各種選挙において、聞こえはいいが実は公選法違反になりかねない「一本化」工作。腐敗した県警組織の問題で揺れる鹿児島県では、知事選が行われるたびに「一本化」の話が出てくる。今回の知事選(6月20日告示、7月7日投開票)を前に、お決まりの一本化工作が行われていたことが分かった。
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2016年の知事選では、初当選した三反園訓氏(現・衆議院議員)が、「川内原発の廃炉」を前提に何度も「私を信じてもらいたい」と訴え、反原発派の平良行雄氏(現・鹿児島県議会議員)と「政策合意」まで結んで一本化に成功。当選したとたん、あっさり政策合意を反故にし、反原発派との一切の連絡を絶った。反原発派はもちろん、県民をも騙したということで、一番強いと言われる二期目を目指した前回の知事選であえなく落選している。
三反園氏が落選した2020年の知事選でも、一本化工作の実態が明るみに――(⇒【2020鹿児島知事選】「一本化工作に公選法違反の疑い」)。現職だった三反園氏を倒そうと動く元職陣営の関係者が、元職に断りなく、無所属新人の立場で出馬した塩田康一氏(現・鹿児島県知事)に「副知事」という条件を提示して「候補者一本化」に応じるよう説得していたのだ。激怒した塩田氏はすべての申し出を拒否。自力で初当選を果たしている。
そして今回、またしても一本化工作である。ある反原発派幹部・A氏の証言によれば、今年に入って、知事選出馬を表明している女性元県議の陣営関係者が、「現職を利する」という理由を挙げ、事実上の一本化を説得に来たという。他の女性元県議陣営関係者も一本化の話で面会を求めてきたが、A氏は「断った。会うはずがない」と話す。
別の反原発派の人物が呆れ顔でこう語る。「元県議は自民党にいたわけで、川内原発の20年運転延長に賛成していたはずだ。それどころか、マニフェストには2050年までの運転を容認することになる文言が記されている。その方を支援する人たちが、私たちに一本化を持ちかけるというのは、どうなんですかね。もちろん、ご本人の知らないところで動いているんでしょうが、節操がなさ過ぎます」
一本化を持ちかけるのは、現状では勝てないということを認めている証拠だ。表できれいごとを主張しながら、裏で一本化工作を行う陣営を、県民は信用するのだろうか?