8月28日、安倍晋三首相の辞任表明で政局は一気に過熱、総裁選の火ぶたが切られた。

首相の第2次安倍政権発足からの連続在任記録は7年8ヵ月、日数でいえば2,799日となり、大叔父の佐藤栄作元首相を抜き歴代最長となっていた。その安倍氏の突然の辞任。竹下派・平成研の幹部は驚きを隠せない。
「安倍さんの体調が悪いということはわかっていたけど、コロナ禍もあって、もう少しはやってくれると思っていた。ただ、こうなった以上は総理・総裁の椅子を巡っての戦争。激しいバトルが始まっている」

■菅氏優位で進むポスト安倍

安倍首相の辞任表明から3日。長年、女房役だった菅官房長官が総裁選出馬の意向を固めた。世論調査では、毎回、次期総理として最も高い数字を集めている石破茂元幹事長の立候補も確実視される他、ポスト安倍の候補として有力視されてきた岸田文雄政調会長も名乗りをあげそうだ。

「前回、安倍さんと石破さんが一騎打ちで総裁選を戦った。安倍さんが圧勝だったが、1対1でやると、どうしてもシコリが残る。安倍につくのか、つかないのかと2択を迫る空気が自民党の中に充満するようになった。派閥の意向はあれど、今回は3人か4人くらいで総裁選をやる方向で、理想的な形だ」と自民党幹部が明かす。

菅、石破、岸田の3氏以外で名前が挙がるのが、下村博文元文科省、稲田朋美元防衛相、西村康利経済再生相、野田聖子元厚労相など。出馬に意欲を示していた河野太郎防衛相は、所属する麻生派(志公会)が菅支持を決めたことで、ポスト安倍レースを降りた。

森喜朗、小泉純一郎、福田康夫そして安倍首相と、平成から令和にかけ総理・総裁の座を占め続けてきた清和会(細田派)だが、「安倍首相が長くやれたのは他派閥のおかげ。ここは静観だろうというのがうちの派の大勢だ。支持するのは、首相を支えてきてくれた菅さん。これで決まり」(清和会所属の衆院議員)――裏を返せば、清和会はキングメーカーとして君臨するという意味になる。それは、麻生太郎副総理、二階俊博幹事長も同じだ。

総裁候補として名前のあがった政治家のうち、下村、稲田、西村の3氏はいずれも清和会で安倍首相とも近い。100人近い所属議員がいる清和会の場合、推薦人20人ほどを出しても影響はない。菅氏の後を睨んで3人のうち誰かを出馬させる可能性もあるが、今回は見送りになる公算が高いとみられている。

野田氏は2015年の総裁選で出馬を表明したが、20人の推薦人が集まらず断念。今回も、状況は変わっていない。

■露骨な石破潰し

主要各派が「菅支持」で固まる一方で、マスコミ各社の世論調査は全く違う結果となっている。いずれも石破氏が断トツトップで30ポイント台。菅氏はその半分程度の数字でしかない。

地方の自民党員は石破支持が多く、民意との隔たりが少ない。党員投票を実施すれば、石破氏が有利だ。そこで、菅氏を推す二階幹事長をはじめとする党執行部は“石破潰し”を徹底するため、今月15日に予定される両院議員総会で総裁を決める構えだ。

「党員投票をやらないということになれば、複数の候補を出して、激しい選挙戦だったことを印象付けなければならない。後継は菅さんで決まったも同然だが、選挙はやる。それで自民党は安泰だ」。前出の自民党幹部はそう言うが、党員投票を省こうとしている二階氏らを、国民が冷めた目で見ているのは確か。談合政治に対する反発が、次の総選挙の結果を左右するかもしれない。

(山本吉文)



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