「昨年1年を振り返ると、うちの党は躍進したが、粗製乱造の年でもあったと感じますわ」――そう苦笑いするのは、日本維新の会の国会議員だ。昨年12月月20日、奈良地裁の法廷にやって来たのは、奈良県斑鳩町で維新に所属していた元町議・大森恒太朗被告。地元の自治会費745万円あまりを着服して業務上横領で逮捕され、初公判が開かれた。維新にはこうした不祥事が後を絶たない。その維新に、失敗必至とみられる大阪・関西万博の責任が問われることになる。
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大森被告は神妙な顔で、「間違いない」と公訴事実を認めた。維新を除名になり、町議も辞職した大森被告だが、検察側の冒頭陳述などから維新在籍時にカネを着服していたことがが分かっている。
そして年末。週刊文春が報じたのは、維新に所属する岬まき衆議院議員(比例東海)によるパワハラ騒動だ。岬氏については、本サイトで既報の通り、過去の参議院選挙出馬時に選挙公報に「虚偽」の経歴を掲載して、党から処分を受けた過去もある。
岬氏は選挙公報に『亜細亜大学 非常勤講師、杏林大学 非常勤講師』と記していたが、当時、岬氏を推薦していた名古屋市の河村たかし市長率いる地域政党「減税日本」が大学に問い合わせたところ、在籍していないとの回答を得ていた。岬氏はそれを誤魔化そうとしたのか、支援者にこんなメールを送信し、拡散させている。
《私は亜細亜大学では国際関係学部、杏林大学では総合政策各部にて2、3年生を主対象にインターン直前、就活のビジネスマナーやコミュニケーションの単位に関わる正式な授業のコマ講義として担当いたしました》
だが、その中に「非常勤講師」という肩書はない。書けなかった、と見るべきだろう。
岬氏は経歴詐称問題で、名古屋地検特捜部に刑事告発までされた程だ(嫌疑不十分で不起訴)。素行にも問題があるようで、岬氏の元秘書がこう話す。
「岬は、2021年の衆議院選挙で当選してから“女王様”のように振舞い、勘違いした言動で秘書が次々に辞めさせられ、問題になっているんです。彼女のパワハラはじつに理不尽なもの。車の渋滞で1分到着が遅れただけで『どこ見ているの、遅れている。それで秘書なのか』と罵詈雑言。文春の記事にあったように、猛暑の中で『ポスターを10枚貼れ、終わるまで帰ってくるな』と命じて、ある秘書は熱中症になりました。気に入らないことがあると、秘書に土下座をさせて謝らせる。8人もの秘書が辞めていったというのも本当です。報酬を約束をしても、難癖をつけて支払わないなど、とても国会議員とは思えません」
苦しめられたのは秘書だけではなかったうようで、SNS上には、岬氏の「被害者」とみられる人が警察に被害届を出したという趣旨の投稿が見られる。
しかし、前出の維新議員によると、岬氏は「辞めた秘書に問題があるから仕方がない」「他の議員より厳しいかもしれないが、普段からきつくしないと選挙になるとよけいに大変だ」などと抗弁し、周囲を呆れさせているという。岬氏がそうした強気に出る背景には別の理由があるともいう。岬氏の選挙区である愛知5区の地方議員が舞台裏を明かす。
「経歴詐称疑惑が浮上した時に、岬さんを議員辞職させるべきという声もあった。しかし、なぜか軽い処分になった。馬場伸幸代表や柳ヶ瀬裕文総務会長らにすり寄って、なんとか助けてもらったと聞いている。岬さんがこだわっているのは、維新という組織ではなく議員バッジ。愛知5区で当選していたのは自民党の神田憲次衆議院議員だが、税金滞納で財務副大臣を更迭されたばかり。地元の自民党のボスが神田氏を引きずり下ろし、岬氏を維新から自民党に鞍替えさせて出馬させたいとの意向があるからです」
愛知政界の「ドン」として知られるのは水野富夫県議。県議会議長も務めた当選11回の重鎮だ。水野氏の事務所には毎朝、市役所や県庁職員、地元企業などの「陳情」で行列ができるといい、テレビでその模様が放映されたこともある。その水野氏と岬氏には、接点がある。
「岬さんの地元事務所も自宅も、水野県議に近い業者が用意したものですからね。それに水野県議は神田代議士を徹底的に嫌っているので、岬擁立はあり得ない話でではない。岬さん自身、維新ではトラブルメーカー。統一地方選前には、なんら決定権がないのに候補者の面接を行って『なぜそんなことしているのか』と批判の嵐でした。つまり維新では、総スカン状態。自民党から誘いがあれば、彼女としては願ったりかなったでしょうね」(前出・地方議員)
ハンターで報じたように(⇒)昨年5月、維新所属だった笹川理大阪府議が、同じ維新の宮脇希大阪市議へのセクハラ、パワハラで離党を余儀なくされた。維新はその後、「ハラスメント調査」を実施し14件の申告があったという。しかし、半年以上経過しているにもかかわらず、いまだに調査結果は公表されていない。大阪維新の会の幹事長でもある大阪市の横山英幸市長は、記者会見で「年内を目指しています」と説明していたが、年が明けても調査結果が公表される兆しはない。
所属議員による不祥事が後を絶たない維新だが、代表の馬場氏をはじめ幹部に反省の姿勢は見られない。この無責任政党が主導して決まったのが問題山積の大阪・関西万博。インフラ整備を含め1兆円前後のカネがかかるイベントは既に破綻寸前となっており、維新の責任を問う声は日増しに高まっている。