函館地裁がGPS捜査関連文書を短期間で廃棄|苦情申出に第三者委「妥当」答申

裁判所の公文書管理について、各地裁による短期間の「廃棄」を事実上認める第三者機関の判断が明らかとなった。立法・行政の文書管理のあり方と併せ、司法の世界でも公文書の短期間廃棄にお墨つきが与えられたことになる。

■GPS捜査関連文書、函館地裁だけが短期間で廃棄

10月初旬に明らかとなったのは、筆者が最高裁に申し立てていた審査請求(苦情申出)への答申。昨年8月、北海道内の各地裁(札幌、函館、旭川、釧路)に対して同じ趣旨の公文書の開示を求めた際、函館地裁のみ当該文書を「不存在」として開示に応じなかった。このため筆者が同判断の誤りを指摘して文書の再開示を求めたところ、有識者ら第三者で構成する諮問機関は、審査請求から1年あまりを経た本年9月24日付で当初の不開示決定を「妥当」と答申。当該文書は「廃棄されたものと考えられる」とし、改めて筆者の請求を退けた。

求めていた文書は、GPS捜査に関する令状請求への裁判所の対応を定めたもの。当時、違法なGPS捜査事件を取材していた筆者は、同捜査について各地の裁判所の認識などを確認しておく必要があると考えた。

昨年8月14日付で先の4地裁に当該文書の開示を求めたところ函館を除く3地裁が9月下旬までに、『GPS捜査について令状請求があった事例の報告について』なる最高裁発出のメール文書(2016年10月12日付)など複数の公文書を開示した(札幌5種8枚、旭川2種3枚、釧路3種5枚)。

蛇足ながらこの時、各地裁が作成した『報告書』の開示も併せて請求したところ、こちらは4地裁とも「不存在」だった。これにより、19年の開示請求時時点で北海道ではGPS捜査令状の請求が1件もなかったことがわかり、その結果は当時の取材に活かされた(同期間に道内で行なわれたGPS捜査がすべて無令状捜査だったことが裏づけられた)。

当時唯一、文書を開示しなかった函館地裁の決定によると、不開示理由は当該文書が「存在しない」ため。ほかの裁判所が最高裁から受信したメールなどを、函館地裁のみは取得していないというのだ(*下、参照)。

これを不服とした筆者は、ほかの3地裁の開示決定確認後の昨年9月24日付で最高裁に審査請求を申し立て、3地裁の開示文書を示して函館の決定の不当性を訴えた。諮問機関「情報公開・個人情報保護審査委員会」は10月28日に最高裁の諮問を受理、本年8月21日及び9月18日の審議を経て、申し立てからちょうど1年後の9月24日付で「妥当」との答申に到った。

■問われる公文書管理の在り方

審査委員会の答申書には、筆者の苦情を受けた最高裁の弁明が採録されている。少し長くなるが、以下にその一部を引いておこう。

最高裁の弁明
同メール文書は、GPS捜査に関する令状請求がされた事例について随時の報告を求めるものであり、報告期間を「当面の間」としているなど、長期間にわたって報告を求める内容ではないことから、同裁判所においては、短期保有文書としての管理、保存等で足りるものとして取り扱ったことが想定される。したがって、同メール文書について、探索の結果存在しないのであれば、ほかのメール文書等及びこれらに類似する文書とあわせて短期保有文書として既に廃棄されたものと考えられる

確認するが、当初の不開示決定を出したのは函館地裁。今回の弁明の主は最高裁だ。その最高裁は、第三者機関への説明に際し「想定される」「考えられる」などの推測をもって対応している。当事者の函館地裁に確認を求めればわかる筈の事実を、わざわざ推測して代弁した形だ。

審査委は、これを受けてどう判断したか。

審査委判断
本件メール文書の記載内容、最高裁判所事務総長が指摘する最高裁大法廷判決の内容(※筆者註)及びその後の捜査機関における対応を踏まえれば、函館地方裁判所が本件メール文書を短期保有文書として取り扱ったことは合理的であるといえる》

第三者機関もまた、最高裁の推論をよしとしてしまった。もとの文書が最高裁から函館地裁へメール送信されていたかどうかはついに明かされないまま、事後の廃棄の可能性のみが示され、もって「不存在」決定は「妥当」という結論に到っている。疑われる「廃棄」行為そのものも、およそ問題とされなかった。

答申に登場する「短期保有文書」なる文言。似たような言い回しを、少し前までよく眼にしていたことが思い起こされる。即ち「1年未満保存文書」。自衛隊「日報」隠蔽(16年)、森友学園文書改竄(18年)、加計学園文書廃棄(同)、そして「桜を見る会」文書廃棄(19年)…。これらはいずれも行政による政権への忖度が疑われるケースだが、同じような短期間の公文書廃棄が司法の世界でも行なわれていたわけだ。

建前上「分立」している筈の「三権」だが、少なくとも公文書の取り扱いについてはしっかり足並みを揃えていると言えそうだ。

参考までに、筆者の苦情を審査した“第三者”の顔ぶれを以下に記しておく(請求当時)。
・髙橋 滋(委員長:法政大法学部教授)
・門口 正人(弁護士、元名古屋高裁長官)
・長戸 雅子(産経新聞論説委員)

※註…GPS捜査の適法性を判断した2017年3月15日付の最高裁判決( https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/600/086600_hanrei.pdf

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 



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