鹿児島県警「姑息」の証明|破綻した組織防衛の弥縫策

組織内で行われた不当捜査の実態を内部通報した2件の事案に揺れる鹿児島県警。発端となったのが、2021年に鹿児島県医師会の男性職員(2022年10月に退職)が起こした強制性交事件のもみ消しと、それに続く不当な捜査指揮だったことは報じてきた通りだ。

でっち上げ、不当捜査、隠蔽と何でもありの同県警だが、都合の悪い話が外部に知られたと分かったとたん、火消しのための弥縫策を打ち出し、体面を保つことに躍起となっている。6月21日に行われた野川明輝県警本部長の会見と記者レクの模様が報じられているが、その内容もまた、子供が笑いそうな創作でしかなかった。以下、「姑息」の証明である。

■「刑事企画課だより」

ハンターは昨年1月、鹿児島県警に「令和元年から本年度までの鹿児島県警察本部職員の懲戒処分台帳、訓戒処分台帳及び注意処分台帳」の開示請求を実施。2月、開示された文書のうち「犯罪捜査の対象となった事案の捜査の記録」を請求した。

これに対する県警の回答は「存否応答拒否」。つまり対象文書が存在するかどうかについても明らかにしない、というものだった。北海道警や福岡県警は開示するのに、存在さえも認めない鹿児島県警。この問題に詳しい北海道在住のジャーナリスト、小笠原淳氏も開示請求し、同様の存否応答拒否を受けて審査請求を行っている。

県警の対応についての小笠原氏の第一報は、昨年10月配信の《鹿児島県警の闇(上)|警官不祥事の捜査記録を存否応答拒否で隠蔽》という記事。同氏は、不開示決定から2カ月を経た7月23日に存否応答拒否の決定を不服として鹿児島県公安委員会に審査請求。翌8月、申し立てが県情報公開・個人情報保護審査会に諮問され、1カ月を経た9月になって県警が「弁明書」を提出、さらに1カ月が過ぎた10月に同氏が改めて「反論書」を提出していた。

開示請求から審査請求までの経過を批判した小笠原氏の記事に反応したのが、鹿児島県警の刑事企画課。同年10月発出の「刑事企画課だより」(以下、「刑企だより」)で、《事件記録の写しは、送致(付)した事件全てで作成し、保管する必要はありませんので、写しを作成する前に、その必要性を十分検討しましょう》、《現に保管している事件記録の写しについても、保管の必要性を適宜判断し、保管の理由が説明できず、不要と判断されるものは速やかに廃棄しましょう》などと、警察にとって都合の悪い捜査記録の作成を否定すると同時に、存在するものの廃棄を促すという形で、隠蔽姿勢を露わにする(参照記事:【独自入手】鹿児島県警で組織的隠蔽加速|捜査記録「速やかに廃棄」指示)。刑企だよりが発出された直後、県警OBなどから「廃棄が始まっている」との情報が寄せられていたことを付記しておきたい。

刑事企画課が文書廃棄を促したのは、小笠原氏の審査請求が認められ、存否応答拒否という処分が取消された場合を懸念したからに他なるまい。隠したかったのが「警察官の犯罪行為」であることは容易に想像がつく。現在問題になっている『再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!』という記述も、“組織にとってマイナスになる文書はすべて廃棄せよ”という意味だ。

◆   ◆   ◆

小笠原氏がこの刑企だよりを批判したあと、県警は次の「姑息」に手を染める。記載内容が問題視された刑企だより『NO,20』から約50日後、『NO,23』で批判の対象となる文言を削り、次のように改変したのだ。悪質な隠蔽工作だったと言わざるを得ない。

《「被害届の即時受理」は、被害届を出さないと言っているものまで受理することを求めているものではありません

全文削除

《被害者が秘匿録音していることもありますので、対応等の言動には十分注意してください》

全文削除

《「警察にとって都合の悪い書類だったので送致しなかったのではないか」と疑われかねないため、未送致書類であっても、不要な書類は適宜廃棄する必要があります》

《必要なものは検察庁に確実に送致するほか、その写し等については、犯罪捜査規範施行細則等に基づき、適切に保管管理し、保管管理が不要と判断したものは、関係者のプライバシー保護の観点等からも、確実に廃棄する必要があります》

再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!》

《国賠請求や再審請求等が提起された場合には、その対応に必要なものは引き続き廃棄せずに保管管理する必要があります》

刑企だよりの改変について県警側は、ハンターが報じたことで「誤解を招く」と判断し記述を改めたとしているが、記事化していなかったらより多くの証拠文書が闇に葬られていた可能性が高い。前述したように、刑企だよりに促されて廃棄された文書があったことは確かで、証拠隠滅に走ったとみられてもおかしくない鹿児島県警の行為は、徹底的に糾弾されるべきだろう。

