福岡県田川市の「一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託業者選定のプロポーザル」で、業務を受注した「早雲商事」と「クリーン北部九州」及び落選したある業者(以下「A社」)が提出した業務提案書に評価点を記入。元官僚や地方自治体の首長経験者、他県の廃棄物関連業者といった有識者と比較検討を行った。
その結果、市側が、A社が不利になるよう評価点が「0」になる配点基準の項目を設けていたことが判明した(既報)。選定結果を誘導した証拠ともとれる事実だが、さらに検証を続ける中、恣意的な採点で別の項目におけるA社の得点を低くし、内容に乏しい提案書を提出した業者にあり得ない加点を行っていたことも分かった。市役所主導の入札妨害が疑われる事態だ。
■不自然な加点に「おかしい」「意図的」の声
ハンターの検証に加わった有識者全員が、「おかしい」「意図的に特定業者の点数を上げたり、逆に下げたりする評価が行われた疑いがある」などと判断した項目がある。業務提案書の一項目目、「一般廃棄物収集運搬業務委託についての心構え」である。A社、早雲商事、クリーン北部九州の順に提案内容と評価点を示す。
一読すれば分かるとおり、クリーン北部九州の提案内容は日本語として「おかしな記述」(元官僚)ばかりだ。主語と述語がつながらない部分さえある。にもかかわらず、同社への評価は20点。11点のA社の記述と比べると、「なんでこうなる?」(元官僚)、「意図的な水増し採点の結果」(首長経験者)というのが実感だ。記者も、水増し採点を確信せざるを得ない。
この項目の不透明極まりない採点によって、A社とクリーン北部九州との間に9点の差が生じる。A社と早雲商事の差はなんと14点だ。前述した「本社・営業所」項目での点数差と「心構え」の点数差を合算すると、次のように大きな差がつく。
・A社と早雲商事の差=34点
・A社とクリーン北部九州との差=17点
この不可解な評価で生じた差がいかに重大な意味を持つのかについては、市がホームページ上で公表している「評価結果」で3業者の総合点を比較してみれば一目瞭然、事務方や一部の審査委員が結果を誘導するようなマネをしていなければ、A社が選定1位になっていた可能性さえある(*下の表、参照)。
実は、有識者が揃って“水増し不正”を指摘した項目が、もう一つある。前述のとおり、A社は「本社所在地」の項目で「営業所」があるにもかかわらず0点にされたが、逆に「0点」が当然のクリーン北部九州の記述に、加点していた項目があるからだ。
それが下。『環境マネジメントシステム』への対応について聞かれたこの項目で、クリーン北部九州の回答は「ありません」の5文字だけ。しかし、同社はなぜか「4.4点」を得ていた。「間違い」だったのか「故意」なのか判然としないが、修正されていない以上、審査委員が同社の点数アップを図ったということになる。もちろん、不正としか言いようのないこの加点が、上掲の評価結果に影響を与えたのも確かだ。
検証結果を踏まえると、このプロポーザルはどこから見ても不自然。プロポーザルの評価項目も、評価基準も、配点も、さらには採点そのものにも疑問符が付く状況だ。検証を手伝った有識者3人も、「不正を疑うべき」と口を揃えた。
■不正の背景
問題のプロポーザルを巡っては、田川市に本件を含む複数の情報公開請求(2021年6月)を行った翌日、同市を選挙区に抱える福岡11区の武田良太衆議院議員(当時は総務大臣)の事務所から記者に「なかったことに」と圧力。市側はその後、評価表、評価個票、審査委員の顔ぶれが分かる文書などを非開示にするという非常識な対応で、隠蔽姿勢を露わにした。当初は、どこの自治体でも当たり前に公表する契約書の相手先――早雲商事とクリーン北部九州――の社名も非開示にするという異常さだった。
情報非開示に承服せずハンターが提起した二件の審査請求(異議申し立て)では、いずれも非開示処分の散り消しが決定。改革派市議らの百条委員会での追及に加え、4月の市長選で前任者の二場公人氏が落選し、情報公開の徹底を掲げた村上卓哉氏が当選したことなどを受け、ほとんどの文書が開示されている。その結果、明らかになったのが不正が強く疑われるプロポーザルの審査過程である。
プロポーザルの担当課は市環境対策課(今年4月から「環境政策課」)だったが、今年8月の異動まで課長を務めていた池口芳幸氏(現・市立病院総務課長)は昨年1月、早雲商事のゴルフコンぺに幹事として参加するなど同社の代表とべったりの関係。証拠のメンバー表(下、参照)を示されても、「右半分は同級生のゴルフ会。左半分が早雲商事のコンペ」などと不合理な釈明に終始しているという。
プロポーザルの審査項目や採点基準を決めたのは池口氏が課長だった環境対策課。池口氏は、自己保身のためなら違法行為も厭わない永原譲二大任町長と近いとみられており、最近では、市に提出された情報公開請求の内容や請求者である田川市議会議員の氏名を永原氏に漏らし、それがもとで刑事事件に発展することが確実な情勢になっている。
ちなみに、不正が疑われるプロポーザル審査を経て業務を受注したクリーン北部九州の代表者は、経済や福祉関係の活動などを通じて、永原町長の息子の建設会社社長と極めて近い関係にある。
入札妨害によって結果が歪められたプロポーザルではないのか――?疑惑を解明する責任は市議会にある。