【速報】在学生自殺で遺族と北海道との交渉決裂|江差看護学院パワハラ死で問われる「謝罪」の意味

北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、在学生の自殺問題をめぐる遺族と北海道との賠償交渉が事実上決裂したことがわかった。道は昨年来、第三者調査で認められた自殺とハラスメントとの因果関係を一貫して否定し続けている上、遺族側からの部分的な和解の提案にも応じない姿勢を見せたという。失意の遺族は4月4日付で道へ公開質問を寄せ、第三者調査後に設けられた直接謝罪の意味を改めて説明するよう求めている。

■鈴木知事「深くお詫び」は真っ赤なウソ

江差の在学生自殺事案をめぐっては昨年春、亡くなった学生のハラスメント被害調査を進めていた第三者委員会が「少なくとも3人の教員による4件のハラスメント」を認め、同4件すべてが自殺に影響したとする調査結果を報告した。

これを受けた道の担当課は同年5月、遺族に直接頭を下げて陳謝し、溯って3月には鈴木直道知事も「深くお詫び申し上げます」との謝罪コメントを出した。遺族はこの謝罪を受け容れ、第三者調査で認められた因果関係を前提に道へ損害賠償を請求。ところが同年10月になって道側の代理人が「自殺の予見性はなかった」「相当因果関係は認められない」との認識を示したことで、賠償交渉は暗礁に乗り上げる。

記者会見や議会でこの姿勢について質問を受けた鈴木知事は「丁寧かつ誠意をもって対応する」と繰り返したが、一方で担当課が説明した交渉方針に僅か15分で了解を出したことが公文書から明らかとになり、語られる「誠意」について遺族の不信が増大する結果に。昨年暮れの道議会では野党系3会派が知事の政治判断で問題を解決するよう強く迫ったが、これに鈴木知事は最後まで明答を返さなかった。

遺族側代理人の植松直弁護士(函館弁護士)によると、道はその後も自殺とハラスメントとの因果関係を認めない姿勢を貫き続け、遺族側が賠償金の額について大幅に譲歩する交渉を試みた際も、飽くまで「自殺への賠償」はできないと明言したという。さらには、第三者調査の認定事実のうち道側で認める部分と認めない部分をはっきりさせるよう遺族が求め、認める部分に限っての和解を申し入れた際も、道からはそれすらも拒否する回答が届いた(*下の画像)。

一連の対応にショックを受けた遺族側は、改めて昨年の謝罪の本意を確認するため4月4日付で道へ公開質問状を送付、併せて翌5日にも道内報道機関にこれまでの経緯を情報提供する考えを固めた。

知事が口にする「丁寧」「誠意」とはおよそ程遠い当局の対応に、亡くなった学生の母親(47)は涙ながらに「騙されたとしか感じられない」と唇を噛む。

「今思うと、去年の謝罪の時にはすでにこういう方針が決まっていたんじゃないかと思います。謝罪の後に慌てて理屈をつけたんじゃなく、第三者調査がどうなろうと最初からこうするつもりだったんじゃないか、って……。もちろん想像ですけど、これまでの対応を見てきた限りではそう思わざるを得ません。謝罪の後、関与した先生たちを追って処分するようなことを言ってたようですけど、1年経っても未だに処分が伝わらないですよね。まるで時間をかけて風化を待っているようにしか見えないです。自分たちの責任で人が1人亡くなったという事実を、道はどうしても認めたくないんじゃないでしょうか」

4日付の質問書で遺族側は、道の代理人に「1カ月以内の文書回答」を求めている。何らかの対応が伝わり次第、引き続き本サイトで報告することとしたい。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 自民党の裏金事件を受けた政治資金規正法の改正案は6月5日に衆議院で採決が行われ、公明党と日本維新の会…
  2. 各種選挙において、聞こえはいいが実は公選法違反になりかねない「一本化」工作。腐敗した県警組織の問題で…
  3. 7月7日に投開票される東京都知事選。立憲民主党の蓮舫参議院議員が先行して出馬表明したが、現職の小池百…
  4.  鹿児島県警の警察官による「公益通報」が、2件立て続けに表面化した。1件目は井上昌一前刑事部長の不当…
  5.  「県民の信頼を取り戻す」「抜本的な対策を進める」――警察官による違法行為が明るみに出るたび繰り返さ…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る