安倍晋三元首相射殺事件から1年| 止まらぬ旧統一教会の金集め

今月8日、奈良市の近鉄西大寺北口ロータリー前で、朝からたくさんの人が行列を作った。衝撃の安倍晋三元首相射殺事件から1年。事件現場には自民党有志による献花台が設置され、大阪府の吉村洋文知事や国民民主党の玉木雄一郎代表、当時の国家公安委員長、二之湯智元参議院議員らが手を合わせた。

東京・増上寺では一周忌法要が営まれ、岸田文雄首相らが参列。国内は安倍元首相の追悼一色に染まったが、事件の発端となった旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のカネ集めや合同結婚式など、反社会的とみられる行為は今もかわりがない。

◇   ◇   ◇

安倍元首相を狙った山上徹也被告が「旧統一教会を母親が信仰し、多額の献金を出したため家族が崩壊した。安倍元首相が旧統一教会と親しいので狙った」と動機を供述。旧統一教会による高額献金などの反社的行為が事件の背景にあり、安倍元首相が旧統一教会の関連団体にビデオメッセージを送っていたことなども判明した。

さらに、多数の自民党議員が応援を受けていた旧統一教会の問題が重くのしかかり、岸田首相は2022年末、「被害者救済法」成立させた。

「法律はできましたが、実態はかわりません」と話すのは、首都圏在住の元信者Xさん。両親が旧統一教会で、生まれたころから日曜日には教会に通うことを強制されていたXさんは、いわゆる「宗教二世」である。しかし、高校、大学へと進むにつれ旧統一教会に不信感をいだくようになり、新型コロナウイルスが大流行していた2020年頃には教団と距離を置くことを決意した。

きっかけとなったのは、信者らに配布されてきた『真の父母様ご聖婚60周年記念と新型コロナウイルス終息のための7日間特別精誠路程』と題されるチラシだった。

「全世界に蔓延する新型コロナウイルスにより、人類は21世紀最大の危機」、「世界で感染者が300万人、死者が20万人を超え、終息の道が見えない状況です」と不安を煽った上で、旧統一教会の韓鶴子総裁が「コロナ終息のため特別精誠祈祷をささげてきた」と信者のために特別の祈りに務めていることが記されていた。

Xさんが、このチラシの意味を解説する。
「真の父母様ご聖婚60周年記念の集会が韓国で開催予定でしたが、新型コロナウイルスで日本から多くの信者が渡航できなくなった。そこで、特別精誠の期間を延長して献金を集めようというのが、このチラシの目的なのです」

確かに、7日間特別精誠路程のチラシには「目的 新型コロナウイルスから世界の人々が守られ、1日も早く終息するように」、「新型コロナウイルスと戦う世界中の医療関係者などが守られ、多くの感染者が無事に回復できるように」などと、旧統一教会を信仰すれば、新型コロナウイルスから救われるような文言が並ぶ。Xさんの両親や知人は、チラシをみて3万円、5万円と献金したという。

「新型コロナウイルスという不幸に付け込んで、教会は金集めに邁進する。こんなのは宗教ではないと思い、距離をとるようにしました。両親とは離れて暮らし、教会にも行かず、実質的に脱会です。そこへ安倍元首相の事件。2度とこの教会にはかかわらないと決意しました」(Xさん)

旧統一教会との接触を断ったXさんに、説得を重ねる両親。携帯電話に応答しなくなったXさんには、連日のようにメールやSNSでメッセージが届くようになっていた。

そうした中、安倍元首相の銃撃事件が起きる。その直後、SNSでXさんに送られてきた写真入りのメッセージが残っている。『救国救世のための21日間特別精誠』が開催されるという案内だ。そこには、「安倍元首相のご冥福を祈り日本が一つになるために」と開催の目的が記されている。安倍元首相の事件まで、金集めに使おうとしていたのだ。Xさんが、こう話す。
「ここでもうちの両親は給料の3割を献金しています。“安倍元首相の事件で日本がおかしくなる、救えるのは旧統一教会しかない”と信じ込まされているのです。しかし、旧統一教会の教えは、日本は韓国の属国でいずれは韓国が世界統一するという酷いもの。宗教の仮面をかぶりながら、金集めしか頭にないところだと、改めて認識しました」

旧統一教会は、安倍元首相の事件から1年というタイミングで「偉大なる政治家、安倍晋三元首相が非業の死を遂げられ、7月8日で一周忌を迎えます。世界平和統一家庭連合としては、あらためて心からの哀悼の意をお捧げします」と安倍元首相を絶賛。「当宗教法人の創始者、文鮮明・韓鶴子総裁ご夫妻からご指導を受けた『ために生きる』生活実践を通して、日本と世界の平和と幸福に寄与する覚悟です」として教義を広めることを宣言した。旧統一教会が教義を広めるということは、すなわち“カネ集めを続ける”と同義。首相暗殺事件の原因を作ったことを反省するどころか、それをカネ集めの道具にしようとする姿勢には呆れるしかない。

「不安をあおって救世主のように振る舞い、金のためなら何でも利用する。それが旧統一教会の真の姿です。新型コロナウイルスやウクライナ戦争で庶民の生活が苦しくなった中、給料の10%を献金すると、教会はチラシなどに大きく名前を載せます。カネまみれの旧統一教会を早く解散命令に追い込むことで、被害が出ないようにしてほしいと願うばかりです」(Xさん)

 

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