本サイトで一昨年春に配信した北海道警察の違法捜査事件で(既報)、不当逮捕などの被害を受けた市民が道警に賠償を求めた裁判が12月上旬、札幌地方裁判所(守山修生裁判長)で審理を終えた。最後の口頭弁論では捜査に関わった警察官が尋問に立ち、当時の杜撰な捜査の実態を明かすこととなった。
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既報の通り、札幌の住宅街で違法捜査事件が起きたのは2023年3月下旬のこと。存在しない傷害事件を強引に立件しようとした北海道警察・札幌中央警察署の捜査員らは、事件現場とされるマンションの住人女性からカードキーを借り受け、「部屋には入らないで」という女性の求めを無視して機動隊を動員、武装した警官らが窓ガラスを叩き割って室内に突入し(*下の写真)、同居男性を緊急逮捕した。

突入行為、逮捕行為のいずれも裁判所の令状を伴わない任意捜査だったが、前述の通り部屋の主は突入に同意しておらず、傷害の被害も否定していた。女性宅訪問から強行突入まで約4時間の猶予があったにもかかわらず、警察が裁判所に令状を請求したのは逮捕後のことだった。
逮捕された男性の弁護人がこの対応に異を唱えて勾留の取り消しを求めた結果、裁判所は2度の却下・抗告を経て異例の「再度の考案」に踏み切り、男性を釈放。警察の無令状捜査を次のような厳しい言葉で批難することとなった。
《捜査機関が被害者方居室の玄関ドアを開けた行為は、被害者の管理権及びプライバシーを侵害するものであり、違法な強制処分にあたる》
《窓を破壊した行為も危険かつ不利益性の高いもので、違法の程度は重大である》
《あえて詳細な事実関係を糊塗して緊急逮捕状等を請求したとみられるから、将来の違法捜査の抑止の見地からも相当でない》
とりわけ最後に引いた一文は裁判所の憤りさえ伝わる文言。警察は緊急逮捕の令状請求にあたり、住人女性の許可を得て部屋に突入したと虚偽の報告をしていた。つまり、捜査機関が裁判所を騙していたことになる。裁判所がその事実を認識したのは、裁判官らが住人女性に直接聴き取りをした結果だった。
被害から2カ月ほどが過ぎた23年6月、不当逮捕の被害に遭った男性と住居侵入・器物損壊の被害に遭った女性は道警に賠償を求める訴訟を提起。同年9月に始まった裁判はこれまで6回の口頭弁論を重ね、12月5日午後にあった直近の弁論では現場にいた警察官らの尋問が行なわれた。そこで明かされたのは、強行突入時点では逮捕の方針が完全に固まっていなかったという事実。原告代理人の反対尋問に応じた警察官は、「突入してから考えるつもりだった」という発言を残すことになったのだ。
原告代理人:男性がDVの事実を認めた時点で緊急逮捕する方針だったと?
警察官:はい。原告代理人:もし認めなかったら?
警察官:その時点でどうするか考えようと……。原告代理人:とりあえず突入してみて、認めなかったらその時は考えようと?
警察官:認めなくても、暴力はあったと。原告代理人:『認めた時点で逮捕』ということだったのでは?
警察官:上司に報告して、組織的に考えます。
これに先立つ10月下旬には、現場の警察官らの不起訴処分が伝えられている。原告の男女は国賠提訴に併せ、当時の捜査員たちを住居侵入や虚偽公文書作成、特別公務員暴行陵虐などで刑事告訴していたのだ。3年越しで全員を不起訴とした札幌地方検察庁は処分の理由を明かしておらず、あきらかな犯罪行為が一切お咎めなしとされたのが何故なのかは定かでない。
国賠訴訟は12月の尋問をもって結審。本年度末の来年3月下旬に一審判決が言い渡されることになった。最後の尋問に立ち会った原告女性は「こういう捜査を許してしまうとまた同じ被害が再発することになる」と警鐘を鳴らしつつ、真っ当な司法判断に期待を寄せている。
なお、当時の強行突入では前述の通り女性宅の窓ガラスが叩き割られ、また逮捕時の揉み合いで同居男性が手などを負傷したが、窓の修理、怪我の治療、いずれの費用も警察は一切負担していない。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















