感染拡大中の札幌で屋外相談会 ホームレスに炊き出し・健康チェック

新型コロナウイルス感染者の発生報告が続く北海道・札幌で5月9日、市内のホームレス支援団体などが炊き出し・健康相談会を開き、路上生活中の38人が参加した。感染拡大防止のため屋外での開催となり、主催者らは「今後も状況に応じて続けていきたい」と話している。

■会場は大通公園

相談会は、札幌で発足21年になる支援団体「北海道の労働と福祉を考える会」(労福会、山内太郎代表)と、民主的医療の提言を続ける「北海道民主医療機関連合会」(道民医連、小市健一会長)の共催。積雪寒冷地の札幌では屋内で温かい食事を提供する炊き出しが一般的だが、今般の感染症拡大を受け、初めての試みとして屋外の大通公園を会場に設定した。

公園内では加熱調理ができないため、事前に50食の弁当を用意、マスクや入浴券などの支援物資とともに参加者に配布した。

検温や問診で全員の健康状態をチェックした結果、ウイルス感染が疑われるケースは認められず、さしあたって札幌の路上では感染が進んでいないと判断された。

今年の初めから札幌駅前通地下歩行空間(チカホ)で過ごしているという男性(67)は、公園のベンチで弁当を頬張りながら「ちゃんとした食事は久しぶり」とホッとした様子。「市内の親族を頼ろうとしたが、なかなか足を向けられない」と、路上生活を脱する難しさを訴えた。

同じくチカホで過ごすことが多い九州出身の男性(57)は5年ほど前に生活保護を受けていたことがあるといい、「その時は『就労指導』が続いて3カ月ほどで保護打ち切りになったけど、改めて利用できないかと思っている」と、再出発への意欲を語る。その場で労福会に相談を寄せ、近く市内の区を訪ねて保護を申請したい考えを明らかにした。

■コロナ自粛で困窮層増加

相談会では、経済自粛が困窮層に与える影響が浮き彫りになった。民医連として運営にあたった勤医協中央病院(札幌市東区)の作業療法士・飯尾智憲さん(42)は「週末の『夜回り』などでよく見かける人が多い印象ですが、初めてお会いする若い人もいた。職を失ったばかりと言っていました」と、心配そうに話す。

次回の炊き出し・相談会は7月の予定で、これも屋外開催になる可能性があるが、労福会事務局長の近藤紘世さん(21)=北海学園大・経4=は「外は天候に左右される上、できることが限られます」と、主催者としての悩みを明かす。「散髪サービスなどを期待している人も多く、できれば屋内でやりたいんですが、感染がいつ収まってくれるか……」。

国の概数調査によると、札幌市内で過ごすホームレスは現在30人。しかしこれには、車中生活者や「ネットカフェ難民」などが含まれていない。支援者らは「実際の数字はもっと多いはず」とみており、この日の炊き出しにも公称数を上回る38人が参加した。

ウイルスの拡大に伴って生活困窮者が増えることは充分に予想され、知人を訪ねて炊き出し会場に顔を出したという元ホームレスの男性(54)は「近所の区役所では、社会福祉協議会の貸付申請に行列ができている。生活保護の窓口も、そう遠くないうちにパンクするのでは」と不安げに話していた。

(小笠原 淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 

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