脅された田川市長|「企業舎弟」の面目躍如、永原譲二大任町長暴走の背景

今月6日、西日本新聞の朝刊1面に、永原譲二大任町長が村上卓哉田川市長に対し、自身が田川市に発出した文書の開示を思いとどまるよう圧力をかけていたことを報じるスクープ記事が掲載された。(*下が西日本新聞7月6日朝刊の紙面)

自治体の首長が他の自治体のトップを脅すという、前代未聞の出来事。事実関係について調べたところ、“事件”の背景に、田川市のトラブルメーカーとなっているある課長の守秘義務違反や、“言うことを聞かなければ両自治体の連携を止める”、“田川市のごみは受け入れない”などといった、永原町長による強要・脅迫行為があったことが分かった。

■「あんた、4年間もたんよ」

事の発端は、田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長)が整備を進める“ごみ処理施設”の関連書類を、非開示にしている理由を説明した永原町長名義の文書。同文書は、今年3月の田川市議会の厚生委員会でいったん配布され、会議終了前に回収されていた。

4月の市長選で「情報公開の徹底」を掲げた村上氏が当選したことを受け、佐藤俊一田川市議が同文書を情報公開請求。これを聞いた永原町長が田川市役所を訪れ、「非開示」にするよう村上市長を説得していた。

関係者の話を総合すると、田川市役所における永原町長と田川市長の会談は先月23日。大任町からは永原氏と随行の職員が1名、田川市側は村上市長と3人の幹部職員が出席し、1時間ちょっとの間、永原氏の「独演」が続いた。

その中で永原町長は、「自治体間で(問題の文書を)表に出さないという申し合わせがあった」とする根拠不存在の主張に基づき、自身の名義で発出した説明文書を開示しないよう強く要求。「(文書を)出すのなら、田川市長名に作り替えた文書を出せ」と、情報公開制度を無視した要求を繰り返した。

首を縦に振らない村上市長に対し、「(田川郡東部環境衛生施設組合の)議会から出ていけばいい。いやなら自分たちで(ごみ処理施設を)建てりゃいい」、「あんた方には協力せん」、「こんなことしとったら、あんた、4年間もたんよ」などと脅していた。

また、関係者に対する発言という形で「お前たち、覚悟しとけよ。田川市との連携すべて破棄するぞ」というヤクザ顔負けの脅し文句も飛び出したという。

田川市民の暮らしを脅しの材料にした立派な強要・脅迫で、事情を知った複数の田川市議が県庁で会見を開き、永原氏を刑事告発する方針であることを表明している。

■問題職員の守秘義務違反

西日本新聞の記事を読んで初めに浮かんだのは、田川市内部の開示請求に関する情報を、どのような経緯で永原氏が知ったのかという疑問だ。問題の文書は、永原町長が田川市に発出し、議会の中で市議らが共有したもの。その時点で田川市の公文書となっており、永原町長に「開示するな」と言う権限はない。そもそも、永原氏に佐藤市議の開示請求を知らせたのは誰か――。

大任町関係者によれば、永原氏に「ご注進に及んだ」(関係者の話)のは、田川市の池口芳幸環境政策課長。わざわざ大任町に出向き、永原町長に開示請求の内容や請求者の名前まで明かして「指示を仰いだ」(同)という。池口氏がゴミ処理施設の担当課長という立場にあるのは確かだが、やったことは明らかな守秘義務違反。処分対象であることは言うまでもない。池口課長の守秘義務違反に関与した別の幹部がいたとすれば、その人物も同罪である。

池口氏を巡っては、2021年5月に実施された「田川市一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」の業者選定プロポーザルで審査委員を務めていながら、選定1位となった早雲商事(田川市)が昨年1月に開催したゴルフコンぺの会場を、自身の会員権を利用して予約。さらに、コンペはもちろん2次会にも参加していたことが判明し、百条委員会でも追及の対象となっていた。

さらに今年4月に行われた田川市長選の投開票日には、3選を目指していた二場公人前市長への投票を呼び掛けるメッセージを同窓生間のグループラインに投稿。ハンターの報道で違法行為が明るみに出、懲戒処分に付されている。公務員としての自覚を欠く池口課長が、またしても一線を越えた格好だ。

■「録音データ」の存否にこだわる永原町長

みっともないのは、西日本新聞の報道直後に始まった永原町長のドタバタ劇だ。6日の新聞報道でよほど慌てたらしく、翌日開かれた消防関係の会議で新聞報道の内容を否定するため、近隣町村の首長らをそばにおいて村上市長を詰問。合理性のない話を繰り返し、市長に「録音してないだろうな」と念を押したという。

日を置いて開かれた田川郡東部環境衛生施設組合の会議でも、脅迫・強要を否定。再び永原氏自身の暴走を正当化するための演説が繰り返され、出席した関係者を呆れさせた。

田川市長を脅してまで「出すな」と言っていたはずの開示請求対象文書を会議出席者に配るなど問題の火消しに躍起となった永原町長は、この会議でも録音データに触れ、自分を安心させたいのか「村上市長はないと言った」とこだわりを見せていた。

「語るに落ちる」とは、まさにこのこと。録音が残っていようがいまいが、問題のない発言なら何も困らないはず。何度も録音データの存否に言及するのは、表に出るとまずい発言があったからに他なるまい。

「脅していない」と強弁しても、真実は一つだ。指定暴力団「太州会」の企業舎弟から成り上がった永原氏は、暴力の怖さをチラつかせることで、周りを屈服させてきた。脅しすかしはお手のもの。今回も、ごみ処理を盾に凄めば田川市長は言うことを聞くと思ったのだろう。しかし、独裁者は現実を見誤った。これまでなら沈黙を余儀なくされていた人たちがハッキリと「NO」を突き付けるようになったいま、永原町長による田川市長への「強要・脅迫」を疑う人は少ないとみられている。

永原氏の義弟である二場公人氏の田川市長選での敗北、永原氏自身の福岡県町村会会長選挙の落選、大任町政の刷新を掲げて町会議員選挙を戦い抜いた次谷隆澄氏のトップ当選――。永原氏の暴力支配に、終わりが近づいている。

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