「編集・発行 大任町」ゴミ処理施設パンフに漂う不透明感

 福岡県田川市を含む8市町村が整備を進めるごみ処理施設建設事業についての一方的な主張だけを掲載した印刷物を作成・配布した大任町が、印刷や配布にかかった費用などを確認するため行ったハンターの情報公開請求に、不可解な理由で開示決定期限を延長。記者の抗議と質問に、まともな答えを返せない事態となっている。

 ◇   ◇   ◇

 問題の印刷物は、田川市・郡の全世帯に配布された『田川地区広域 一般廃棄物処理施設 概要案内』。A4版で12ページのカラー印刷物の裏表紙には「編集・発行 大任町」と明記してある。(*下の画像を参照)

 内容は、400憶円前後の公費を投入して整備される「汚泥再生処理センター」「ごみ処理施設」「最終処分場」について、永原譲二大任町長が事あるごとに力説してきた「自説」の紹介。《新聞やマスコミなどで様々な誤った情報が出ています》(大任町のパンフより)、《「説明を全くしていない」「情報を出していない」と、事実とは全く異なる声が上がり、一部の新聞やマスコミなどで誤った情報が錯綜しています》(同)とした上で、事業を巡るこれまでの経緯や建設費などについて、永原氏独自の解釈、解説がダラダラと続くつくりだ。

 建設費の額や施設の性能に嘘はないだろうが、何を根拠にした主張なのかのまるで分からない。田川市や川崎町などが求めてきたのは、積算書や施工体系図といった事業の正当性を証明する根拠資料だが、永原町長はその開示を頑なに拒否してきた。それが田川市・郡に混迷をもたらした原因だ。問題のパンフに疑問や疑惑を打ち消すことのできる記述はなく、永原氏の主張そのままの陳腐な内容となっている。

 ちなみに、《新聞やマスコミなど》という表現が複数回出てくるが、このパンフの作成者は、新聞もマスコミの一つであることを理解していない。

 このお粗末なパンフが、なぜ田川市・郡の全世帯に配布されることになったのか?印刷と配布に、どれほどの公費を投入したのか?ハンターは先月27日、大任町に対し、以下の文書について開示請求を行った。

・大任町が編集・発行した「田川地区広域 一般廃棄物処理施設 概要案内」の作成費が分かる契約書、業者選定理由が分かる文書。
・上記概要案内を配布した際の配布料金が分かる契約書。
・上記概要案内を配布した際の添付文書の印刷費、配布料金が分かる文書。

 これに対し、同町が送ってきたのが下の「公文書開示決定期間延長通知」である。開示するか否かの判断を1カ月間延長するという。情報開示に消極的な同町のこと、事務処理上の問題かなにかを理由に引き延ばししたのかと思いきや、延長理由を見たところ、理解不能な文言が記されていた。

 大任町が開示決定期間を延長する理由は、《請求人からの請求書類については、東部環境衛生施設組合との協議が必要であり、協議及び開示、非開示の判断に時間を要するため》。大任町が印刷物を編集・発行して配布するまでにかかった費用の証拠書類を開示するか否かの判断に、なぜ東部環境衛生施設組合が関わるのか?期間延長と理解不能な理由について確認するため、大任町の担当課に確認を求めた。以下、やり取りの概要である。

――なぜ東部環境衛生施設組合との協議が必要なのか?
職員:一応確認したら、元々は東部の総合調整の中で作る予定であってですね。

――ソウゴウチョウセイ?
職員:はい。

――それはなんのことか?
職員:組合が担っている、ごみとかし尿とか、埋め立ての総合調整。規約にも書いてあるんですけども。

――意味がわからない。それは、組合の議会などで決まったということか?
職員:議会までかかっているかわからないんですけど。

――組合長である永原町長の独断か?
職員:いやいや、たぶん担当課長会議とかの中で、話もしてて……。

――それはおかしい。では、なんで大任町の編集・発行になっているのか?
職員:で、その東部、元々はその東部環境衛生施設組合が作るようになってたみたいなんですけど、それを工事の関係とかは大任町がわかるっちいうことで、東部から依頼をされて、大任町にですね。

