東京地検特捜部が、国際政治学者として知られる三浦瑠麗氏の夫でコンサルティング会社「トライベイキャピタル」の社長・三浦清志被告を業務上横領容疑で逮捕して4か月が過ぎた。三浦被告は特捜部の取調べに否認を続け、現在も拘置所で身柄を拘束されている模様だ。
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「容疑は2019年10月、3回にわたって三浦容疑者が関係していた太陽光発電システム投資会社から4億2千万を引き出し、トライベイキャピタルの口座に入金させたというもの。業務上横領事件としては巨額でかつ、否認が続くので厳しい求刑となるだろう」(捜査関係者)
三浦被告が否認を続けているので、初公判は数か月先になるとみられる。そうした中、三浦被告の周辺は慌ただしさを増している。
妻の瑠麗氏が社長の「山猫総合研究所」という会社がある。かつて三浦被告が社長を務めていた同社は、衆議院第一議員会館そのばにある建物の1階、三浦被告のトライベイキャピタルなどと同じところにオフィスを構えていた。しかし法人登記を見ると5月1日に渋谷区に移転。自宅住所も、港区の六本木ヒルズから麻布のマンションに移っていた。瑠麗氏がSNSなどで発信していた長野県軽井沢町にある別荘も6月7日に売却されたことが分かっている。
一方、所在地の変更こそないものの、トライベイキャピタルの社長は、5月に田中肇氏という人物に交代していた。同社のある関係者が背景を話す。
「家宅捜索、逮捕という流れになりトライベイキャピタルが手掛けていた太陽光発電システムなどの事業はとん挫。これまで仕事をしていた得意先や投資家、関係者も軒並み引き始めた。瑠麗氏の会社も、トライベイキャピタルと同じ事務所では沈みかねないということで移転したそうです。そりゃ、トライベイキャピタルと同じ所在地なら、なんの容疑もない瑠麗氏の会社まで共犯のように思われかねませんからね。事件の影響で仕事も減り、財政事情も苦しいという理由もあるでしょうけど」
ちなみに瑠麗氏の会社の新しい住所は、渋谷駅前のセルリアンタワー15階とあり、インターネットで検索をかけるとレンタルオフィスのようだ。六本木ヒルズの自宅の家賃は月額100万円以上だったとみられるが、新居はかなりリーズナブルといえそうだ。
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6月に国会が閉会となり、岸田文雄首相が解散総選挙を先送りしたことで永田町には安堵感も流れる。しかし「国会が閉会になっている時こそ、警戒が必要だ。逮捕許諾請求は不要になるからね」と自民党の大臣経験者はそう話す。
2020年6月18日、公職選挙法違反(買収)で逮捕された河井克行・案里夫妻。東京地検特捜部は「逮捕許諾請求もやむなし」と強硬だったが、結局、国会閉会翌日の逮捕となった。
「国会が終わってから特捜部がバッジを狙うというのは、永田町の常識。身に覚えがある人はつらいところだよ。今、特捜部が狙っているのは大樹総研関連というのは、誰もがわかっている」(前出の大臣経験者)
ある衆院議員の議員会館の事務所には、大樹総研の関連企業に勤めているかつての議員秘書が、つい最近まで出入りしていたという。関係者が、こう打ち明ける。
「『〇〇省に**の資料をもらってくれ』などと平気で頼んでいた。さすがにうちの先生も怒って、出入り禁止を申し渡した」
特捜部の狙いは、「政界フィクサー」と呼ばれる大樹総研の矢島義也氏とそれに連なる永田町や霞が関の人脈だ。そこには三浦被告が複雑に重なり合う部分もある。
特捜部はこれまで、三浦被告の事件に加え細野豪志議員が捜査ターゲットになった「JCサービス」からの不透明なカネの流れに絡み、2度も家宅捜索してきた。特捜部OBの弁護士は、次のように見立てを語る。
「特捜部では春の異動でH検事が副部長になりました。ずっと大樹総研の捜査を担当してきた人です。東京地検の森本宏次席検事も特捜部長時代、大樹総研に家宅捜索をかけたが立件は至らなかった。大樹総研関連の事件に関しては、忸怩たる思いがあるはず。大樹関連では、菅義偉前首相や二階俊博元幹事長など、自民党の大物の名前も取りざたされてきました。森本次席もそろそろ異動が近づいているので、自身が在籍している間に何とかしたいはずです。矢島氏と関係が近いとされるトライベイキャピタルの三浦を追及して立件可能な案件を固めるなら、9月国会がスタートするまでまでの間、まさに今がチャンスなんです」
特捜部の動きから目が離せない。