久留米商工会議所本村会頭、放漫経営の実態|債権放棄で消えた7億円超|福岡県民が尻拭い

 2013年(平成25年)10月頃、地元の老舗酒類卸として知られていた「本村商店」が粉飾決算を行っていたことが発覚する(既報)。当時、同社の代表取締役社長を務めていたのは、昨年11月に行われた福岡県久留米市の商工会議所会頭選挙で6選を決めた本村康人氏(75)。本村商店は、放漫経営が原因で事実上の経営破綻となり、2017年(平成29年)8月に酒類食品卸大手「イズミック」(本社:愛知県名古屋市)に買収される。現在ある「本村イズミック」はまったくの別会社だ。

 事業譲渡に道筋をつけたのは、過大な債務を背負った中小企業などの事業再生を支援する「地域経済活性化支援機構(REVIC)」のスキーム。普通なら本村氏の自宅は差し押さえられ、「会頭」としての地位も返上されていたはずだが、地元経済界への影響を考慮した関係者の温情で、本村氏の自宅は身内の名義に変える形で残り、会頭も継続することになった。

 本村氏本人の無責任・無節操には呆れるしかないが、その裏で、多くの市民・県民が多大な損害を被っていたことは、ほとんど知られることなく今日に至っている。経営者ではないほとんどの国民にとって、暮らしとは縁が薄いと思われがちな商工会議所。しかし、本村氏が「本村商店」を潰したことによって、会議所とは何の関係もない市民・県民に巨額の損失を与えていたことが分かった。

■放漫経営で12億円以上の借金

 ハンターは、旧・本村商店がかつて所有していた土地などの登記を1年かけて調査。2015年12月に関係者が事業再生計画に着手した時点での、金融機関及び福岡県信用保証協会への債務残高は約12億5,000万円に上っていた。

 旧・本村商店が所有していた物件は、旧本社、東櫛原町の土地、通町の土地、浮羽の倉庫などで、これらの登記内容などから判明した債権額は、およそ以下のとおりだった(*数字は四捨五入したもの)。

・筑邦銀行約6億1,000万円
福岡銀行約3億円
・福岡県信用保証協会約1億9,000万
・商工組合中央金庫約6,300万円
・西日本シティ銀行約2,800万円
筑後信用金庫2,300万円
・福岡中央銀行約1,800万円
・日本政策金融金庫500万円

■県民が尻拭い

 事実上の倒産である以上、金融機関は債権放棄に踏み切らざるを得ない。その額がどの程度のものだったのか、旧・本村商店の関係者などにも取材し、金融機関ごとの債権放棄額を確定した(*数字は四捨五入したもの)。

・筑邦銀行約3億7,000万円
・福岡銀行約1億8,000万円
・福岡県信用保証協会約1億円
・商工組合中央金庫約1,400万円
・西日本シティ銀行約2,000万円
・筑後信用金庫1,700万円
・福岡中央銀行約1,300万円
・日本政策金融金庫300万円

 前述の債権額と、担保権を実行して回収された分を除く債権放棄額を表にまとめるとこうなる。

 本村氏の放漫経営によって、約7億1,700万円のカネが消えた計算となる。つまり、預金者や各金融機関の株主の資金で、本村氏の尻拭いをしたということだ。

■背信行為に重い責任

 最悪なのは、県信用保証協会が1億円もの損失を出したことで、債権放棄した金融機関と何の関係もない福岡県民にまで迷惑をかけたという点だろう。責任が、代表取締役だった本村会頭にあることは言うまでもない。市民・県民に7億円以上の損害を与えた人物が、地域経済のリーダーの座に居座り続けているというのだから開いた口が塞がらない。

 商工会議所は、「商工会議所法」という法律によって規定・運営されている特殊法人であり、同法の趣旨を逸脱することは許されない。第6条には《商工会議所は、その地区内における商工業の総合的な改善発達を図り、兼ねて社会一般の福祉の増進に資することを目的とする》とその目的が謳われており、その上で《商工会議所の体面を傷つけ、又は商工会議所の目的遂行に反する行為を行った会員》は除名(22条)、《商工会議所の体面を傷つけ、又は商工会議所の目的遂行に反する行為を行った議員》は解任することができると規定する(44条)。

 久留米商工会議所の会頭という立場にありながら、金融機関の預金者や株主に多額の損失を与えただけでなく、保証協会に1億円を肩代わりさせることですべての福岡県民に損害を与えた形の本村氏は、《地区内における商工業の総合的な改善発達》を阻害し、《商工会議所の体面を傷つけ》たのであるから、会議所の会員としての資格も、議員としても資格も、失っていたと考えるのが普通だろう。

 周囲の温情をいいことに、何の責任もとらずに図々しく会頭職にとどまり続けた行為は、市民に対する背信行為に他ならない。久留米商工会議所には、この点について組織として事実確認を行い、改めて本村氏の会頭としての適格性を問い直す責任がある。できないということあれば、それは県民に対する商工会議所の背信行為。県費から補助金をもらう資格はあるまい。

 久留米商工会議所の公式サイトには 『商工会議所は、地域の商工業者の世論を代表し、商工業の振興に力を注いで、国民経済の健全な発展に寄与するための唯一の地域総合経済団体です』とある。本村氏は、胸を張ってこの一文を読み上げることができるのだろうか。

 

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