――依頼文があるのか?
米丸課長:あ、あります。で、それで大任町が……。

――後付けで依頼文を作ったのでは?
職員:で、えーっと依頼があって、大任町が作って。で、今その……。

――大任町が作ったことに間違いないか?
職員:依頼されてですね。で、今その(記者の)中願寺さんが持ってるのが、裏が大任町って言ってたやないですか。

――編集・発行になってる。ハンターが入手したのは、それしかない。
職員:で、なんかですね、その増刷分っていうのもあって。

――増刷分?
職員:それには、大任町と、ちょっと自分も確認してないですけど、大任町と東部環境衛生施設組合っていうのが入っているみたいです。

――組合から委託されて大任町が発注した、それで間違いない?
職員:はいはいはい。

――だから、その関連文書を出せば済む話だ。組合と協議する必要はない。大任町が発注したのなら大任町が関係文書を出せばいい。
職員:東部の文書とかもあるんで。東部と協議しているみたいですね。

――それはおかしい。編集・発行は大任町。増刷がどうのという話ではない
職員:はいはい。

――今更そんな話をすれば、大任町民を含め(パンフを)配られた自治体の住民を騙していることにならないか?
職員:……。

――このパンフを見た住民は、大任町が編集・発行した印刷物として読んでいる。
米丸課長:だけん、まあ、東部として貰っている人もいる。

――意味がわからない。納得できない。はい、そうですかとはいかない。騙したことになる。
職員:それはわかると思います。

――役所が、そういう後出しをやるのか?結局、周辺の自治体に負担金を求めるだけに、後出しで東部が作成したということにしたのではないか?
職員:う~ん。

――そうとしか取れない。課長会議でどうのこうのというのなら、最初から東部の編集・発行とすべきだ。
職員:う~ん。

――もう一度聞く。なんで、大任町の編集・発行になっているのか?
職員:まあ、そこはちょっとですね……。私にはわからないですね……。

――わからない?
職員:そうですね(苦笑)。まあ、延長は申し訳ないですけども、一応出た文書を見てもらって、流れを掴んでもらえればいいのかなとは思います。

―― だから、流れは後からなんぼでも作れる。後出しで文書を作ることも可能だ。
職員うんうん。

――しかし、これで周辺自治体に負担金を払えと、本当に言えるのか?
職員:……。

――永原さんの傲慢が過ぎる。配られた住民は、編集・発行は大任町だとしか思わない。
職員:……。なってますね。さっき私も見たんですよね。

――ところで、さっき出てきた増刷分というのは、いつ、どこで配ったのか?
職員:ええと、田川市の増刷分と思います。

――田川市の増刷分?
職員:はい。

――すると、田川市では東部の組合が作ったものが配られたのか?
職員:東部……。ちょっと裏にその、どういう風に書いてあるかわからないんですけど。大任町……。

 役場としても、収拾がつかないということだ。何と屁理屈をこねようと、田川郡内で配布されたパンフは「編集・発行 大任町」。この印刷物が、東部環境衛生施設組合から委託されたものだという記述は一切ない。仮に東部の委託を受けて作成した印刷物なら、《この印刷物は、東部環境衛生施設組合から委託されて大任町が制作したものです》などと但し書きを入れるのが普通。編集・発行が東部環境衛生施設組合であるなら、「編集・発行 東部環境衛生施設組合」と明記すべきだが、それもない。

 田川市・郡の世帯数を承知した上でパンフ配布に踏み切ったはずなのに、「増刷」という話が出てくるのもおかしな話だ。なぜ田川市の配布分だけが「増刷」だったのか――?

 そもそも、「組合から委託されたから町で作った。開示請求に応じるかどうかは組合と協議しなければならない」という言い分は、ごみ処理施設問題について永原町長が公言してきた内容と矛盾するものだ。

 永原氏は、あらゆる局面で“ごみ処理施設の建設に関しては、関係自治体から「事務委託」を受けており、大任町以外の自治体から積算書を出せとか、施工体系図を出せとか言われる筋合いはない。大任町以外の市町村には、そうした権限はない”といった趣旨の発言を繰り返してきた。それが、今回の情報公開請求に関しては、パンフの編集・発行を『委託』したという東部環境衛生施設組合との協議が必要だという。これまでの理屈通りなら、事務を『委託』した組合に断りを入れる必要などあるまい。

 都合の悪い話になると、情報を隠したり、時間稼ぎして逃げ道を探すのが永原流の政治手法。この問題について、相当困っているということだろう。

 大任町は、問題のパンフにかかった費用を負担金として東部環境衛生施設組合を組織する自治体に求めており、関係者の間からは「大任町が編集・発行した印刷物の費用を、なぜ他の自治体が払わなければならないのか」「原稿さえ見せてもらったことがない印刷物を、一方的に作ってカネ払えというのは傲慢だ」「こんないい加減な印刷物の費用負担は認められない」などという声が上がる状況となっている。

 

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