広域連続強盗事件主犯格4人の逮捕で注目される「ルフィ」の正体

日本を震撼させている広域連続強盗事件の犯人グループの中で主犯格とみられている4人が、収容されていたフィリピンの入管施設から日本に強制送還され、警視庁が逮捕した。一連の事件で、「指示役=ルフィ」と称されている人物の正体に注目が集まっている。

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「ほっとしている。首脳会談の最大のテーマが強盗事件なんて格好悪い話は、なんとか避けられそうだ」と話すのは、外相経験もある国会議員。2月8日、フィリピンのマルコス大統領が来日し、岸田文雄首相らと会談を行う。世界が注目しているのは台湾有事を巡る米中の対立。フィリピンは、東シナ海を挟んで台湾の南側に位置するという地理的に微妙な位置関係にある。台湾有事となれば、当事者にもなりかねないだけに、アメリカと同盟関係にある日本にとっても非常に重要な首脳会談となる。

「日本とフィリピンの首脳会談で最大の議題となるのは米中対立や台湾有事への対応と協力関係。そして、2,000億円の政府開発援助(ODA)だ。土壇場までハラハラさせられたが、会談前にルフィの問題が片付いた。フィリピンでは、入管施設といっても拘置所か刑務所のような場所。そこから携帯電話で日本に指示をとばして強盗させるというのは、世界中にフィリピンが無法地帯だと知らしめているようなものだ。早期の強制送還実現で、日本もフィリピンも面子を保つことができたという感じだ」(前出の国会議員)

当初「振り込め詐欺」をはたらいていたグループが、最後は強盗殺人事件にまで凶暴、凶悪化したこの広域連続強盗事件。2019年に1度はフィリピンでグループ36人の日本人が摘発されたが、今回強制送還された今村磨人容疑者(38)と藤田聖也容疑者(38)、次に送還が決まった渡辺優樹容疑者(38)と小島智信容疑者(45)は捕まっていなかった。

その後、4人が身柄拘束されたのは2021年5月。4人は入管施設に移送されたが新型コロナウイルス感染拡大などもあって、強制送還が難航していた。その間に、入管施設に携帯電話やパソコンを持ち込み、SNSで「闇バイト」を募って凶悪な犯行に及んでいたというわけだ。

記者団から“警察に責任はないのか”と問われた谷公一国家公安委員長は、「フィリピン当局に強制送還を求めていた。何もしていないということではない」と釈明に追われ、ついには岸田首相までが国会で「大変大きな不安を国民が感じている。早期の解決を図る」と述べなければならなくなった。

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一連の事件がどれほど凶悪なものか示しているのが昨年11月に山口県岩国市で起こった強盗未遂事件。「闇バイト」で即席の犯行グループを結成していた5人がすでに起訴され、そのうちの一人である渡邉翼被告については今月2日に山口地裁が懲役2年6か月の実刑判決を言い渡している。その裁判の冒頭陳述や論告求刑で、検察側は事件の手口を、およそ次のように明かしていた。

・昨年11月2日頃、カネに困っていた渡邊被告はSNSで「日当100万円」という投稿をみつけて連絡をとった。スマートフォンには秘匿性が高いメッセージアプリ「テレグラム」をインストールして使っていた。

・すぐに「報酬が100万円のタタキの仕事という返信があり、渡邊被告は「タタキ」の意味が分からず、ネット検索したところ「強盗」だと知ったが、カネ欲しさに仕事として承諾した。

・「11月6日に山口で仕事がある。まず、広島に行ってほしい」との指示に従って事前に東京都から広島に向かい、現地で共犯者となる石栗一樹被告及び北条マクサンドリ被告とキャラバン車で合流し、犯行用に手袋を渡された。

・同日早朝、渡邊被告ら犯行グループは、岩国市内の民家近くに到着。狙いをつけた民家の写真をスマートフォンでみながら、「被害者方には金庫が2つあり、合計1億円がある」、「人がいれば縛っちゃおう」、「もし金庫の番号がわからなければ、カッターナイフで脅して聞くだけ」などと強盗を実行するにあたっての謀議を図り、同日午前4時ころ、民家に押し入ろうと窓ガラスをハンマーでたたき割ろうとした。しかし、窓ガラスが割れず退散することになった。

・犯行グループは11月7日を再度の決行日として民家に向かった。偶然、施錠されていなかった窓ガラスから侵入。渡邊被告は、民家の2階にあがり、カッターナイフを手にして被害者に「静かにしろ」と脅した。そして、結束バンドなどで被害者の手を縛ったが、被害者が大声で助けを求めた。そこに、別の家人がやってくると共犯者の北条被告が「殺すぞ」などとカッターナイフで脅した。

・家人は対抗しようと、日本刀を取り出して、応戦。犯行グループは2人がかりで家人を押さえつけたところ、日本刀を引き抜かれたことで、犯行を断念し逃走した。しかし、犯行グループの1人が切られそうになり、家人から日本刀を奪って庭に放り捨てた。渡邊被告はその時、逃げ遅れて警察に逮捕された。

渡邊被告は裁判で罪を認めて謝罪したが、山口地裁は「安易にカネ欲しさから強盗に加わった」として実刑判決を言い渡した。また、犯行グループの運転手役だった上野晴生被告の裁判もはじまり、検察側は「ルフィと名乗る人物から命じられ、警察官を装いキャッシュカードをだまし取った。それを使い130万円をATMから引き出した」と指摘している。上野被告は犯行前、「東京でルフィにあって指示を受けた」という。

ルフィはフィリピンから送還された4人なのか、それとも日本にいる別の人物なのか――。4人の逮捕が、広域連続強盗事件の早急な全容解明につながることを期待したい。

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