ブラック組織・鹿児島県警による不祥事捜査記録「応答拒否」の審査請求、半年経てなお「継続審議」

幹部警察官による不当な捜査指揮や情報漏洩に揺れる鹿児島県警察が職員の不祥事の捜査記録の開示請求に「存否応答拒否」を貫いている問題で( 既報 )、これを不服とした審査請求の諮問(意見伺い)を受けた県情報公開・個人情報保護審査会(野田健太郎会長)が本年1月下旬時点で「継続審議」を決め、議論がなお結論に到っていないことがわかった。答申の時期は今のところ未定で、これがまとまらない限り県公安委員会の裁決もまとまらないことになる。

◆   ◆   ◆

先の既報の通り、ハンター編集部が鹿児島県警で一定期間内に作成された職員の不祥事記録を開示請求したのは2022年1月。翌月の一部開示決定で『懲戒処分台帳』などの公文書が開示され、過去5年間の警察職員の処分などがあきらかになった。

この時の開示文書をもとに、筆者が新たな開示請求に臨んだのが昨年3月のこと。具体的には、不祥事の「公表の記録」と「捜査の記録」の2種の開示を改めて求めた。

前者の文書が開示されれば県警が自らの不祥事を積極的に公表しているか否かを検証でき、後者からは職員の不祥事のうち法令違反にあたる事案を適切に捜査していたかどうかを検証できることになる。

請求を受けた鹿児島県警は一度の期限延長を経て同年5月、前者については「一部開示決定」を、後者については「存否応答拒否決定」を出すに到った。即ち、公表の記録は開示する一方、捜査の記録は「文書が存在するかどうかをあきらかにしない」という決定だ。決定書によれば、不開示の理由は個人情報や公安情報の保護のためだという(下掲)。

《鹿児島県情報公開条例(以下「条例」という。)第10条(存否応答拒否)に該当します。あなたの請求に係る公文書については、その存否を答えること自体が、個人の権利利益を害するおそれ及び、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第7条第1号(個人に関する情報)及び同条第4号(公共の安全等に関する情報)に規定される不開示情報を開示することになるので、存否を答えることはできません》

その後の記事で指摘したように、鹿児島と同じ九州管区警察局の福岡県警は同旨の請求に応じて捜査の記録を適切に開示しており、筆者の地元の北海道警も同様の対応を続けている。鹿児島のみがそれを拒む姿勢は面妖というほかなく、情報公開条例が適切に運用されているとは言い難い。

不開示決定から2カ月を経た7月23日、筆者は同決定を不服として鹿児島県公安委員会に審査請求(不服申し立て)を行なった。翌8月、申し立ては県情報公開・個人情報保護審査会に諮問され、1カ月を経た9月になって県警が「弁明書」を提出、さらに1カ月が過ぎた10月に筆者が改めて「反論書」を提出したところだった( 既報2)。

この時の書面で筆者は「県公安委員会の手を煩わせることなく、審査の結果を待たずに自らご再考を」と鹿児島県警に呼びかけたが、県警がこれに反応することはなかった。

その後も何の進展もなく、審査の申し立てから7カ月間が過ぎてなお審査委の答申は得られていない。ようやく小さな動きが伝わったのは1月下旬のことで、当事者である筆者には何の連絡もないまま県公式サイトにひっそりと次のような報告が掲載されていた

《諮問公第165号について、実施機関による処分理由説明後、委員の意見交換が行われ、継続審議となった》

審査請求の半年後に初めて県警の理由説明が行なわれ、ようやくかの存否応答拒否決定が議論の俎上に載ったものの、結論には到らなかったという。

昨年7月に筆者の審査請求を受理した県公安委は、この審査委の答申を受けてから裁決を出すことになるため、もとの県警の決定が適切だったかどうかの判断が示されるのは早くとも3月以降になるわけだ。猶予の時間を存分に与えられた県警がどういう理屈で先の理由説明に臨んだのかは知る由もなく、委員らの意見交換でどういう議論があったのかもまた藪の中。北海道の場合、審査請求人自らが委員らの前で意見陳述することが認められており、その場を一般市民が傍聴することも可能だが、鹿児島県の情報公開審査委の審議は原則非公開となっており、先述のように審査請求人へ審議の予定が伝えられることもない。

引き続き折に触れて担当課へ問い合わせを寄せ、進捗が伝わり次第本サイトで報告していくこととしたい。なお、もとの存否応答拒否決定への不服申し立てについては行政訴訟という手段もあり、これは原則として決定から6カ月以内に提起しなくてはならないとされている。ただし、審査請求を行って3か月を経ても結論が出されない場合は、その時点で訴訟が可能となることをつけ加えておく。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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