佐々木允福岡県議に公職選挙法違反の疑い|田川市内に大量の違法ポスター

福岡県議会の佐々木允議員(田川市選出。民主県政クラブ)が、大量の違法ポスターを、選挙区である田川市内に掲示していることが分かった。前例のない悪質な売名行為ともとれ、公職選挙法違反に問われてもおかしくない事態だ。

■田川市内に氾濫する佐々木県議の顔と名前

佐々木氏の身内が代表を務める政治団体が掲示しているのは、大書された佐々木県議の氏名と顔写真のアップが掲載された縦84㎝、横59㎝の大型ポスター。選挙区である田川市内には、下の写真のように“裏打ち”された佐々木氏のポスターが数えきれないほど掲示されている。

 ポスターの横にはやはり大きな字で『掲示責任者 佐々木まこと』とあるが、近くに寄ってみると、下の方に小さな書体で“リベラル福岡市民の会”とあり、続けて“街頭演説会 とき2023年3月25日(土) ところ伊田大橋交差点”の記載。さらに、なぜか佐々木氏とは別の掲示責任者の氏名と住所が記されている(下の画像参照)。

ポスターの右下にある『田川のために。』には、“田川の未来を変えるには政治家の「思い」が大切です。16年の議員経験とクリーンでまっすぐな政治姿勢で、田川のため、皆さまと共に前に進んで参ります。”という文章が添えらえている。どうみても佐々木氏個人の宣伝文句だ。

結論から述べれば、現認されている佐々木氏のポスターは、二つの点で違法。さらに、公選法の抜け道を使った「あくどい脱法行為」も疑われる。

■「裏打ちポスター」「掲示期間」の2点で違法

公職選挙法は、政治家がその氏名や氏名を類推できる事項を選挙区内に掲示することを「売名行為」にあたるとして原則禁止にしているが、一定のルールを守った掲示物にだけは、公職の種類(国会議員、都道府県知事、都道府県議会議員、市長・市議、町長・町議など)によって設置数を決めた枚数が認められる。

一般的には町中で見かける「看板」。これには大きさの規格があり、縦150㎝以下、横40㎝まで。しかも、当該選挙を所管する選挙管理委員会に枚数や設置場所を届け出て、交付された証票」を貼らねばならない。県議会議員なら政治家本人用が6枚、後援団体用が6枚の計12枚だけだ。前述したとおり、ベニヤ板、プラスチック板その他これに類するものを用いて掲示される政治活動用ポスター(いわゆる裏打ちポスター)は禁止である。

上掲の写真が示しているように、佐々木氏の氏名と顔写真が大きく掲載された問題のポスターは、すべて「裏打ち」されたもの。公職選挙法は、政治家個人やその支援団体のものを除く政治活動用ポスターの掲示を認めてはいるが、「ポスターを掲示するためのベニヤ板、プラスチック板その他これらに類するものを用いて掲示されるもの」(同法143条16ー二)=「裏打ちポスター」は禁止。つまり、佐々木氏の顔写真と氏名が掲載された裏打ちポスターそのものが、違法とみなされる。

次に違法性が問われるのは、政治活動用ポスターの掲示が許される時期。公選法の規定によれば、政治家個人が類推される掲示物の使用は、「地方公共団体の議会の議員又は長の任期満了による選挙にあっては、その任期満了の日の6月前の日から当該選挙の期日までの間」は禁止。福岡県議会議員の任期満了日は来年4月29日であることから、佐々木氏のポスターは、先月29日の段階で「違法」な掲示物となっている。

そもそも、公選法は選挙区内の売名行為を禁止する目的で、政治家や支援団体の看板の大きさを規定し、設置枚数まで決めている。リベラル福岡県民の会という政治団体の活動を装って、事実上は佐々木氏の宣伝となっている問題のポスターは、そうした厳しい規制をすり抜けるための、法の抜け道を使った脱法行為に他ならない。

佐々木氏のポスター掲示手法が容認されれば、国内すべての市区町村が、金持ち政治家のポスターだらけになってしまう。法令を作る側の立場であることを自覚せず、違法・脱法行為を行う人物が、まともな政治家といえるのだろうか。

■「リベラル福岡県民の会」とは

では、違法ポスターを多数掲示している「リベラル福岡県民の会」とはいかなる団体なのか――?県選管に情報公開請求して入手した「政治団体設立届」によれば、同団体の設立は2014年(平成26年)10月15日(選管届出は17日)。代表者も会計責任者も佐々木氏の身内だ。

県議会議員選挙に立候補すことを表明していた佐々木氏は、2015年(平成27年)1月に2期目の途中だった田川市議会議員を辞職している。リベラル福岡県民の会は設立当初、県議選を目ざすことを決めていた佐々木氏の支援を目的とした団体として発足し、数日後に活動目的から佐々木氏支援の文言を消す形で規約を変更していた。

規約を変更してごまかしても、ポスターの掲示実態や政治資金の動きなどから、リベラル福岡県民の会が佐々木氏を支援する団体であることは疑う余地がない。同団体が設立された平成26年の収入は総額60万円だったが、全額が佐々木氏の寄附によるもの。27年50万円、28年10万円、29年20万円、30年20万円、令和元年40万円と毎年の収入のすべてを佐々木氏が賄い、支出の大半は「宣伝事業費」だった。佐々木氏のための宣伝事業費であったとみられる。

下の写真のポスターは、小さく告知された街頭演説の実施日が「2020年3月30日」。佐々木氏が、少なくともこのはるか前の時期に、こうした違法ポスターを掲示していた証拠だ。

■答えに窮する佐々木県議

11日、佐々木氏本人にポスターの違法性を認識しているのかどうか確認したところ、「ポスターが掲示期間を過ぎていることに気付いたため、2連ポスターを発注したところ」と説明。しかし、裏打ちポスターの違法性については「選管と協議しながらやっている」として、認めようとしなかった。

佐々木氏は、かねてから周辺に「選管と協議してやっている」と話していたことが分かっている。この点について福岡県選管に事実確認をしたが、回答は「協議した事実は確認できない」。佐々木氏に選管とのやり取りについて伝えたところ、答えに窮したようで「協議して対応して参ります」という訳の分からないコメントが返ってきた。念のため、県選管に佐々木氏のポスターの画像データを示した上で、“このポスターを掲示していいかと判断を求められた場合、「はい、どうぞ」と言えますか?”と聞いたところ、間髪を入れず「言いません」――。あたり前である。

公選法の趣旨をはじめ、政治家が守るべきイロハが理解できていないのなら、選挙に出る資格はあるまい。じつは佐々木氏の違法行為が、他にもあったことが分かっている。その証拠が下の写真だ。

一見すると合法の立て看板のようだが、いずれも公選法が貼付を義務付けている選管発行の「証票」がない違法看板。つい最近まで田川市内に数多く設置されていたが、ハンターが今村寿人田川市議や二場公人市長の違法看板について報じた直後に、ほとんど撤去されている。

 

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