【新型コロナ】感染拡大で注目される建設大手の動向 ~ 現場閉鎖が招く経済危機

建設技術者や作業員、建設事務など、いわゆる建設業に携わる就業者の数は約503万人(総務省の発表資料・2018年度)。同年の全産業における就業者が6,664万人であることから、全体の7.5%にあたる計算だ。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言を受けて、深刻な打撃を被っている飲食店や宿泊業の就業者は約250万人で、建設業従事者の割合はその倍ということになる。

国内の経済活動の総計を表すGDP(2017年度)を産業別にみても、飲食・宿泊業2.5%に対し、建設業5.8%と建設業の規模は大きい。その建設業界にも新型コロナが暗い影を落とす。

■コロナで止まった原発・テロ対策棟の工事

今月に入り、九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の敷地内で、特定重大事故等対処施設(テロ対策棟)の土木工事に従事していた大手ゼネコン「大林組」の社員が、相次いで新型コロナウイルスに感染していることが判明。九電は玄海原発内の全ての工事を中断し、作業員ら約300人を出勤停止にした。工事再開のめどは立っていない。

工事ストップは、玄海原発のケースにとどまらない。緊急事態宣言の対象拡大を受けた大手ゼネコンやハウスメーカーが、工事を中止する方向で動き始めている。

■感染拡大で相次ぐ現場閉鎖

大手ゼネコンの「鹿島建設」は17日、緊急事態宣言に基づき、全国の現場で発注者や協力会社との協議が整った時点から5月6日(水)まで、閉所する方針を発表した。対象となるのは、大型ビル建築やトンネル、ダムの築造工事など全国約700か所に上る現場だという。

大手住宅メーカーの「大和ハウス工業」は全国76の事業所を5月6日まで閉鎖。建設現場は全都道府県を対象に5月10日まで中止すると発表した。現場数は約3,500にのぼる。

下は、ハンターが建設大手に取材して確認した各社の動向だが、工事関係者から感染者が出た会社は、鹿島や大和同様、工事発注者との協議が整った現場を、5月の連休明けまですべて閉鎖。政府が緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大したことを受けた建設各社は、それまで7都府県に限っていた事業所の閉鎖や建設工事の中止エリアを拡大させている。

■状況次第で国内経済に深刻な影響が……

業界大手の現場が全国で止まることは、業界の経済活動の大部分が停滞することを意味する。一つの建設現場には元請けはもとより、多くの下請け、孫請け企業の作業員が働いているからだ。

建設業は元請企業を頂点とし、複数の下請企業が支えるピラミッド型の構造。さらに土木、建築、管工事、材料、設計と職種の裾野も広い。大手建設会社が手掛ける建設工事の中止により、資金繰りに窮する企業が増えることも予想される。

大手建設会社が手掛ける工事の現場で、新型コロナの感染者が増え続けるような事態となれば、日本経済がこれまで以上に深刻なダメージを受けるのは必定。資本力のある大手なら数か月間の休業にも耐えられるが、緊急事態宣言が解除されない状況になれば、余力のない中小・零細の下請け企業はひとたまりもない。

新型コロナウイルスの影響を受けた旅行、飲食関連企業で倒産や廃業が目立つ状況だったが、建設業界で同じようなことが起きれば、現在政府が行っている経済対策では到底追い付かない事態となる。

緊急事態宣言が延長された時に建設大手がどのような決断を下すのか――数えきれないほどの関連企業関係者が注目している。

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