関係者が固唾を呑んで待つ大樹総研・矢島氏の「Xデー」

今年2月に東京地検特捜部による家宅捜索を受けた政財界のフィクサー・矢島義也氏率いる大樹総研。永田町では「参議院議員選挙後の、検察による2つのXデー」として、矢島氏の件と、本サイトでも報じた岬麻紀衆議院議員(日本維新の会)の「経歴詐称」に着手するのではないか、という話が飛び交っている。

だが、矢島氏は今も意気軒高のようで、「矢島氏が、ある国会議員を通じて北海道でゴルフ場を買収し、新しいビジネスをはじめる」との情報が飛び込んできた。

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矢島氏と親しかった企業家に聞くと、「ゴルフ場を買い取って、その周辺に別荘を建てる。それを自分のクライアントらに売って儲けようという計画だと聞いた」と説明する。

「Xデー」が囁かれる矢島氏にそこまでの余裕があるのか――。疑問に思って調べたところ、北海道の、あるゴルフ場が浮上した。

新型コロナウイルスの感染拡大で経営が芳しくないそのゴルフ場は、知人を通じて身売り先を模索していたところ、ある国会議員に矢島氏を紹介されたという。

そこで、話に出てきた国会議員を直撃すると「矢島さんですか? そうね、2回くらい会ったかな。あと、矢島さんの娘さんが主役だと思って出席したら、矢島さん本人のものだったという結婚式。会ったのは、その3回くらいだよ。ゴルフ場の紹介なんてまったく知らない」とにべもない。

たしかに、大樹総研にそんな力が残っているのか疑問だ。2月の東京地検特捜部による家宅捜索後、大樹を頼っていたクライアントが急激に減り、訪ねてくる政治家も皆無になったという。まさに土壇場の矢島氏。眠れない夜は続く。

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警視庁が手掛けた医療ベンチャー「テラ」(本社:東京。東証JASDAQスタンダード上場)の新型コロナウイルス治療薬開発に絡んだ金融商品取引法違反(インサイダー取引)事件では、竹森郁被告が逮捕された。その直前、竹森被告は、「矢島氏のことを洗いざらいぶちまける。とんでもないめにあった。本を出版するほどネタもある」と言い残して、塀の向こうに消えていったという。東京地検特捜部OBの弁護士が、次のような情報を披露する。
「テラの事件は、もともと東京地検特捜部が捜査していた。しかし、途中で警視庁にバトンタッチ。大樹総研の矢島氏に突っ込むと政界の大物が登場するので、それに備えて負担を軽くしておきたいという検察の狙いがあったのではないか。矢島氏のバックはすごいからね」

過去、矢島氏は何度も東京地検特捜部に狙われた。実際に事情聴取を受けた人に聞くと「特捜部は、矢島氏の銀行口座などを徹底的に洗っていました。矢島氏が数千万円の現金をクライアントからもらっていたことも把握していて、捜査のすごさに驚いたもんです。ただ矢島氏は、やばそうなカネは現金でとり、領収書も出さない。特捜部もなかなか裏が取れなかったようで苦戦気味だった」と話す。しかし、矢島氏に「Xデー」が迫っているのは間違いない。

5月30日、竹森被告より先にインサイダー取引で逮捕された久保田俊明被告らの初公判が東京地裁で開かれ、即日結審した。メキシコでの臨床試験の情報を事前に聞き、テラの2万株を買い800万円を儲けたというもの。久保田容疑者は起訴内容を認め、検察は懲役1年6か月、罰金100万、テラの株式23株の没収などを求刑した。7月4日の判決で有罪となるのは確実だとみられており、そうなれば竹森被告も非常に厳しい立場となる。

竹森容疑者への容疑は、テラのワクチン開発に「35億円の融資が実行される」と、虚偽のIR情報を発表させたことだ。有価証券報告書は上場企業にとって最も重要視されるIR情報の一つ、ある証券会社幹部が、次のように解説している。
「IRは、金融庁のシステム、EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)で開示されます。企業がIRとして出したい情報は、まずEDINETに提出される。つまり金融庁がチェックしているのです。テラはこれまで、不透明な経営や財務などで金融庁も要警戒の会社。なぜ、35億円もの融資のIRがEDINETを通ったのか不思議でした」

竹森被告はその内容を事前に知り、周囲に伝えていた。そこで、矢島氏が財務省幹部に何らかの働きかけを行ったのではないか、という見立てが出ていたのだ。

「竹森被告と矢島氏の関係で、IR情報を事前に伝えていたかどうかがポイント。また、テラは東京証券取引所にとっては要注意の企業で、このようなIR情報が発表できた背景には、矢島氏の政界、官僚人脈が動いたというところでも捜査をしているようだ」(前出・東京地検特捜部OBの弁護士)

「Xデー」はいつか――。多くの関係者が、固唾を吞んで事件の行方を見守っている。

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