「入札偽装」の動かぬ証拠|不正調達の兵庫県立淡路医療センターに重大疑惑(4)

30台ものノートパソコンを決裁を経ぬまま購入し、半月後に随意契約する形で「不正調達」を行っていたことが明らかとなった淡路島の公立中核病院「兵庫県立淡路医療センター」。当該契約で複数の地元業者を騙して「入札」を偽装していたことまで発覚したが、同センターの岩崎聖子経理課長は「入札はなかった」「組織で方針を決めた」と強弁する。だが部下の職員は、“入札実施の確たる証拠”を残していた。

■残されていた入札の案内メール

昨年1月、淡路医療センターの経理課職員が、淡路市内の業者にパソコン調達の入札があることを通知してきたという。その言葉通り、同月15日の午後、業者の会社に下のメールが送られてくる。

 このメールに添付されていた「入札資料一式」が下。順番に、「入札通知」「仕様書」「入札書」「入札辞退届」である。

 『緊急事態宣言中のため、今回は郵送での入札のみとします。そのため、入札書、辞退届のどちらをご提出いただく場合も、日付は空欄でお願いいたします』――新型コロナウイルスの感染拡大を受けて発出中だった緊急事態宣言を理由に『郵送』で入札書を送れという指示だ。ここまでなら納得できるが、『入札書、辞退届のどちらをご提出いただく場合も、日付は空欄』というのは不可解。役所側(淡路医療センター)が業者の提出書類に、勝手に書き込みを入れるなどという話は聞いたことがない。

仕様書にある通り、スペックを示しての調達ではなく、なぜかパソコンの商品名指定。いぶかる業者。なにかおかしい。案の定、このメールの到着を見計らったように電話をかけてきた職員から、とんでもない“命令”が下される。

■手慣れた脅しで入札額を指定

「落札業者が決まっているので、予定価格以上で応札して下さい。でなければ、今後は貴社から何も購入しません」

愕然とする業者。だが、断れば仕事がなくなる。従うしかない。そこに15時4分、予定価格が記されたメールが送られてくる。

 本体価格やソフトなどの金額も細かく定めるという周到さ。予定価格は計2,268,800円。メールを受け取った業者は「落札業者が決まっている」という職員の言葉は本当なのだと実感したという。

仕様書にある「納期」は「1月29日」。なぜかその当日の13時51分、淡路医療センターから入札結果を知らせるメールが送られてくる(下、参照)。

 落札価格は、予定価格とぴったり同じの2,268,800円。ずいぶん分かりやすい、幼稚な官製談合=入札妨害の形だった。

■法的責任問われる事態

これまで報じてきた不正調達と偽装入札について、時系列で整理すると次の表のようになる。

 ノートパソコン30台等を調達したことについては、随意契約としての形はとれているものの、決裁は購入の17日後。不正な調達だったことは明らかだ。しかも、1月12日のパソコン納品は、正式な契約に基づいておらず、まともな「随意契約」でさえない。

動機は判然としないが、不正調達のパソコン納品から帳尻合わせの決裁までの間に、「偽装入札」が行われたことも確か。残されていたメールが、動かぬ証拠である。淡路医療センター側の説明で、センター内のパソコンから、メールの送信記録などが削除されていたことが明らかとなっており、たちの悪い証拠隠滅が行われた可能性が高い。

ある司法関係者は、上掲の入札通知メールにも、嘘の入札結果を知らせるメールにも公文書偽造・同行使の疑いがあり、入札があるかのように装って業者に協力させたことについては、偽計業務妨害が成立するのではないかと話している。

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