【Pay・ペイの闇】QRコード決済トラブルで被害拡大 核心人物の音声データ公開

キャッシュレスのQRコード決済に使用するタブレット端末事業を展開してきた「NIPPON Pay」(以下、NP社:本社東京都)と「NIPPON Tablet」(以下、NT社:本社東京都)が、突然営業を休止して連絡を絶った。加盟店、代理店に対するNP社からの支払いが止まり、その「詐欺的」商法に引っかかった多くの人が途方に暮れていることは既報の通りだ。

【参照記事】
・「QRコード決済巡り重大トラブル Pay・ペイに暗雲
・「QRコード決裁トラブルで詐欺事件に発展か 関係団体顧問に自民党議員

被害金額が100億円に上る額になりそうなことや、事件の背後に大臣経験者を含む自民党国会議員の影があることも指摘したところ、反響は凄まじく、ハンターの編集部には様々な被害報告が届いている。その中から、「加盟店や代理店の皆さんが被害にあったのは分かる。だが、一番大きな被害にあっているのはタブレット端末のオーナーだ」と知らせてきたある男性と接触した。

■ある端末オーナーの被害告発

被害を訴えているのは、九州一円で戸建て住宅や太陽光発電事業を展開している企業のA社長だ。NP社・NT社の被害者は以下の3形態に分かれるのだが、A社長はいわゆる端末オーナーである。

・キャッシュレス端末を商店に配布、加入させてロイヤリティを得ていた代理店。

・タブレット端末を導入し、決済に使用していた加盟店。

・NT社からタブレット端末を買い、月々の配当を得ていた端末オーナー。

NT・NP両社と関わったいきさつはこうだ。2017年10月、「マルチ商法が得意だ」という知人を通じてNT社を紹介されたA社長は、「端末オーナーは限定5万台。早く契約した方がいい」というセールストークに惹かれたという。旧知の人物の紹介という安心感もあって、NT社のタブレット端末200台のオーナーになる契約を交わしたと振り返る。入手した契約書の日付を確認すると、2017年12月18日のことだった。

契約内容の概要は、タブレット端末1台につき年間14,700円の配当。タブレット端末を加盟店が使用し、その決済手数料からも利益がオーナーに得られるというものだった。

「タブレット端末は10万円未満なので、会計上の損金処理ができる。その上、利益を計上してくれるというので一石二鳥だと思い契約した。事実、NTTドコモのd払いや世界的な通販大手のAmazonPayも決済できるようになると聞き、より信用した」とA社長はいう。

契約から1年後の2018年12月、200台分の配当約290万円が入金されたことで、A社長はこの事業に一層力を入れることになる。新たにタブレット端末100台分を出資して、合計300台分のオーナーとなったのだ。だが、2019年11月、突然、NP社・NT社の創業者である高木純氏からメッセージが送られてくる。

<私、高木個人として急ぎお知らせしたいことがあり、この様な手紙を送らせて頂きました><NIPPON Tablet株式会社から、端末オーナー様に対しての端末賃料がお支払いできない状況>――それまで、疑うことなく投資していたNP社とNT社の苦境を明かす内容。さらに、タブレット端末のオーナーに対する未払金については『上場予定のNP社の株式を充当したい』とも記されていた。

驚いたA社長は、改めてNT社とのタブレット端末オーナーとしての契約をチェックしてみた。A社長側と契約したのはNT社。だが、タブレット端末の代金は、大阪に本社があるNPマーケティングという会社に振り込んでいた。
「確かに、NT社との契約なのに、NPマーケティングへの振り込みとは変だと感じてはいた。そこで、NT社の決算書を見ると、NPマーケティングからタブレット端末の代金が入金されていない。こりゃ、詐欺じゃないのかと思って調べ始めました」(A社長)

地元の警察や信用調査会社、弁護士にも相談。「地元の警察は実際に動いてくれ、NP社の現社長である菱木信介にも会ったそうですが、『高木がミスをして、赤字を出してしまった。高木は辞めました』などと話していたということです。そして、私をタブレット端末オーナーに誘った知人たちは『早くNP社の株式に変えろと』と矢のような催促をしてきました。まったく、不可解な話でした。NP社、NT社とも高木氏が創業者。1つが倒産のような形でもう一つの会社は上場するなんてことはおかしい。私は警察からの情報や弁護士のアドバイスもあり、株式に変えることはしませんでした」(A社長)

■代理店側が残していた核心人物の音声データ

どうやら、NT社の負債をNP社の上場益で埋め合わせるという話は高木氏の最後の逃げ道だったようで、代理店に対しても同じ話を持ち掛けていたことが分かっている。最初にNP社やNT社の問題を告発してくれた飯坂忠義さんは、今年1月に両社の創業者でこの問題の核心人物である高木純氏と会ってその内容を録音していた。録音データには、「タブレット端末の仕入れが15,000円、端末オーナーには98,000円で売ります」などと、ビジネスモデルを説明する高木氏の声が残されている。

【音声はこちら】*再生の際は音量にご注意ください。

 

2つ目の録音データでは、「2月にはNT社が破綻するので、早く債務分を株式に充当するように申し出て」と言っている。

【音声はこちら】*再生の際は音量にご注意ください。

 

しかし、NT社は今もって破綻しておらず、会社は存続している。飯坂さんは「高木氏は、民事・刑事で訴えを起こされるのが嫌で、時間稼ぎのためウソを言ったのではないかと考えています」と突き放す。

タブレット端末のオーナーはA社長の他にも大勢いて、被害は全国に広がっているとみられている。あるマルチ商法にかかわった関係者はこう明かす。

「我々のようなマルチ商法の人間がタブレット端末のオーナー集めに協力した。もちろん1台いくらとコミッションはもらいます。NT社は、1円もなくオーナーから集めたカネで端末を買って配っていた。そして少なくないコミッションを我々のような人間に支払っていたし、最初は配当もしていた。オーナーがずっと増えればいいが、いずれ頭打ちになる。高木氏らは、訴訟を起こされないうちに現金を持って逃げたんじゃないか」

東京に本社があるNP社とNT社を訪ねたが、すでに会社は引き払われていた。高木氏は登記上の住所を、台湾の台北市に移転させており、電話もつながらない。いわゆる「夜逃げ」状態となっている。

前出のA社長は「明らかな詐欺ですよ。私はタブレット端末のオーナー、代理店、加盟店の被害者とともに、集団訴訟して高木氏ら関係者の刑事、民事の責任追及をしたい」と話している。

飯坂忠義さんは被害者の会を設立しようと、下記のようなブログを開設している。

http://fanblogs.jp/higaishanokai/

【問い合わせ】higaishanokai.nt@gmail.com

 

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