない」という当たり障りのないもの。しかし、そのうちの2件は、永原氏を支持する首長とそうでない首長の、それぞれの姿勢が如実に示される文言が加えられていた。
永原氏を強く支持したのは篠栗町の三浦正町長だけ。判断理由を記入する箇所には、次のように記されていた。
・福岡県町村会会長としての職責は十分果たしてある
・大任町政に関する記事であるが、真偽はわかりかねる
・大任町政と県町村会長を結び付けることに無理がある
真偽云々は別にして、「大任町政と県町村会長を結び付けることに無理がある」という三浦町長の主張は、著しく合理性を欠く。ハンターが問うたのは、暴力団と密接な関係を持つ人物に県町村会のトップを務める資格があるのかということ。質問書に同封した記事の内容は、大任町政に関するものというより永原氏個人の暴力団とのかかわりを示すものだった。そもそも、悪政を行う首長が町村会の会長を務めること自体が不適当であり、町政と町村会を結び付けたとしても、なんら「無理」はあるまい。三浦町長は、最後にこうも付け足していた。
・大任町政や大任町長の資質については、大任町民が選挙等、法に定められた手法により明らかにすべき
質問の意味が理解できていないのか、あるいは理解しながらあえて反駁したのかのどちらかだろうが、ハンターが確認を求めたのは「県町村会の会長としての資格・資質」について。町政がどうの、町民がどうのという話ではない。「真偽がわかりかねる」というのならば、“自分で聞け”と申し上げておきたい。それが町村会の一員としての義務だろう。
大半の首長が回答もせず、だんまりを決め込む中、一人まっとうな意見を記した首長がいた。
・報道が事実であれば由々しき問題。本件の報道については20数年前のことなどもあり、当事者(本人)の弁明も聞かない事には、今の時点では答えようがない。
この首長が述べている「20数年前のこと」というのは、2002年(平成14年)7月2日に、当時福岡県大任町議会の議長を務めていた楠木重明氏(故人)が、飯塚オートレース場そばの路上で銃撃された事件。ハンターは、銃撃事件を起こして刑に服したのち出所していた男性本人に取材し、男性に直接1,400万円、さらに追加で太州会系元組長を通じて1,000万円を渡したとされる永原町長の関与を報じていた。たしかに、事実なら「由々しき問題」なのだが、この件に関するハンターの記事に間違いは一切ない。
〇大任町議長銃撃事件の真相(上)|指示した組長が漏らした「永原譲二」「1000万円
〇大任町議長銃撃事件の真相(中)|出所直後、永原町長から1400万円
〇大任町議長銃撃事件の真相(下)|黒幕判明で明らかになる「動機」
この他、首長らへの質問書に添付した記事として、永原氏の「企業舎弟」時代の記念写真について報じたものがある(【独自入手】密接交際の証明|永原譲二大任町長と指定暴力団会長の「記念写真」)。その記事に添付した証拠写真を再掲しておきたい。
■問われる町村会の「良識」
来月6日に予定される県町村会の会長選挙を前に、改めて福岡県内の町村長に問いたい。
・永原氏は、町発注工事の入札結果を非公開にし、国から「違法」との指摘を受け改善するよう指導を受けたあとも、自身の建設業界支配を隠すため、「ヤクザが業者に1,000円の素麵を1万円で売りつけた」「町民の生命・財産を守るため」などと主張し、非開示を続けてきた。国から違法を指摘されるという前代未聞の事態を招くような、身勝手かつ異常な町政を行う人物が、県町村会のトップとして相応しいのか?
・暴力団との関係を背景に、周辺自治体や町議会を牛耳ってきた人物が、本当に県町村会のトップとして相応しいのか?
・「情報公開」の勉強会を開いたに過ぎない田川市議らを痛めつけるため、一部事務組合である「田川郡東部環境衛生施設組合」を扇動して百条委員会を設置し、呼び出しに応じないとして刑事告発だと騒ぎ立てる人物が、地方自治をリードしていくべき立場の町村会の会長に相応しいのか?
首長たちに「良識」さえあれば、答えは一つしかないはずだ。
町村会の会長選挙は来月6日。永原氏の会長任期延長に異を唱え、遠賀郡水巻町の美浦喜明町長が立候補しており、一騎打ちの選挙戦は予断を許さぬ状況となっている。県町村会によれば、会長選挙は記録に残る限り初めてのことになるという。