田川消防署「大任分署」に膨らむ出来レースへの疑念|汚れた土着権力(5)

田川市・郡8市町村の消防行政を司る「福岡県田川地区消防組合」が利権創出の舞台と化した。

400億円もの公費が投じられた「田川地区クリーンセンター」、ごみ処理施設「さくら環境センター」、「最終処分場」といった、いわゆるごみ処理3施設の整備が一段落したとたん、二つ合わせて40億円近くかかるとみられる消防関連施設の建設が進む。消防組合管理者として事業を主導しているのは、田川地区で絶対的な権力を誇ってきた永原譲二大任町長である。

■香春分遣所廃止「大任分署」新設までの不透明な経緯

永原氏が進めてきた消防関連施設の一つは『田川地区・中間市消防指令センター新庁舎』。事業費20億円超、建屋建設に9億円かかるという指令センター建設工事の落札率は99.88%という驚異的な数字だった。しかも永原氏絡みの大型公共事業では当たり前となった「一者応札」。土工事下請けには、今年3月の大任町長選挙で永原陣営の運動員として「現金買収」に走って福岡県警に逮捕され、略式起訴により罰金50万円の処分を受けた人物が代表を務める「ユウセイ」ただ1社が入っていた。胡散臭さを感じるのは記者だけではあるまい(⇒既報)。

もうひとつの利権が、大任町の北側を走る国道322号線香春大任バイパス沿いの一角にある4,957㎡の土地に、総額14億円あまりをかけて整備される予定の「田川地区消防署 大任分署」。現在の田川消防署香春分遣所(田川郡香春町)を廃止し、隣町の大任町に新施設を整備する計画だ。

人口9,877人(今年6月時点)を擁する香春町の面積は約44.5km²。対して人口約4,900人の大任町の面積は、香春町の三分の一程度となる14.26 km²。人口も面積もはるかにしのぐ香春町から、小さな大任町に消防施設を移すという計画には違和感を覚える。

では、大任町に消防分署を建設するに至った経緯はどのようなものだったのか?大任町、消防組合、香春町の3行政機関に情報公開請求したところ、開示決定期間を30日延長した組合を除き、大任町と香春町の関係資料が開示されている。その中に含まれていた下の「香春分遣所についての経過報告」(香春町作成)に沿って事業の流れを見ておきたい。

まず2023年7月、組合が香春町に、現在ある香春分遣所が「浸水地」であることを理由に代替地を決めるよう口頭で要請。翌24年5月に下に示す文書で正式依頼していた。

この文書に示された分遣所移転の理由は、“施設の老朽化”と“感染症対策を含む衛生環境対策”。なぜか「浸水地」の文言は消えている。候補地としての条件は「国道322号線バイパスに面した用地」のみ。他は一切求めていなかった。

口頭での依頼から文書による正式依頼までの間に、候補地捜しが行われていたことは前掲の経過報告でも明らかだ。その証拠に、正式依頼を受けた香春町はわずか5日後の5月13日、次の5地点を比較対象地として提示。候補5地点の中から、下記文書の候補地2「香春町総合運動公園浦松第3駐車場」を第一候補地として推していた。

これに対し、組合側は同年7月、「双方がともに消防署の拠点となる条件が満たされないと判断されたため、用地の受領に至りませんでした」とする断りの文書を発出する(*下が当該文書)。

不可解なのは、香春町が開示したここまでの経過を示す一連の文書の中に、「国道322号線バイパスに面した用地」以外に組合が求めた条件が出てこないことだ。上掲の組合発出文書にある「消防署の拠点となる条件」とは何だったのかを示す文言は、香春町の文書のどこにも記載されていない。「双方がともに消防署の拠点となる条件が満たされないと判断」したというが、“消防署の拠点となる条件”は不明。計画自体の妥当性に疑いを抱かせる公式記録の杜撰さである。

断り文書に添付された「候補地比較表」(*下の画像)には町と組合の協議結果が記されているが、ここでも「条件」が何だったのか分かる記述はない。候補地を不適とした理由は、難癖をつけたとしか思えないものばかり。初めから香春町内の土地に移転するつもりがなかったのではないか――そうした疑念が生じる。

いずれにせよ、出来レースさえ疑われる組合と香春町とのやりの結果、同町内での消防分遣所用地の確保は見送られ、次の展開に移る。いきなり候補地として登場するのは、香春町の三分の一以下となる面積しかない大任町の一角である。

(中願寺純則)

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