【2023奈良県知事選】維新候補絡みの怪文書登場

保守分裂に加え日本維新の会の参戦で「三つ巴」の戦いとなることが確実となった今年4月の奈良県知事選挙。立候補を表明しているのは、5期目を目指す現職の荒井正吾知事(78)と自民党奈良県連が推薦している元総務省官僚の平木省氏(48)、日本維新の会公認で元生駒市長の弁護士・山下真氏(54)の3人だ。

3人の中で、現職の知名度に並ぶとみられているのが山下氏。生駒市長に3度当選し、2015年には知事選で荒井知事に挑して善戦した他、17年には奈良市長選で現職の仲川げん氏を2千票差までに追い詰めた実績がある。その山下氏を抱える維新陣営の勢いを恐れたのか、県内の関係者の間に「怪文書」が出回っている。

■本命視される元生駒市長

「維新として知事選を見据え、山下氏に対し、粘り強く交渉を重ねて公認にまでこぎつけた。自民党は保守分裂となる可能性が高く、山下氏は勝てる候補だ」と日本維新の会の幹部は期待を込める。

山下氏が市長を務めた生駒市は奈良市の西側に位置し、大阪府に隣接するベッドタウンで人口は約11万人。奈良県全体の人口約132万人の中で、奈良市と生駒市の人口を合わせると48万人となり、県人口の3分の1ほどになる。

県知事選や奈良市長選で善戦した実績があり、生駒市長だった山下氏を「本命」と見る向きは少なくない。

出馬会見で山下氏は、荒井知事の県政を徹底的に批判。「維新の改革と目指す方向が一致した」と公認を受けた理由を説明し、同席した日本維新の会の馬場伸幸代表は「官僚ではない民間からのリーダーを」と訴えた。

これまで、大阪では圧倒的な強さを誇るも他では結果が出ていない維新。しかし、2月5日投開票の京都府北部の舞鶴市長選では、維新推薦候補が自民党と公明党の推薦候補を破って当選を果しており、勢いに乗る。

また、昨年の参議院選挙でも比例代表の得票では、維新が16万1,000票で、自民党の19万5,000票に次ぐ「第2党」に躍進している。ちなみに公明党は7万1,000票、立憲民主党は5万3,000票だ。馬場氏もそこに触れて、「昨年の参議院選挙でも奈良県では維新の支持が高かった」と自信をのぞかせており、山下氏本人も、自身のSNSに吉村洋文大阪府知事とのツーショット動画をアップするなど臨戦態勢となっている(*下の画像参照)。

■真偽不明の「怪文書」

こうした動きに、ある自民党の県議が危機感を口にする。
「奈良は大阪のすぐ隣。人気のある吉村知事や松井大阪市長らが次々に応援に来るはず。浮動票を根こそぎ維新がとると、保守分裂では勝てない」

だが、維新陣営が顔をしかめるような怪文書が奈良政界にまかれていることがハンターの取材でわかった。2019年の奈良県知事選に絡むものだが、この時の選挙に山下氏は出馬しておらず、荒井知事が前川清成氏(現維新所属の衆議院議員)、医師の川島実氏に圧勝していた。

問題の怪文書は「覚書」と題するもの(*下の画像参照)。「川島実と山下真は2019年4月執行の奈良県知事選及び知事選で(川島氏が)当選した場合、奈良県政運営に関し、以下の通り合意した」という記述で始まる。日付は2019年2月9日。本物かどうか分からないが、川島、山下両氏のサインと捺印がある。

A4サイズ2枚で、第1条から第4条までの項目が並び、山下氏が川島氏に選挙協力することや、県政運営の基本方針、さらには顧問弁護士契約に関する文言が並ぶ。川島氏が知事に就任することが前提ではあるが、県の重要人事に関わる条項まである。

この怪文書の真偽は不明だが、山下氏は2020年4月16日にSNSへの投稿の中で、《生駒市長を辞職して5年前に自ら奈良県知事選挙に立候補し、1年前はこの方(荒井知事)の対立候補の一本化に奔走しました》と記し、19年の知事選に関わっていたことを認めていた。

一連の流れからすると、川島氏への選挙支援を引き換えに、山下氏が利益誘導を図ったともとられかねない書面なのだが、前述したように真偽不明。山下氏に脅威を覚えた勢力による陰謀の可能性も否定できず、真相は藪の中となりそうだ。

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1. 「来てもらうとますます票が減りそうだ」と嘆いていたのは、自民党の島根県議。岸田文雄首相が21日、衆議…
  2. 北海道警察の方面本部で監察官室長を務める警察官が泥酔して110番通報される騒ぎがあった。監察官室は職…
  3. 裏金事件で責任を問われて派閥を解散し、3月に政界引退を発表した二階俊博元幹事長の後継問題に大きな動き…
  4.  三つの衆議院補欠選挙がはじまった。最も注目されるのは東京15区。柿沢未途氏の公職選挙法違反事件を受…
  5. 二階俊博元自民党幹事長の「政界引退」記者会見から約1か月。同氏の地元である和歌山県にさらなる激震だ。…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る