パソナバブルに踊らされる淡路島

人材派遣大手のパソナグループは2020年9月、東京の本社機能を兵庫県の淡路市(淡路島)に移転することを発表した。現在5,000人近い社員のうち、将来的に約1,200人を常駐させる計画だという。昨年の新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが推奨され、環境も整備されてきたことで、淡路島の本社化も可能と判断したようだ。

淡路市への進出に伴い、次々に商業施設やテーマパークを建設してきたパソナ。淡路市で現状を取材してみると……。

■本社移転を加速させるパソナ、商業施設やテーマパークを次々に整備

今年3月、パソナグループは淡路市にある兵庫県の県有地約30ヘクタールを5億円で落札。淡路島の本社化を加速させている。

これまで、パソナグループは、淡路市西部の西海岸に、数々の商業施設をオープンさせてきた。同グループのホームページで確認すると、人気キャラクターハローキティをテーマにしたレストランや宿泊施設を整備したり、県立淡路島公園内にアニメ・テクノロジー・自然をテーマとした「ニジゲンノモリ」というテーマパークまで開設している。また、淡路市内のビルは、パソナグループの拠点とするべく改装工事が進む。

市内には多くのパソナグループの関係者が住居を構えるようになり、2020年には減り続けてきた人口が増加に転じているほどだ。

淡路島は淡路市と南あわじ市、洲本市の3つの市からなるが、パソナグループの進出は淡路市に集中している。

■地元住民には不評

2014年、人気デュオ・チャゲ&飛鳥の飛鳥(本名:宮崎重明氏)が逮捕されるという事件があったが、その際、飛鳥氏がパソナグループの迎賓館と呼ばれる「仁風林」に招待されていることが、報じられている。

その迎賓館に出入りしていた一人が、淡路市の門康夫市長。パソナグループの創立者、南部靖之氏と昵懇だとされ「南部氏は門市長との関係で、淡路市を集中的に狙っているのではないかというのは、地元では当たり前のように語られている」と淡路市議の一人は話す。

最初の出発点ともいえるのが廃校になった野島小学校の校舎を再活用して整備された複合観光施設「のじまスコーラ」だ。淡路市が廃校校舎をパソナグループに無償譲渡したのは2011年。パソナは、そこに飲食や物販の複合施設「のじまスコーラ」をオープンさせた。(*下はのじまスコーラの公式サイトの画面

その後もパソナグループの攻勢が続いてきたことから、さぞや地元民から歓迎されているのかと思っていたら、あにはからんや。取材中、何度も「淡路島、淡路市はパソナに占領されてしまう。パソナ島になってしまう。パソナはいらんわ」といった声を聞いた。

はっきり言って不評。その理由について何人もの市民は口々にこう不満をぶちまける。「パソナグループは傲慢、えらそうや」。その例をあげれば、キリがないという。

例えば、のじまスコーラは校舎が無償譲渡されたのみ。だが、パソナグループは運動場や体育館を勝手に駐車場などの教育目的以外に使用。使用料も払っていなかったというので、淡路市の市議会でも問題になった。

また、「ニジゲンノモリ」のホームページを見ると怪獣・ゴジラのアトラクションは大人一人が3,800円(こども、クレヨンしんちゃんは大人一人で4,600円。とても、市民が気軽に訪れることのできる料金設定ではない。おまけに立地が県立公園内であるため、パソナグループの商業施設は自然破壊だと根強く反対する市民も多い。

県立公園には、兵庫県がレッドリストで指定している貴重な動植物が数多く生息している。地元の環境保護団体関係者は、次のように懸念を示す。
「ニジゲンノモリは深夜まで大音量、光線のアトラクションをやっています。例えば、その高圧電源を引くために、レッドデータのラン科の植物「ギンラン」を壊滅させたようです。公園の池はレッドデータに入っているヒメボタルの生息地ですが、テーマパーク内のため観察ができません。公園は地元の子供たちの遠足、自然環境学習の場でしたが、テーマパークが騒々しくて近寄ることもなくなった。テーマパークにはお客さんが来ないのか、町内会などに無料招待券がよく配布されている状況です。パソナグループの進出で経済が潤っている感じはしませんね」

また、地元不動産会社に聞くと「パソナグループの本社が来るというので不動産需要が上向くと思って商売繫盛かと楽しみにしていました。しかし、借りてくれるのはファミリータイプの物件が中心。そこに複数の社員が入居して寮代わりになっている。これでは儲かりません」と肩を落とす。

トラブルも起きている。ニジゲンノモリのマイクロバスと地元住民が、通行を巡ってトラブルに――。「暴力沙汰になり殴り合いのけんかになったりいうのは、もうよくあることです」「少し謙虚に田舎者も大事にしたってほしい」といった住民の声を受けて、ある市議が議会で問題提起したこともあるという。

そこで、東京から来たというパソナグループの社員に聞いてみた。
「のんびり仕事はできますね。けど、マジ田舎で休みの日とか何もすることがないので、橋を渡って神戸や大阪に行きますよ。いいところは静かなこと、物価が安い、コロナの心配が少ないくらい。地元の人と話すこともほとんどない。たぶん1年もすれば飽きて、東京に戻りたくなると思う。正直、ここに本気で本社を移転するって感じ。社内でも喜んで淡路島に来る人はあまりいませんよ」

淡路市を席巻するパソナグループ。だが、その計画の裏側はほめられたものではない。

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 国の指導を無視し、町発注工事の入札情報を非開示にして「違法状態」を続けてきた永原譲二福岡県大任町長の…
  2.  新年早々、世間を騒がせることが好きな自民党の甘利明元幹事長が、消費増税を示唆して批判を浴びることに…
  3. 学問の世界では、ある時期に定説として扱われた学説が後に覆されることはよくあることである。新しい事実が…
  4. 今月19日、東京地検特捜部が東京都千代田区の「トライベイキャピタル」(三浦清志社長)という投資会社や…
  5. 長年、選挙に関わってきたことで、対立候補のスキャンダルなどを記した様々な「怪文書」を見てきた。どれも…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る