福岡県八女市の幹部職員が、情報公開請求を行った女性を市役所に呼び出し、請求内容に関連する問題から手を引くよう迫っていたことが明らかとなった。
女性が請求した文書は、2015年に同市で起きた贈賄事件と、その事件の背景となった土地取引きに関係する可能性があるもの。疑惑が再燃することを恐れた副市長ら複数の幹部が、隠ぺいを図るため女性に圧力をかけたとみられる。
ハンターの取材に答えた市幹部は、女性への不適切な言動と副市長からの指示を認めている。
■「圧力」は副市長の指示
八女市の幹部職員から圧力をかけられた女性によると、矢部川河畔で市が計画を進める公園整備にまつわる疑惑が囁かれるようになったため、今年7月末、関連すると思われる道路整備に関する契約書などを開示請求していた。
請求後の8月、顔見知りだった八女市の幹部職員から市役所に来るようにと呼び出しを受け12日に幹部の部屋を訪れたところ、開示請求をあきらめ、三田村市長に関する土地取引き疑惑から手を引くよう数十分にわたって説得されたという。幹部職員は、女性が開示請求した事業の担当ではなかった。
この間、幹部職員はまったく関係のない現職参議院議員(以下、○○議員)の名前を挙げ、「○○議員から頼まれたのか?」「○○議員にも不都合が出る」などと発言。訝る女性が誰の差し金か追及したところ、鎌田久義副市長の指示であることを認めていた。
恐怖を感じた女性は、理不尽な要求を拒否。“▲▲副市長の指示よね!”と確認したところ、幹部職員は「まあ、そうやね」と頷いていた。ハンターの記者も、女性が残した記録で一連のやり取りを確認している。
■背景に疑惑の土地取引き
矢部川河畔で市が計画を進める公園整備にまつわる疑惑とは、ハンターが報じてきた「矢部川水辺公園(仮称)整備計画」に関する問題のこと。この問題を巡っては、ハンターが事業に利用される土地の売買契約書や用地買収を決めた時の決裁文書を開示請求した際、市側が事前に「ある」と認めていた文書を開示日になって「不存在」と主張。抗議を受け不開示決定を取り消すなど迷走し、一転して関連文書を開示していた。
開示された文書を通じ、三田村市政が元立花町議会議員側から不必要な土地買収を行い、その件に絡んで贈賄事件が起きていたことも分かっている。問題の土地のことを「余分な土地」と揶揄した市関係者は、その理由を“買う必要がなかった土地だからだ”と断言している。
■市幹部との一問一答
一般市民である女性への恫喝ともとれる市幹部らの行為は、市長の抱える疑惑が再燃することを懸念した末の「忖度」だったのではないか――。13日、ハンターの記者が女性に圧力をかけたという八女市の幹部職員を直撃した。以下、その概要である。
記者:八女市在住の●●さんという女性を知っているか?
――知っている。記者:その女性を市役所に呼んで、開示請求を取り下げるよう圧力をかけたというのは事実か?
――圧力をかけたつもりはない。女性を以前から知っていて、立派な活動をやっていたので、心配になって話をした。記者:開示請求を取り下げるようにと言ったのではないか?
――それはない。記者:しかし、女性の側は『請求を止めるよう言われた』と証言している。そうとられる言い方をしたようだが。
――個人的に、ということ。記者:個人的にという言い訳は通用しない。女性を呼んだのは市役所の中のあなたの部屋。しかも午後3時だ。役所の業務時間であり、明らかに公務ではないか。
――それは、たしかにまずかったと思う。記者:あなたは、「副市長に頼まれたのか?」という何度かの女性の確認に対し、最後の2回は認める発言をしている。間違いないか?
――そうだったと思う。記者:現職の参議院議員の名前を持ち出し、議員側の事情について発言したようだが、何の関係があるのか?
――・・・・・・。記者:参議院議員にも取材するが、女性の開示請求と何の関係があるのか?
――(その女性が)巻き込まれないように、ということで・・・・・・。記者:何に巻き込まれるのか?
――・・・・・・。記者:背景にあるのは、市長の借金問題ではないのか?
――私の口からは、何とも言えない。
■女性ー「怖かった」
「圧力」を受けた女性は、「怖かった」として次のように話している。
「情報公開請求をかけたとたん、役所に呼び出されて『手を引け』と言われました。以前から知っている職員なんですが、正直、怖いと思いました。その職員は、私が情報公開請求した事業の担当ではありません。市の組織ぐるみで、私のやっていることを監視しているのかと思うと、ぞっとしました。副市長の指示かどうか何度か聞いて、『まあ、そうやね』と言ったので、最後にもう一度念を押したんです。私は女だし、組織をバックに何かをやっているわけではない。ただ、疑惑が浮上したので、関係があるのかどうか知るために情報公開請求しただけです。政治的な思惑など一切ない。何を勘違いしたのか分かりませんが、重要な何かを隠そうとしているのは確かだと思いました。でなければ、一般市民を市役所の幹部の部屋に呼んで、手を引けなどと言うはずがありません」