9月に内閣改造を終え支持率上昇を狙った岸田文雄首相だったが、“政務三役”である副大臣や政務官に就任したばかりの3人を、スキャンダル絡みで次々に更迭するという事態になった。悪夢の「辞任ドミノ」に苦しい対応を迫られる状況だが、関係者の間から「副大臣なんて聞いて呆れる」「きちんと身体検査されていれば、副大臣どころか議員にだってなれないはず」などと批判されているのが、財務副大臣をクビになった神田憲次衆院議員。一体どんな人かと取材してみれば……。
◇ ◇ ◇
更迭のトップバッターは、文部科学政務官だった山田太郎参議院議員で、週刊文春に女性との不倫を暴かれて撃沈。続いて、法務副大臣に就任した柿沢未途衆議院議員が、今年4月の江東区長選で当選した木村弥生氏に、禁止された選挙期間中の有料動画広告を指南したとして辞任。財務副大臣だった神田憲次衆議院議員は、税理士として事務所を開業していながら、税金を滞納して4度も所有する不動産を差し押さえられていることがわかり、更迭となった。
文科省は「教育」を担う役所、法務省は法律を司る機関、財務省は国家予算の基である税金を徴収し、使途を決める日本の要だ。3人の政治家がクビになった理由は、岸田首相の語る「適材適所」からかけ離れ過ぎている。
なかでも一番の問題人事だったとみられている神田氏は、税理士資格を有する人物。名古屋市内の自社ビルに税理士事務所まで構えている。「しかし」と名古屋市の関係者が呆れ顔でこう話す。
「差し押さえたのは4回ですが、税金の滞納という意味では数十回に及ぶのではないでしょうか。督促状にもまったく応答がなく、差し押さえだとなって急に対応するという繰り返しでしたから」
差し押さえられた名古屋市のビルはある会社(以下、N社)が所有しており、その社長が神田氏。ビルの5階が税理士事務所となっている。2012年にN社名義でビルを購入しているが、その翌年2013年には税金滞納で最初の差し押さえ。2014年に、二度目の差し押さえをくらっていた。
納税意識が希薄だったのは確かで、昨年年8月に三度目の差し押さえ。滞納している税金が複数あったとみられ、登記簿には9月になっての「参加差し押さえ」が記載されている。これで合計四回となる。
神田氏が衆議院議員に初当選したのは2012年12月のこと。四度の差し押さえは、すべて議員バッジをつけている在任中のものだ。政治家である前に“社会人”としての感覚がズレているようで、税金滞納による差し押さえが報じられた直後も、反省する姿勢は皆無だったという。
「岸田首相は、増税を表明しながら減税も実施、という相反する政策を打ち出しており、財務省は難しいかじ取りが迫られている。その財務省の副大臣に税金絡みのスキャンダルが出た。連絡をとったら、財務副大臣の辞任なんてこれっぽっちも考えていなかった」と話すのは、神田氏の所属する安倍派の衆議院議員。神田氏は「今は税金を滞納していないから問題はない。この程度のことが進退にかかわるのか」とうそぶいたという。
しかし、税金滞納以外にも秘書へのパワハラまで暴露され、追い込まれた末に辞表提出。神田氏の元秘書が、神田氏の正体を暴露する。
「神田は、地元でも秘書への対応があまりにハチャメチャなので有名です。秘書をやっていて情けなくなりました。税金滞納でわかるように神田氏はルーズな性格です。しかもかなりの性悪。ある時、大事な会合で他の議員が揃っているのに遅れて平気でやってきたことがありました。当然、秘書は大事な日程だと伝えています。しかし、彼は絶対に自分が悪いとは認めません。『お前、なんで大事な会合だとと言わないのか』『とんでもない恥ずかしい目にあったじゃないか。わかってんのか』などと他の議員らがいる前で秘書を罵倒し、10分以上も叱責するのです。怒鳴るのが疲れてくると『クビにしてやるぞ』『罰金を払え』と罵詈雑言の限りを尽くす。そこで、みかねた他の議員が『ちょっと』と言ってその場を収めてくれました。しかし、事務所に戻るとまたパワハラがはじまる。そういったことに嫌気がさして、やめて行った秘書が何人もいます」
神田氏は名古屋市内に住まいとなる分譲マンションを所有している。だが、元秘書は「ボロボロのアパートに住所を変更して、どこが住民票のあるきちんとした住まいかよくわからない。不思議な人でした」と振り返る。
官報などから、神田氏の住所をたどっていくと名古屋市中村区で二度、転居をしている。賃貸物件の検索サイトで当該物件をチェックしてみると、6畳一間程度で家賃が5万円前後、かなり年期が入ったアパートが建っていることがわかる。とても、衆議院議員で財務副大臣まで務める人物が日常的に住む場所とは思えない。
税金を滞納していたビルは、5階に神田氏の税理士事務所の看板、4階には神田氏の知人の税理士が入居している。しかし1階から3階までは、空き家の状態が5年以上も続いているという。地元の地方議員が、神田氏について手厳しい見方を示す。
「神田さんは地元にほとんどいないので、自宅はなくてもいいんじゃないか。だから安くあげようと実態のない住まいを住所にしているのではないですか?税理士事務所を構えているビルも、なんだか怪しい。2017年には地元の県議や市議から、神田氏を次の総選挙には出馬させないでくれ、支部長を解任してくれと内容の嘆願書が党本部にまで出されたほどです。財務副大臣に就任と聞いて、ヤバいんじゃないかと思ったらその通りになりました。神田さんは現在4期目なので『5期になれば大臣も』と言っていました。ですが、このざまじゃ次の選挙はとても当選できませんよ」
安倍晋三元首相のもとで大量に「乱造」された安倍チルドレンの大半が現在の4期生。神田氏もその一人である。