■盗撮犯逮捕の真相

情報漏洩があったとして前生活安全部長を国家公務員法違反の疑いで逮捕した県警の野川本部長は、前部長が北海道の小笠原氏に送ったとされる文書に記されていた枕崎署員による盗撮事件について、「必要な対応がとられていた」と主張している。“必要な対応”とは“盗撮犯の逮捕”ということらしいが、それは後付けの言い訳。実際には、4月8日のハンターへの家宅捜索でみつけた前生安部長の告発文の内容を精査し、あわてて立件したというのが真相だろう。

 まず県警が手を付けたのは、ハンターのパソコンデータにあった告発文書の出所調査。記されていた3件の隠蔽事案のうち2件がストーカーと盗撮という生活安全部マターの話だったため、詳細を知り得る立場の職員を絞り込むのは容易だったはずだ。

次に、当たりをつけた生活安全部関係者のパソコンデータを解析、あるいは復旧させ、残っていた内容を確認。ハンターのパソコンにあった画像データと同じものを作成していた前生安部長を、情報漏洩の犯人として特定していたとみられる。この段階で前生安部長の身柄をおさえることが可能となっていたはずだが、組織の体面を守るため、先にやらなければならないことがあった。盗撮犯の逮捕である。

前生安部長は告発文書の中で、盗撮事案の発生場所や犯行に及んだ枕崎署の警察官が特定されていたことも明かしている。告発内文書にある盗撮事案を放置しておけば、いずれハンターが記事化して「隠蔽」がバレるのは必至。そうならないためには、先んじて盗撮事案を立件し、「必要な対応がとられていた」という言い訳を用意する必要があった。前生安部長が告発文に記した隠蔽の内容がすべて事実だったとなれば、まさに「内部通報」の証明。いまになっての本部長の強弁は成立しなかった。すべてを闇に葬るはずだった盗撮事案は、こうして立件された。つまり、前生安部長の告発がなければ盗撮犯は捕まっていなかったということだ。

県警としては、盗撮犯の逮捕前に告発文が世に出ることは避けねばならない。だからこそ、ハンターに対しては告発文について一切触れず、「告訴告発事件処理簿一覧表」のデータ削除にのみ、こだわった。事件発生から5カ月も経っての立件は、決して胸を張れるものではあるまい。盗撮犯は、昨年12月から今年4月のハンターへの家宅捜査までの間、おそらく自由に動きまわっていたはずだ。県警は犯人を監視していたというが、四六時中捜査員を張り付けるのは無理な話。犯人の枕崎署員は長期間野放し状態であり、組織の目を盗んで犯罪行為を重ねていた可能性さえある。鹿児島県警が守りたかったのは、県民の安心・安全ではなく、「組織」なのだ。

◆   ◆   ◆

もう一点、崩れている野川本部長の会見での主張がある。野川氏は盗撮犯逮捕が遅れた原因を、自身が「証拠が乏しい」と判断したことだと話している。しかし、これには不同意。事件が、「野川発言はウソだ」と言っても過言ではない経過をたどっていたからだ。

盗撮事件が起きた枕崎市内の公園に設置された防犯カメラの映像から、犯行時に使用された白いクルマが捜査車輛だったことは、時日を置かずに分かっていた。そもそも、証拠が足りない段階で本部に警官の非違事案として「速報」するわけがない。事実、速報後は犯行に及んでいた警察官のスマホを差し押さえて解析し、事情聴取まで終えていたというのが実態だった。

何らかの理由で犯人逮捕が遅れたとしても、せいぜい数日間。5カ月もかけて証拠を揃えなけれならない事案ではなかった。少なくとも、前生安部長が北海道の小笠原氏に告発文書を送った「3月28日」の時点では、すべての証拠が出尽くしていたとみるのが普通だろう。誰の指示であったにせよ、犯罪者を野放し状態にしていたのは確かで、その責任は野川県警本部長にある。タレントの伝言ゲームでもあるまいに、本部長の言葉が枕崎署に伝わる段階で「誤解された」という言い分も幼稚すぎて笑うしかない。

盗撮を隠蔽していたとすれば、それを指示した人物も実行した者たちも、「犯人隠避」という罪を犯していたことになる。疑われているのは県警トップと、鹿児島県警という組織体だ。その犯罪行為について、疑惑を持たれている鹿児島県警が調査し、本部長が潔白を主張したというのだからとんだ茶番だろう。泥棒が、「自分で調べてみたけど、私はシロです」と言っているようなものではないのか。多くの国民は、どうやら腐敗組織の弥縫策を見抜いており、こう思っているはずだ――「姑息な連中だ」――と。

(中願寺純則)

 

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