「悪夢」の安倍・菅政権|増加するコロナ死者数と内閣支持率の急落

安倍晋三前首相は、国会で自身の政治運営に対する批判が出るたびに旧民主党政権を口汚くののしり、自己の正当化を図ってきた。「悪夢の民主党政権」といったフレーズを、何度聞いたことだろう。たしかに、旧民主党の政権運営は拙かったが、長く続いてきた自民党政治の膿を多少なりとも出し、「投票に行けば政治は変えられる」という実例を残したことだけは評価できる。

旧民主党政権がつまづいた一番の原因は、2011年(平成23年)3月11日に発生した東日本大震災。政権運営の経験が浅かったこともあり、未曽有の災害に対して、すべての面で“後手”に回った。とりわけ酷かったのは東電・福島第一原発事故への対応だったが、おそらく自民党が政権を担っていたとしても、同じように迷走していたはずだ。安倍ー菅政権による新型コロナウイルスへのお粗末な対応は、その考えが間違っていないことを証明している。

■コロナ対策失敗で死者数増大

集団的自衛権の行使容認や安全保障法制といった“戦争準備”に力を入れた安倍政権は、肝心の危機管理能力が欠如していた、感染症対策未知のウイルスを軽く見たのか、中国から習近平国家主席を招くことや、東京オリンピックの開催にこだわるあまり水際対策に失敗。感染が拡大する過程では、事態が深刻化するたびに付け焼刃的な対策を打ち出して批判を浴びた。

この間に行ったのは、数百億の税金を使って、ほとんど評価されなかったアベノマスクを国民に配布したり、公明党につき合って約13兆円もの予算をかけ国民一人当たり10万円をばら撒いたくらい。いずれも感染拡大を抑えるための施策とはいえず、初回の緊急事態宣言後は、再びウイルスが猛威を振るう事態となっている。

検察人事でしくじりを犯したこともあって、安倍政権の支持率は春先からじりじり低下。ついには体調不良を理由に政権を投げ出し、コロナ対策の第一線から撤退した。一連の出来事は、国民にとって、まさに「悪夢」と言うしかない。

国民は現在も「悪夢」にうなされている。官房長官として長く安倍前首相を支えてきた菅氏は、悪い部分まで引き継いだようで、感染対策に失敗して支持率低下を招く事態となっているからだ。下は、厚生労働省が公表した1月10日現在の発生状況だが、陽性者が前日9日から7,278人増えた他、ほとんどの数字が「+」になっている。春先に比べ、分母となるPCR検査の実施人数が大幅に増えたことを考慮しても、爆発的な感染拡大であることは否定できない。特に懸念すべきは「死者数」だろう。

次のグラフは、やはり厚労省が発表した10日現在の死者数の推移。昨年12月1日に2,171人だった新型コロナを原因とする死者は、この1か月で急速に増え3,995人に――。前日比も64人増となっており、深刻な状況となっていることが分かる。

感染拡大が収まらない時期に実施に踏み切ったGO TOトラベルやGO TO Eatが、結果的に「死者」を増やしたのは事実で、「無策」の方がまだ良かったと嘆きたくなるのが現状だ。経済活動が重要であることに異論を唱えるつもりはないが、“命あっての物種”という言葉もある。中途半端なコロナ対策が危機的な状況を招いたこれまでの経緯と、菅首相はしっかり向き合うべきだろう。

■「悪夢」

菅氏は、昨年9月16日の首相就任会見で、胸を張って次のように述べた。

取り組むべき最優先の課題は新型コロナウイルス対策です。欧米諸国のような爆発的な感染拡大は絶対阻止をし、国民の皆さんの命と健康を守り抜きます。その上で社会経済活動との両立を目指します。さもなければ、国民生活が成り立たなくなるからであります。年初来の新型コロナウイルス対策の経験をいかして、めりはりの効いた感染対策を行い、検査体制を充実させ、必要な医療体制を確保します。来年前半までに全ての国民の皆さんに行き渡るワクチンの確保。これを目指しております。

「国民の皆さんの命と健康を守り抜きます」や、「新型コロナウイルス対策の経験をいかして、めりはりの効いた感染対策を行い、検査体制を充実させ、必要な医療体制を確保します」が、公約違反に終わっていることは明らかだ。前述したように、GO TOキャンペーン以後、感染者も死者数も急激に増加しており、国民の命と健康は守られていない。「めりはりの効いた感染対策」は自治体任せで、いまだに検査体制は充実しておらず、必要な医療体制も確保できていない。医療崩壊に直面した首都圏の知事が、そろって緊急事態宣言の再発令を要請したのは、その証左である。

大阪、京都、兵庫の知事も国に緊急事態宣言の発令を要請したが、菅首相は「必要であれば、すぐ対応できるよう準備はしている」としながら、「数日、状況を見る必要がある」と述べている。判断の鈍さは相変わらずで、危機的状況下では致命的だ。

旧民主党政権の時代を「悪夢」と罵倒し、他者の失敗をあげつらうという、みっともないマネまでして長期政権を実現させた安倍と、安倍を支えてこの国の政治を歪めた菅首相――。コロナの死者数が増えるに従って、反比例するかのように支持率は下がり続けている。

今月9、10の両日に共同通信社が実施した世論調査によると、菅内閣の支持率は41.3%。12月の調査から9.0ポイントの下落だ。その前の調査では13ポイント近く下げており、政権発足時にあった7割前後の支持が、わずか4か月で3割も減ったことになる。「不支持」は「支持」を上回って42.8%となっており、この傾向は今後も続くものとみられている。

ちなみに、共同の調査では、首都圏に再発令した緊急事態宣言のタイミングを「遅過ぎた」とした人が79.2%。菅内閣のコロナ対応を「評価しない」は68.3%だった。宣言対象を「他の都市圏も含めるべきだ」が39・8%で、「全国を対象にするべきだ」が37・7%。8割近くの国民が、緊急事態を身近なものとして捉えている現状が浮き彫りになっている。

菅首相が、各地の首長の要請に先んじて何らかの手を打つことはあるのか――。これまでを振り返ると、答えはもちろんNO。「悪夢」である。

 

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