QRコード決済巡り重大トラブル Pay・ペイに暗雲

買い物をして、支払いのためにレジに向かうと決まって目にするようになったのが、QRコードのディスプレイ。政府が推進し、世界的にも広がっているキャッシュレス社会の光景だ。便利なことこの上ないシステムだが、そこに影を落とす深刻な問題が生じている。

■突然の営業休止

「これを見てください」とタブレット端末を差し出したのは、会社経営者の飯坂忠義さん。いくら端末を操作しようとしても、応答がない。

飯坂さんが困り果てているのは、キャッシュレス、QRコード決済を手がける「NIPPON Platform」(ニッポン プラットフォーム:本社・東京都 以下NP社)と「NIPPON Tablet」(ニッポン タブレット:本社・東京都 以下NT社)という2つの会社が突然、実質的に営業を休止してしまったからだ。

日本国内のキャッシュレスQRコード決済といえば、ソフトバンクグループのPAYPAYや大手携帯電話会社、NTTドコモのd払い、ネット通販の楽天Pay、AmazonPay、SNSのLINE Payなどがあげられる。

例えば、小売店で買い物をして、d払いでQRコード決済をしたとする。小売店側は、d払いを手がけるNTTドコモから直接、買い物した代金を受け取るのではない。NTTドコモと小売店の間に決済業者が入り、代金のやりとりが行われる仕組みで、決済業者は3%前後の手数料を受け取り、それが利益となるのが一般的だ。

■「NIPPON Platform」と「NIPPON Tablet」

NP社は、2016年にNIPPONPayという社名で設立されたキャッシュレス支払い、QRコード決済の業者だ。ほぼ同時期に、NP社は飯坂さんが手にしていたキャッシュレス決済の端末を小売店など加盟社にレンタルするNT社を設立。NP社とNT社が一体になって、営業活動をはじめた。どちらも実質的には、高木純という人物が創業者だという。

2018年8月、NP社が通販大手でアメリカのアマゾン・ドット・コムの日本法人「アマゾンジャパン」(本社・東京都)がAmazonPayのQRコード決済の決済業者として契約。実店舗で世界的企業のAmazonPayが使えるとあって注目を集める。

「AmazonPayとNP社が契約を交わしたというニュースがあった同時期に、NT社が日経新聞にQRコード決済端末の販売代理店募集の広告を掲載しました。総合的に判断して、NP社、NT社は信用できると考え、代理店になることを決めました」と飯坂さんは話す。

QRコード決済端末を小売店などにセールスして、導入させるのが代理店にあたる。飯坂さんの会社は、端末1台を加盟店となる小売店に導入させると1万5千円が入る契約であったという。QRコード決済をするのはNP社。販売代理店は、端末を扱うことからNT社との契約となっていた。

AmazonPayだけではなく、d払いや中国の大手QRコード決済なども利用できるようになり、NT社のホームページを見ると、2019年10月には10万台の端末が加盟店に提供されていたとされる。

飯坂さんの話は続く。「加盟店に端末を貸し出すのですが、実質的には無料でした。当初はきちんと契約通り1台につき1万5千円が支払われていました。消費増税で、キャッシュレスの支払いに還元事業を政府がはじめることも決まったので、加盟店の獲得は好調でした。それが、2019年11月末ころから急に支払いが滞ったのです」

■未払い続出、端末機能もストップ

それからほどなくして、飯坂さんが端末を導入させた小売店側からも「NT社の端末でQRコード決済したが、代金が入金されない」というクレームが届き始めたという。そして2019年12月2日、飯坂さんら販売代理店に高木氏からメールが届く。

その内容は、高木氏がNP社の取締役を辞任する一方でNT社の社長になり、株式も100%保有するというもの。理由については、代理店の営業活動が不適切で、コンプライアンスとして問題であり、その解決のためだと記されていた。

当時飯坂さんの会社では、約500万円の請求分がNT社から支払われないという状況で、加盟店からも、多いところでは数十万円が決済されないとクレームが届いていた。何度か督促するメールを送信したところ、飯坂さんに高木氏から連絡あった。直接、面談して話をしたいというものだった。

「今年1月、東京都内のNT社(つまりNP社)を訪ね、高木氏から説明を受けました。『NT社には32億円の赤字があるので、2月には破産となる』『自分には責任はない。だが、NP社もNT社も自分が創業者だ。約370万株のうち270万株を保有している。債権分の株主を渡すので申し込んでほしい』などと言うのです。上場もしていない会社の株を、債権と引き換えにもらっても意味がない。もちろん応じませんでした」(飯坂さん)

その後、何度もNT社の担当者に連絡したが、応答は皆無。高木氏から話があって以降、NT社からの支払いあまったくなかったため、弁護士に相談し、民事提訴、刑事告訴を検討していたという。そこに新型コロナウイルスの感染拡大――。会社の売上が減少する中、4月16日には端末機能がストップしてしまった。

筆者もNT社「ヘルプセンター」に連絡をしてみたが、「電話番号は現在使われておりません」というアナウンスが流れるだけ。NP社にも電話を入れるが「ボイスメッセージで伝言を承る」との音声が流れるばかりとなっている。

NT社から支払われるべき売上は約500万円。請求書類をみながら、飯坂さんは高木氏らに「だまされた」という思いを強く持ち始めたのだった。

(つづく)

(山本吉文)



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