鹿児島県警の報道弾圧に抗議する(下)|2件の公益通報と強制性交事件

 鹿児島県警の警察官による「公益通報」が、2件立て続けに表面化した。1件目は井上昌一前刑事部長の不当な捜査指揮の証拠となる「告訴・告発事件処理簿一覧表」、2件目は野川県警本部長による警察官の犯罪行為隠蔽を告発する内容だった。一連の公益通報が行われるきっかけとなったのは、2021年9月に起きた鹿児島県医師会の男性職員(22年10月に退職)による強制性交が疑われた事件。この事件における不当捜査の実態を、ハンターに家宅捜索までして隠そうとしてきた鹿児島県警に、問題の「原点」が何かを問い直す。

■「闇をあばいてください。」

 4月8日の家宅捜索の際、ハンターの業務用パソコンにあったのが、本サイトに寄稿している北海道のジャーナリスト・小笠原淳氏に郵送されていた差出人不明の郵便物の画像だった。郵便物の内容は現職の警察官が犯した3件の違法行為が隠蔽されていることを示すもので、「闇をあばいてください。」とあった。ただ、県警は処理簿のデータにこだわりを見せただけで、3件の告発については訊ねようともしなかった。記事化が先行することを恐れ、意図的にそうしたということだ。

 3件の告発事案の“裏付け”がいずれも取れない状態だったが、ハンターへの家宅捜索の際に偶然内部通報の内容を知った県警は、5月30日に告発文に記載されていたうちの1件を立件。それが、現職警官による盗撮事件だった。この件についても県警は、立件はしたものの「捜査車両」を使っていたことなど、不都合な事実は隠して公表している。他の2件――現職警官によるストーカー事件と公金詐取については、6月6日から8日にかけて配信した小笠原氏の3本の記事に詳述しており、ぜひご一読願いたい。

・【鹿児島県警「情報漏洩」の真相(1)|盗撮事件、幹部が「静観」指示か
・【鹿児島県警「情報漏洩」の真相(2)|ストーカー事件「巡回連絡簿悪用」も隠蔽か
・【鹿児島県警「情報漏洩」の真相(3)|隠蔽された警視の公金詐取と改変された「刑事企画課だより」

 5月31日、県警はこの件に絡んで情報漏洩を行った疑いがあるとして、県警の前生活安全部長を国家公務員法違反で逮捕。6月2日に送検した。逮捕容疑となったのは、小笠原淳氏に、捜査情報を記した文書を封入した郵便物を送ったことだった。しかし、鹿児島簡易裁判所で開かれた勾留理由開示手続きでは、逮捕された前生活安全部長が、県警本部長による2件の事件隠蔽があったことを知らせるための「内部通報」――つまり公益通報だったことを暴露。県警トップによる事件の隠蔽が疑われるという異例の展開となっている。

 当初、送られてきた告発文について小笠原氏と検討したが、事件隠蔽を指示したのが刑事部長だという指摘には疑問を持っていた。隠蔽指示が出されたという盗撮事件も、立件されなかったというストーカー事件も、生活安全部マター。「本部長指揮」になっているのなら、刑事部が口を出す話ではない。刑事部長は、「静観しろ」(文書の記述)と指示する立場にない。「静観しろ」と言えるのは、生活安全部長か本部長の二人。そうなると捜査全体を止める権限を持つのは本部長だけだ。強制性交事件の不当捜査を追及してきたハンターがターゲットにしてきたのが前刑事部長だったことから、あえて前刑事部長に取材をかけさせ、本部長指揮の実態を聞き出させようと考えたとすれば、告発の記述にも合点がいく。ただ、いずれの事案も裏取りが困難。どうしたものかと迷っていた状況を一変させたのが、盗撮犯と元生安部長の逮捕だった。こうして県警自らが“裏取り”してくれた形になったことが、6月6日から8日にかけての配信記事につながっている。

■「公益通報」

 公益通報の壁は厚い。しかし、「情報漏洩」という単なる犯罪として片付けられようとしている2件の事件で問題になった文書が、本サイトでこれまで配信してきた記事の裏付けとなったのは事実。いずれの文書も県警幹部による不当捜査、犯罪の隠蔽を裏付ける貴重な証拠だった。それらの文書がなければ、県警の闇に光をあてることはできなかったはずだ。いずれも「公益通報」であると確信している。2件の公益通報の1件目は、告訴・告発事件処理簿一覧表(*下の画像)の提供によって、次が「闇をあばいてください。」で始まる告発文によってなされた県警の不当な捜査指揮に対する抵抗だったとみることもできる。

 重ねて述べるが、一連の事案の発端となったのは、新型コロナ療養施設内において起きた県医師会の元職員による強制性交事件だ。この件を追い続ける過程で、告訴・告発事件処理簿一覧表が不当捜査の証拠として登場し、配信記事を読んでいた元生活安全部長が本サイトと北海道のジャーナリストに信頼を寄せ、内部通報に及んだものと考える。

 鹿児島県警によるハンターへの強制捜査は報道弾圧である。本稿をもって正式な抗議とするが、筆者がそれ以上に声を大にして訴えたいのは、強制性交事件の事実上のもみ消しがいかに不当なものであるかということ。たしかに報道弾圧は大問題だが、筆者はガサ入れを受けようが逮捕されようが、一向にかまわない。一人でも多くのジャーナリストや政治家が、卑劣な人間たちに踏みにじられてきた女性に救いの手を差し伸べてくれることをお願いしたい。筆者も小笠原氏も、そのために戦ってきたのだから。

■強制性交事件の経緯

 最後に、問題の強制性交事件について経緯を振り返っておきたい。

 すべては、鹿児島県警中央警察署が性被害の訴えを門前払いにしたことから始まった。それに続く不当捜査。次いで、県医師会の池田琢哉会長が、強制性交を否定するためわざわざ会見まで開いて喧伝した「合意に基づく性行為」という主張――。医師会は男性職員を庇うことで池田体制を維持することを企図し、県警は男性職員の父親が警察官だったことから「警察一家」の体面を保つため事件のもみ消し、さらには不当捜査に走った。そうした経緯は、今回明るみに出た前生活安全部長によるものとされる郵便物に記されていた3件の警察職員による事件隠蔽の構図に重なる。

 相手が警察であれ医師会であれ、腐敗した権力に立ち向かうのが報道の使命だろう。2年間、それをやり通した結果が、鹿児島県警によるハンターへの家宅捜索であり、被疑者調べだったとしても、私は歩みを止めるわけにはいかない。

ニュースサイト「ハンター」中願寺純則

 

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