危ういIR構想が招く大阪維新の地盤沈下 

2025年の大阪・関西万博の後、2029年に開業が想定されている大阪IR(カジノを含むの統合型リゾート施設)。

3月末までに大阪市議会で議決される見込みだが、自民党市議団は反対に回ることを決めており、土壇場でカジノの行方が不透明になっている。

そんな中、今月16日の大阪市議会都市経済委員会に、カジノ運営事業会社「大阪IR株式会社」の代表・エドワード・バウワーズ氏(日本MGMリゾーツ)と高橋豊典氏(オリックス)が参考人として招致された。市議会が運営事業会社から直接話を聞くのは初めて。発言内容が注目されていた。

■崩れた納付金1,060億円の根拠

大阪市の松井一郎市長ら大阪維新の会はこれまで、「IR事業には税金投入しない」「納付金など大阪市と大阪府で年間1,060億円の収入がある」とIRを推進し、誘致を訴えてきた。しかし、IR予定地の大阪・夢洲(ゆめしま)で液状化や地中障害物、土壌汚染の問題などが発覚。その対策費用として土地所有者である大阪市が790億円を負担することを表明し、不信感が高まっていた。

松井市長は、IRのメリットの一つが、運営事業者から大阪市と大阪府に寄せられる1,060億円の納付金だと主張してきた。だが、それはIR事業で5,200億円の売り上げがあるという前提に立って試算されたものだということが、高橋氏の証言で判明。この点について同氏は、こう述べて逃げを打った。
「民間の事業計画ですから、いろいろ変わってくることも予想される。通常、変動の幅があることもご理解を賜ればと思う」

■土壌汚染で「撤退」の可能性も

新型コロナウイルスの感染拡大で最も危惧されるのが、運営事業者の「撤退」だ。「IRから安易に撤退はしない」と語る高橋氏とバウワーズ氏だが、市議会では何度も「民間」という言葉が出た。民間の運営事業者なので、赤字になるようなことはしないという裏返しでもある。しかも大阪市は、運営事業者に「撤退しない」という「確約」をとっているわけではないという。いまになって噴出した液状化などの問題は、「撤退」に直結しかねない。

大阪市はこれまで、液状化も土壌汚染も、地中障害物もないとしてきた。2017年9月の大阪市議会で大阪市は、「粘性土を主成分とするしゅんせつ土砂等で埋め立てられており、液状化しにくい地盤となってございます。また、地震により想定される津波高さに対しましても十分な地盤の高さを有しておりまして、安全性を確保しているところでございます」と答弁。その後も、夢洲の土地にはなんら問題がないという姿勢を続けてきた。事業者側が不信感を抱くのは当然だろう。

「液状化については、当初はないと聞いていたが、我々のボーリング調査で(液状化が)判明しました。土地の所有者の責任で適正な土地にしてほしいとお願いしました」(高橋氏)

ハンターが入手した文書の中に、大阪市が作成した夢洲の土地の液状化、土壌汚染、地中障害物の問題発覚にかかわる時系列表がある。そこには、2020年1月に行われた大阪市と大阪府の調査では問題がなかったと記されている。しかし、1年後2021年1月、開発事業者が調査を実施し、3月には《IR事業用地は液状化しないとの認識の下、これを前提に計画を進めてきた》《液状化リスクのある土地では、IRのような大規模開発は極めて困難》とこれまでの調査結果をひっくり返されていた。

2021年6月に大阪市が作成した極秘資料には《夢洲特有の軟弱地盤》《大地震時における液状化被害が懸念される箇所がIR区域内に点在》などと記載されており、2017年の市議会答弁やIR関連資料などで『液状化しにくい』と断言してきた結論を覆す形になっている。つまり、これまで大阪市は、「ウソ」を拡散してIR誘致をしていたということだ。

バウワーズ氏が市議会で何度も「地盤沈下」について懸念を表明したのは、「撤退」を視野に入れていることの証だろう。

ある大阪市の幹部が、こう話す。
「液状化などの土地にかかる費用が790億円と試算されているが、その範囲で必ず収まる保障はなく増える可能性もある。790億円はIR事業が行われる土地だけを試算している。夢洲全体だとさらに金額が膨らむ。本市はそれでもカネをつぎ込むのか。あまりに問題が多い土地となれば、それこそ運営事業者が見切りをつけて『さようなら』となりかねない」

危ういIR構想が、大阪維新の地盤沈下のはじまりになる可能性が出てきた。

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