新型コロナウイルスの新規感染者が増え続ける中、自民党麻生派の「志公会」が13日、都内のホテルで政治資金パーティーを開いた。正気の沙汰とは思えない。
周知の通り、大阪府や東京都には「まん延防止措置」が適用されており、対象地域の住民には不要不急の外出や移動の自粛が求められている。時短要請に従わない飲食店には「20万円」の過料が命じられるという厳しさだ。政治家だけは例外というのなら、国民は誰も政府の指示には従わなくなるだろう。
■「まん延防止措置」適用の翌日にカネ集め
東京都において「まん延防止措置」の適用が開始されたのは12日。麻生派のパーティーが開かれたのはその翌日である。これほど都民・国民をバカにした話はない。
ちなみに、都のホームページにある「まん延防止措置」についての説明によると、対象地域は23区、八王子市、立川市、武蔵野市、府中市、調布市及び町田市で、期間は4月12日から5月11日まで。「都民向けの要請」は次のような内容になっている。
このお達しが出ている中で、どうして大人数を集めての政治資金パーティーが開けるというのだろうか。一般市民に外出自粛や会食制限を求めている以上、「感染防止策を徹底した」(麻生派の関係者)だけで大規模集会を強行した麻生派の主張は到底認められるものではあるまい。
食事抜きのセミナー形式であろうが会場を分散しようが、大人数を集めたのは事実。派閥を率いる麻生太郎副総理の責任は重い。ましてや政治資金パーティーの目的がカネ集めである以上、これほど国民を愚弄する話はあるまい。
■無視される特措法の趣旨
新型コロナが国民生活を圧迫する中で、まっ先に「会食」で批判を浴びたのは菅義偉首相だった。昨年12月の「ステーキ会食」は記憶に新しい。それが嚆矢となった形で、政権与党の政治家による会食やクラブ遊びが続出。春先になってからは、国や地方の役人が大人数での飲食を繰り広げる状況となっている。コロナ対策の総元締めである厚生労働省官僚の「宴会」に参加したのは、なんと23人。「4人以上の飲食を避けて」と呼び掛けが、虚しく聞こえる昨今だ。
言うまでもなく、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」(憲法第41条)で、「まん延防止措置」や「緊急事態宣言」の根拠法となっているとは、その国会が議決した『新型インフルエンザ等対策特別措置法』だ。国権の最高機関である国会の議員たちが大勢集まって、自分たちが決めた法律の趣旨を逸脱するような集会を行った――これが麻生派による政治資金パーティーの構図であり、ならば同派の議員たちは自らの存在意義を否定したに等しい。
■おとなし過ぎる納税者
コロナの影響で経営が苦しくなっているのは飲食店だけではない。ほとんどの業種が売上げ減に陥っているのが現状で、パートやアルバイト先をなくすケースも増えた。ボーナスカットなどが庶民の暮らしを直撃し、景気も冷え込んでいる。そうした中、給与もボーナスも減らされず、のうのうと日々を送っているのが役員と政治家だ。その方々が、優雅に「政治資金パーティー」やら「宴会」というのだから開いた口が塞がらない。他国なら、暴動につながりかねない話だろう。どうも、この国の納税者はおとなし過ぎる。