維新参戦で混迷深める奈良県知事選挙

今年4月に予定される奈良県知事選挙。自民系二人の立候補表明で保守分裂となりそうなところに日本維新の会が加わり、「三つ巴」の混戦となりそうだ。

◇  ◇  ◇

立候補を表明しているのは、自民党の奈良県連が党本部に推薦を上申している元総務官僚の平木省氏(48)と現職で5期目を目指す荒井正吾知事(78)。そこに日本維新の会『公認』候補として新たに登場したのが、元生駒市長で弁護士の山下真氏(54)である。

奈良といえば、高市早苗安全保障担当相が県連会長を務める地元。県政界関係者の間では、保守分裂の原因について、「高市氏と荒井知事の調整不足」との指摘する声が多数を占めている。

自民党本部は、統一地方選を前に「多選」は回避すべきという方針を打ちだしている。荒井氏は今度が5期目。しかも年齢は78歳で、当選しても任期中に80歳を超える。ある自民党の奈良県議が、県連の裏事情をこう打ち明ける。
「荒井知事は多選に加え高齢。高市先生が後継を模索しはじめるのは当然のことでした。荒井知事も党本部の方針はわかっているので、勇退するだろうとほとんどの自民党の県議や市議は思っていたんです。それに反発したんでしょうが、事情を知っている荒井知事が5期目を目指して出馬なんて信じられません。しかし、高市先生も甘かった。トップ会談で荒井知事をねぎらっていれば、(荒井氏は)出馬を見送っていたと思いますよ。高市先生に責任があるのは事実でしょうね」

平木氏は、高市氏が総務大臣時代に秘書として仕えた人物。当時から、高市氏の地元の奈良でなんらかの選挙に出馬するのではないかというほど、目をかけられていたという。

「平木さんは非常にできる人間でした。大臣の秘書官は朝7時頃から夜11時くらいまでずっと大臣に張り付きます。できないヤツはすぐダメ出しされます。高市先生も平木さんが使えると踏んで、奈良に呼んだと聞いています。だらか大事にしてきた。それに平木さんの妻は敏腕弁護士なので、お金にはそう苦労しないだろうというところもあったのではないですかね」(総務省官僚の話)

平木氏は、県議や市議に連れられ地元まわりに余念がない。「選挙は4月、もう3カ月もないのに保守分裂に加え維新が参戦してきた。『平木って誰?』と聞かれるほど知名度がないですから……。どうしたものか」(前出の県議)

一方、荒井知事は1月27日に「あらい正吾君を励ます会」という政治資金パーティーを開催。知事選出馬が決定的となった。荒井知事の支援者によれば会場の入りは半分程度。ため息交じりに感想を漏らす。
「やってきたのは、奈良市の仲川げん市長、橿原市の亀田忠彦市長、大和郡山市の上田清市長など本人出席の首長は10人程度だったかな。代理出席の町長が4人。平木氏応援の県議、市議らはほとんど来ませんでした。県議で荒井支持にまわってくれているのは10人足らず。前回の選挙前のパーティーは熱気むんむんだったので寂しい感じはありましたね」

だが、荒井知事も負けてはいない。実は平木氏の自民党推薦は、まだ党本部で認められていないのだ。知事は昨年12月末にわざわざ永田町に二階俊博元幹事長をや古賀誠元幹事長など党に睨みが聞く「重鎮」を訪ねて、知事選出馬の意向を伝えていた。「二階先生からは『頑張るように』といわれたと、普段は愛想がない荒井知事は嬉しそうにメディアに語っていた」と地元メディア関係者はいう。

荒井知事は元国土交通省の官僚で、海上保安長官を経て参議院議員を1期務めた後、2007年に知事選で初当選。参議院議員時代は宏池会に所属していた。そのキャリアから「地元のバッジ組(国会議員)で、荒井知事がまともに口を聞くのは高市先生だけ」(前出・県議)、というほどの権勢を誇ってきたという。事情に詳しい自民党の大臣経験者は言う。
「奈良県知事選は困った状況だ。安倍元首相が健在なら、高市が泣きついて平木に決まっただろう。しかし、高市には安倍元首相のようなバックがいないし、派閥もない。荒井知事はさすがで、そこに付け入ろうと、二階さんや古賀さん、さらには亀井静香さんらを動かして、県連の平木氏推薦を白紙にしようと動いている。岸田首相も宏池会に所属していた荒井知事を無下に切ることはできない。反対に高市が調整できないことになり、ライバルを蹴落とすには好都合という政治的な思いが働いてもおかしくない」

奈良県の職員によれば、「上京して省庁に予算陳情、要望に行く時でも、国会議員を頼らずに荒井知事の人脈でアポイントをとります。中には、事務次官が対応してくれる役所もあります。普通、上京すれば議員会館で国会議員の先生の事務所に挨拶まわりして名刺を置いていきますが、荒井知事はやりません。代わりに職員が行くんです。高市先生以外の国会議員は眼中にあらずって感じですよ」という実態らしい。

しかし、自民党推薦で当選できるほど甘くないのは、2月5日に投開票があった北九州市長選でも明らか。奈良で日本維新の会が公認した山下氏は、朝日新聞記者から弁護士となり、生駒市長に3期連続当選。知事選への出馬経験もある。知名度では荒井知事に匹敵しており、年齢も54歳と若い。2015年に荒井知事VS山下氏という構図になった知事選では、荒井知事の28万票に対し、山下氏は22万票と善戦した。当然、自民党の地方議員からは悲鳴が上がる。
「保守分裂で選挙に突入すれば、若くてフレッシュな維新の山下氏にやられる。山下氏なら、これまで荒井知事がやってきた県政はすべて否定されるはずで、荒井知事もそこを理解して高市氏とトップ会談し、名誉ある撤退をすべきだ」

勢いが増す一方の維新・山下氏。だが、その山下氏に関する怪文書が出回る騒ぎとなっている。(以下、次稿)

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