鹿児島県教委、女性教師暴行事件の「管理監督責任」問わずに幕引き

昨年9月に鹿児島県指宿市で起きた女性教師暴行事件で加害者となった元教務主任を処分した鹿児島県教育委員会が、管理監督責任を問われるはずの学校長に対し、何の処分も行っていなかったことが明らかとなった。公務員が懲戒処分を受けた場合、上司も責任を問われるのが通例。20代の女性を事実上の監禁状態に置き、性的暴行を加えようとしてケガまで負わせた卑劣漢を「免職」ではなく「停職1カ月」という軽い処分で逃がした県教委が、虚偽の事故報告書を提出した校長の処分も見送った形だ。身内を庇うかのようなお手盛り処分に、関係者から批判の声が上がっている。

■公務員処分― 福岡市では厳格運用

公務員が懲戒処分を受けた場合、上位の職員が管理監督責任を問われるのが普通だ。下は、昨年暮れの25日に福岡市が発表した2件の職員処分の内容だが、自宅のパソコンを使って入手した児童ポルノ動画を不特定多数の者が閲覧できるような状態にした20代の男性職員が「停職3カ月」の懲戒処分、市内のプール施設で水泳中に女児や他の女性の臀部を触る痴漢行為を行っていた別の30代男性職員が「懲戒免職」になっている。

不祥事を起こした職員だけではなく、上司である課長級・係長級の職員も、「部下職員に対する指導監督」が不十分だったとして「厳重注意」という処分を下されている。

 

次の発表文は、昨年3月に福岡市教育委員会が行った2件の懲戒処分に関するもの。一人は同僚職員への暴行で「減給(10分の1)3月」、他のひとりは体罰行為で「戒告」となっている。これに対し、暴行教師の上司である学校長には「口頭訓告」、体罰教師が務めていた学校の校長には「文書訓戒」という、“措置”が行われていた。(*「措置」は、不適切事案で懲戒に至らないケースに対する役所内部の対応)

■虚偽報告の校長、お咎めなしの理不尽

では、指宿市の女性教師暴行事件で「停職1カ月」の懲戒処分を受けた元教務主任の上司である小学校長には、どの程度の処分あるいは措置が下されたのか――。

公式発表では触れられていなかったため鹿児島県教育委員会に確認したところ、担当課の職員は「懲戒処分は公表しているので、そこにないということ」と木で鼻をくくったような回答。管理監督責任を問うのが普通ではないかと重ねて聞くと、「処分過程に関することになるので、情報公開請求をかけろ」と言い出した。聞き捨てならない一言だ。

ハンターは、まさにその処分過程を確認するため昨年12月7日付けで関連文書の開示請求を行っていたが、県教委は本来15日間の開示決定期限を2か月に引き延ばしている。情報公開請求しろと言っておいて、結論を何カ月も引き延ばす――。これが県教委の隠蔽手法なのである。(*下は県教委が隠蔽姿勢を露呈した開示決定等期間延長通知)

校長への対応はどうなっているのか――取材を進めたところ、学校長に対してはお咎めなしで、何の処分も下されていなかった。県教委の言う「懲戒処分は公表しているので、そこにないということ」は、つまり不処分ということなのだ。

度々報じてきた通り、問題の校長は、加害者が《仕事上のアドバイスをしたい》として引き留め、被害女性が《仕事上のアドバイスなら聞きたいと思った》などとする虚偽の内容を「事故報告書」に記載し、事件の実態をねじ曲げた人物。なぜ不処分で済んだのか納得できずに県教委を追求したが、「そういう場合もあります」というふざけた回答だった。組織が腐っているせいか、自分たちが犯罪行為を助長しているということに気付いていない。おそらく、処分の甘さを見ている不良教師はほくそ笑んでおり、どれだけ「研修」をやっても猥褻やセクハラ事案は減らないだろう。

校長の処分が見送られたことを知った県内のある教育関係者は、次のように県教委を批判している。
「暴行事件を起こした元教諭への“停職1カ月”という処分も大甘だったが、当該校の校長が何の処分も受けていないのは絶対におかしい。校長に監督責任があるのは確かで、普通なら厳重注意とか訓戒を受けるものだ。何かある。県議会はもちろん、報道機関はしっかりと裏を暴くべきだろう。本県の教育界では、教職員によるセクハラや猥褻行為が続いて起きており、そうした行為の撲滅を目指した指導や研修が効果を上げていないという現実がある。卑劣な犯行に走った元教諭に教員免許を残すような軽い処分を下し(*免職以外の懲戒では教員免許は失効しない)、でたらめな事故報告書を提出した校長も見逃すというのでは規律は保てない。不祥事を助長しているのは、腐った県教委の体質ではないのか」

鹿児島県教委の歪んだ体質については、さらに検証を続ける予定だ。

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