安倍政権、「#検察庁法改正案に抗議します」を無視し強行採決へ

安倍晋三政権が、検察官の定年を段階的に65歳まで引き上げる検察庁法改正案を、今週中にも強行採決する構えをみせている。

背景にあるのは、黒川弘務東京高検検事長(63)の定年延長問題。従来の法解釈では不可とされてきた検察官の“定年延長”を政権の都合でゴリ押しして批判されたことから、後出しで合法化しようという魂胆だ。

新型コロナウイルスへの対応も満足に出来ないお粗末政権に、国の基本原則である「三権分立」を脅かす暴挙を許していいのか――?

■黒川東京高検検事長の定年延長をゴリ押し

「検察庁法」は、検事総長と検察官の“定年”について《検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する》と規定している。

今年2月8日で63歳の誕生日を迎えた黒川高検検事長は、その時点でお役御免=「定年退官」となるはずだった。しかし、政府はその8日前の1月31日、突然同氏の定年延長を閣議決定する。

検察官の定年延長は初。森雅子法相は「業務遂行上の必要性」を理由に挙げたが、国会で63歳定年を規定した検察庁法に反するとして追及されると、国家公務員法の定年延長特例を持ち出して「合法」だと強弁するなど迷走を続けた。

国家公務員法は、定年延長特例について次のように定めている。

《任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる》(第81条の三)

国家公務員法の定年延長規程については、これを「検察官に適用しない」というのが、歴代内閣の方針。1981年には、国会で「国家公務員の定年延長規定は検察官には適用外」という政府答弁も行われており、国家公務員法の定年延長特例を持ち出してきた安倍内閣の主張は認められないものだった。

ところが、国家公務員法でも逃げ切れない状況となった安倍内首相は、「解釈変更」で人事を強行する。2月13日の衆議院本会議で野党議員の質問に答えた安倍首相は、こう述べている。

「黒川東京高検検事長の任務延長等につきましてお尋ねがありました。まず、幹部公務員の人事については、内閣人事局の一元管理のもと、常に適材適所で行っており、内閣人事局制度を悪用し、恣意的人事を行ってきたとのご指摘はまったくあたりません。

検察官については、昭和56年当時、国家公務員法の制定(発言のママ)、定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと理解しております。なお、検察官も一般職の国家公務員であるため、今般、検察庁法に定められている特例以外については、一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にあり、検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとしたところです。

ご指摘の黒川東京高検検事長の勤務延長については、検察庁の業務遂行上の必要性につき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定したものであり、なんら問題はないものと考えています」

黒川高検検事長は、共謀罪の実現に奔走したことで知られており、森友学園を巡る公文書改ざん事件では、告発対象となった佐川宣寿元国税庁長官ら関係者全員の不起訴処分を主導したとされる人物だ。いわば「政権の番犬」。政府は、黒川氏の定年を延長して検察に残し、次期検事総長に就任させようという魂胆だとみられている。

安倍政権が検察を抑えなければならない理由は、山ほどある。「桜を見る会」の疑惑、カジノを含む統合型リゾート(IR)の汚職、河井案里参院議員と夫の克行前法相の公選法違反事件などなど、展開次第で政権を揺るがしかねない問題ばかりだ。いわばスキャンダルまみれ政権。検察支配の必要に迫られた政権が、禁じ手に走ったとみるのが普通だろう。

■声を上げ始めた国民

新型コロナウイルスの感染拡大を受け政府が緊急事態宣言を発令する中、火事場泥棒的な法改正に賛成する国民は少数だろう。これまで安倍政権の横暴に顔をしかめるだけだった人たちまで声を上げ始めた。

5月8日夜にツイッター上に投稿された「#検察庁法改正案に抗議します」に対しては、多くの著名人などが次々とツイート。5月12日午前の時点で600万件を突破する異例の事態となっている。

法の改悪に反対する国民の声に呼応するように、日本弁護士連合会は11日、「改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明」を公表(→こちら)。《「準司法官」である検察官の政治的中立性が脅かされれば、憲法の基本原則である三権分立を揺るがすおそれさえあり、到底看過できない》として、『検察庁法改正法案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案』から検察庁法に関する部分を削除するよう強く求めている。

安倍晋三という政治家は、平和を守るために歴代政権が堅持してきた憲法解釈をあっさり変更し、集団的自衛権の行使容認へと舵を切った。その際、多くの国民が「解釈改憲」に異を唱えたが、安倍は暴走を止めず、集団的自衛権の行使容認を合法化するために安全保障法制を強行採決で成立させた。いわば後出しのアリバイ作りだ。

「#検察庁法改正案に抗議します」が数日で600万ものツイートを集めたのは、安倍政権が不正な検察人事を正当化するため後出しのアリバイ作りを行おうとしていることを、ほとんどの国民が見抜いているからに他ならない。「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」という人気俳優のツイッターへの投稿は、誰もが共有する思いのはずだ。それでも止まらぬ暴走政権――。国の未来を守るには、「倒閣」を実現するしか道はない。

 

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