北海道新聞社(札幌市中央区、宮口宏夫社長)で7月上旬、現職の編集局幹部がパワーハラスメントを苦に自殺したとみられる状況で亡くなっていたことがわかった。同社では本年1月中旬にも常務取締役の男性(62)がパワハラ自殺を疑われる状況で亡くなっており(既報 )、およそ半年間に2人の役員が相継いで急逝する異常事態となっている。
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7月9日午後に亡くなったのは、道新札幌本社に勤める編集局次長の男性(53)。同本社や支局などに所属する複数の記者によれば、次長は先週半ばごろに編集局長から激しい叱責を受け、出勤できなくなるほどのショックを受けたという。亡くなったのは日曜日で、週が明けた翌10日には逝去の情報が会社に伝わった。一般の社員に周知されたのは、さらに一晩を経た11日午前だった。
筆者に届いた情報を総合すると、叱責の理由は編集局人事。同局が示した7月の人事案に宮口宏夫社長が激怒し、これを受けた編集局長が原案をつくった次長を激しく叱責することになったという。問題の人事は旭川支社の社員にかかわるもので、同社員は一昨年春に起きた新人記者逮捕事件で当該記者のケアにあたる立場だったとされる。
社長の叱責は同事件に関連していることが窺えるが、道新は11日の時点で次長急逝の事実自体を外部に伝えておらず、また社内でも死因などの説明がないため、詳しい背景などは確認できない状況。ただ、次長本人が遺書を残していたとの情報が複数の筋から伝わっており、事実ならばそこになんらかの手がかりが記されている可能性がある。
亡くなった次長は函館市出身。北海道外の大学を卒業後、1992年に道新に入社した。おもに政治部畑で長く過ごしたが、社会部の同僚よりも根がリベラルなところがあり、社内外問わず若手からの信頼が厚かったという。自社の後輩には苗字ではなく下の名前の音読みに由来する愛称で慕われ、内勤時代は朝まで若手と飲み明かすこともしばしばだった。
ほかの幹部が笑って見過ごすセクハラをただ一人、毅然と注意するような気骨の主でもあった。今回の訃報には20歳代から50歳代まで幅広い世代の同僚・後輩が「大変なショック」と肩を落とし、とりわけ現場の若手の間では会社への不信感が急速に強まっているという。
筆者は現在、次長急逝の事実関係やハラスメントの有無などを確認する取材を道新に打診中。より詳しい事実が伝わり次第、引き続き本サイトや地元月刊誌『北方ジャーナル』などを通じて発信していきたい。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |