警察官の強制わいせつ、被害者“身内”で隠蔽か?|加害者は不起訴に

1月中旬に本サイトで報告した北海道警察の未発表不祥事について(既報 )、警察官による性犯罪の被害者が同僚警察官の親族だった可能性が浮上した。加害者の警察官は昨年8月から強制わいせつの容疑者として捜査を受けていたが、結果として不起訴になったことが分かった。

■「事件揉み消し」の指摘も

既報の通り、道警の警部補による強制わいせつ事件が起きたのは昨年6月25日夕。道警は事件を報道発表せず、また容疑者となった警部補を逮捕しなかった。

在宅捜査の結果、8月24日付で警部補は書類送検、併せて「減給10分の1×6カ月」の懲戒処分を受けたが、この処分も発表を免がれたため、事件は現在に到るまで新聞・テレビなどで報じられておらず、多くの道民にとって「なかったこと」になっている。それどころか、処分の記録では処分理由が「強制わいせつ」と明記されず、「不適切な言動」と書き換えられていた。

一般の道民がこの事件の概要を知るには、まず不祥事の記録を公文書開示請求で入手し、それをもとに改めて事件捜査の記録を入手するという二重の作業が必要となる。

当事者の警部補は、処分を受けた直後に辞職したとされる。事件の背景を知る関係者によれば、元警部補は事件当時、釧路方面管内の警察署に勤務していた(釧路署、厚岸署、弟子屈署、根室署、中標津署、池田署、本別署、帯広署、新得署、及び広尾署のいずれか)。

驚くべきことに、わいせつ事件の被害者は元警部補と同じ署に勤務していた警察官の親族なのだという。元警部補は部下の親族に対してわいせつ行為をはたらき、にもかかわらず身柄拘束を免がれて書類送検で済まされていたのだ。「警察の隠蔽にほかならない」と憤る関係者は、「署長ら幹部は加害者・被害者に示談を促して事件を揉み消した」と証言する。

筆者は加害者の元警部補らと接触できておらず、事実関係の裏づけを得られていないが、先の証言をもとに取材を進めたところ、元警部補と同じ名前の人物がまさに昨年8月24日、強制わいせつで釧路地検に書類送検されていたことがわかった。同地検は11月2日付で元警部補を不起訴処分としたが、理由は明かしていない。

元警部補の部下は事件後、別の署への異動を願い出たが、幹部はこれを聴き入れず、引き続き同地で勤務に就かせているという。被害者の女性は精神的なショックで現在も通院中といい、先の証言者は「彼女が妙な気を起こすなど万が一のことがあったら、誰が責任をとるのか」と訴える。なお、元警部補の不起訴処分に不服がある場合、地元の検察審査会への審査申し立てが可能だが、現時点で被害者からの申し立てがあったかどうかは確認できていない。

一連の経緯についての事実関係、及び「強制わいせつ」を「不適切な言動」と言い換えた理由、また事件や処分を発表しなかった理由などを尋ねる取材に、道警本部は1月30日付でこう“回答”している。

発表案件ではないことから、取材にはお答えを差し控えさせていただきます

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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