安芸高田市で加熱する改革派・石丸市長と選挙違反事件被買収市議のバトル

「居眠りをする。一般質問しない。説明責任を果たさない。これこそ議会軽視の最たる例です。恥を知れ!恥を」――市議会で、居眠りをする市議を徹底的に攻撃するのは安芸高田市の石丸伸二市長。広島県の北、山間部に位置する安芸高田市の知名度を一気にアップさせた石丸市長は就任後、歯切れのいい弁舌に加えインターネット、SNS、ふるさと納税、趣味のマラソンなどあらゆるツールを駆使する手法で同市の知名度をアップさせた。『広島県安芸高田市公式チャンネル』のYoutubeでは、チャンネル登録が24万人を超え、東京都を上回り、自治体の公式チャンネルでは日本一となっている。

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そんな石丸市長と市議会で戦っているのは、安芸高田市の先川和幸市議。「市議会のドン」とも呼ばれ、市政改革を掲げる石丸市長と常に敵対している人物である。

3月6日の市議会のことだった。石丸市長は先川市議が目をつぶっているシーンをみて「今、先川議員、目をつぶっていらっしゃいますが、自身の議会だよりが問題になっている。自覚ありますか」、「居眠りが疑われる場合は確認をすべき」、「目ぐらい開けてください、みっともない」などとかみついた。

すると先川市議は「大変失礼な話」と激しく反論。議場は騒然となり、市議会が終わった後、場外バトルに発展する。

先川市議が控室に戻ろうとする石丸市長に駆け寄り「ここに来い」と人目がない場所を指さし恫喝。石丸市長は、「ここでいいでしょう」と市職員がいる廊下を指さした。先川氏は、怒りの表情で「ここに来いや」と別室を指さすが、動画を撮影していた市民に気付いたのか別室に消えていった。

「逃げないですよ。もういいんですか」、「先川議員、何か予定あるのですか? 私は市長室で待っています」と石丸市長が投げかけるが、先川市議は反応しなかった。

石丸市長はX(旧ツイッター)に、《散会の後、議場の外で待ち構えていた先川議員に「お前は何を言いよるんならぁ」と怒鳴られ、「こっちへ来い」と控室へ呼ばれました。これが地方議会の実態です》と動画を添付してポスト。さらに炎上する状況となった。安芸高田市のベテラン職員がこう話す。
「市議会のドンとして睨みを利かせる先川さんとそれに対峙する石丸市長。市政再建を掲げる石丸市長にとって、どうしても先川さんは許せないのでしょう。つっかかろうとする背景にには、やはりあの事件があります」

職員が言う“あの事件”とは、2019年の参議院選挙で河井克行・案里夫妻が2,900万円をばらまいた公職選挙法違反事件のことだ。安芸高田市では、当時の市長・児玉浩氏が60万円、市議会議長だった先川市議と副議長の水戸真悟氏も20万円を受領していたことが発覚。市のトップ3人が、選挙買収でカネを受け取り、東京地検特捜部の捜査を受けそろって辞職するという前代未聞の事態に発展した。

2020年、何ら政治経験がなかった石丸市長が、「政治再建」を掲げて児玉氏の“後継”と目された元副市長を選挙で破り当選。立件された3人のうち2人はすでに政治の舞台から去ったが、先川市議だけが2020年の市議選で復活していた。

同氏は、河井夫妻の刑事裁判で「20万円は案里さんの集票の目的だと思いもらった」、「20万円はもらったが、使ってしまった。別の20万円を用意して封筒に入れて保管していた」、「東京地検特捜部の検事にはもらっていないと2回目の調べまでは言っていた。けど、ニュースを見て重大なことだと、携帯電話で検事にもらったと伝えた」、「(克行氏は)胸のポケットから白い封筒をテーブルの上に差し出した。現金だと思った」と証言している。市議という公職につくこと自体に疑問符がついてもおかしくない人物なのだ。改革派の市長にとっては容認できない相手だろう。

河井夫妻から買収された広島県議など地方議員が、一度は不起訴になりながら検察審査会で「起訴相当」と議決され改めて起訴される中、先川氏は「不起訴不当」でぎりぎり逃れた経緯がある。ハンターは、広島県議会の中本隆志議長の「口利き」疑惑とラブホテル前での怪しい行動を報じたが(既報)、その記事で入手した手書きメモに決定的な証拠が残されていた。そこには、中本議長と並んで《先川✓20》と克行氏から20万円の現金が渡された証拠が残っていた。

「中本議長が県議会のドンなら、先川市議はうちの議会のドン。克行氏のメモに、中本議長と並んで名前があるというのが、先川市議の存在が大きさを象徴しているように感じます。だから、克行氏からカネをもらっても一人だけ復活できるのです。先川市議から何か言われれば、職員は『はい』と返事するしかない。誰も何も言えないほどの権力を持っているんです。安芸高田市で先川市議に物言えるのは、石丸市長以外に見当たらない」(前出・ベテラン職員)

河井夫妻の買収事件では、カネに汚い首長や地方議員の多くが淘汰された。生き残った先川市議とバトルを演じる石丸市長が、どう戦っていくのか――全国から注目が集まっている。

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