【速報】北海道新聞・急逝の役員に自殺説|日ごろから経営計画に危機感訴え

北海道新聞で1月中旬に伝わった役員の急逝に関し、自殺説が囁かれている。亡くなった役員は同社の不動産事業などに関し、具体性が見えない上層部の経営計画に日ごろから苦言を呈していたといい、真っ当な危機感を共有できない状況に悲観して命を絶った可能性が高い。

■社長の弔辞に「事実と異なる」の声

訃報が伝えられたのは、昨年6月から常務取締役管理統括本部長兼企画室長を務めていた男性社員(62)。社内での立ち位置は、のちの告別式で同社の宮口宏夫社長が寄せた弔辞にこう綴られている。

私が21年に社長になった時、経営方針の取りまとめ役であり、推進役でもある取締役企画室長をあなたにお願いしました。企画室長は内閣で言えば官房長官に当たる要のポストです

その「官房長官」が亡くなる前日、宮口社長は会議の席で当人と顔を合わせていたという。同じ弔辞から、その夜を振り返った箇所を下に引く。

いつも通り経営に関する情報共有を済ませ、「これで解散しましょう」という私の言葉を合図にあなたは椅子から立ち上がりました。それが生前のあなたを見る最後になるとは、その時は夢にも思いませんでした

道新の社員・元社員らは、この記述を「事実と異なる」と指摘する。複数の証言を総合すると、翌日に亡くなることになる常務はその夜、次期の決算を赤字とせざるを得ない報告を上げ、社長から激しく叱責を受けたとされる。

もとより折に触れての諌言に聞く耳を持って貰えないことに憔悴していた常務は、掛けていた椅子からしばらく立ち上がることができなくなり、茫然と宙をみつめるばかりだったという。事実ならば、弔辞の「私の言葉を合図にあなたは椅子から立ち上がり」なる逸話とは正反対の状況だったことになる。

翌日午前中の会議を、常務は発熱を理由に欠席。宮口社長は札幌市内にある常務の自宅を訪ねたが、常務自身は面会を拒否した。この社長訪問については「心配のあまり足を運んだ」という説と「家族から相談の連絡を受けて駆けつけた」という説とがあり、いずれなのかは定かでないものの、社長の辞去直後に常務が変わり果てた姿でみつかったという経緯は多くの証言で一致している。

現場からはその日午前10時ごろに救急通報があり、最終的にはヘリコプターが出動する事態になったことが確認できているが、意識を失った常務が蘇生するには到らなかった。

■社内で「自殺説」前提の怪文書

3日後に執り行なわれた通夜とその翌日の告別式には多くの社員・元社員が足を運び、会場の椅子が足りなくなるほどだったという。道新は自紙の訃報記事で常務の死因を「心不全」と発表したが、ほどなく社内外に出回った複数の怪文書(少なくとも3種)は自殺を前提に綴られることになり、多くの関係者にとってそれが周知の事実となった。現在、社内では「常務は会社に殺された」との批判まで囁かれているといい、事情を知る関係者はこう解説する。
「常務が亡くなった数日後、道新では新社屋着工の地鎮祭があり、そこには当然、社屋移転事業などを担当する常務自身が出席するはずでした。しかしそもそも、常務は今回の着工を時期尚早と考え、いたずらに移転を急ぐべきでないと訴えていたんです」

道新は近い将来、札幌・大通東地区に新社屋を建設して本社機能を移転、現社屋の建つ場所に新たな商業ビルの建設を計画している。札幌中心部という立地を活かした不動産事業で経営の立て直しをはかる構想だが、実際には現時点で具体的な収益増の見通しが立っておらず、亡くなった常務は幹部らの根拠なき楽観論に警鐘を鳴らしていたという。

「官房長官」の重責から来るストレスも小さくなかったようで、昨年秋には自ら退任を願い出るほどだったが、社長の慰留により以後も続投を余儀なくされることに。「几帳面で繊細」と評される常務は、それまでも体調不良で長期休業せざるを得なくなったことが少なくとも2度あり、うち1度は職場の同僚による陰湿なハラスメントが休職の原因だったとされる。そうした経緯を承知している筈の会社が退任申し出を聴き入れなかった結果、常務の命を縮めることになった可能性もある。

役員急逝について当日の状況などを確認する取材に、道新経営管理局は「本紙朝刊に掲載している以上のことは差し控えさせていただく」と、また札幌市内に住む常務の親族は「(取材は)ご遠慮願いたい」としている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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