国会で追及された事件に絡む案件に鹿児島県警幹部が不当介入し、鹿児島西警察署が対応すべき告訴状を強引に鹿児島中央署に受理させていた問題で、同署が同一人を“被疑者”として『取り調べ』しながら、同時に“被害者”として『聴取』を行うという、通常ならあり得ない捜査が行われていたことが分かった。
「警察一家」の身内が訴えられた本筋の事件を矮小化し、被害者側の関係者に攻撃を加えようとする意図がミエミエの暴走行為。一連の捜査を指揮している県警幹部の姿勢は、鹿児島県警の腐った体質を象徴するものと言えそうだ。
■著しく公平性を欠く捜査指揮
先週、ある件で告訴された男性(以下「S」)が相手側の関係者を逆に訴えた事案で、本来なら鹿児島西警察署が対応すべきものを、県警幹部が不当介入し、強引に鹿児島中央署に告訴状を受理させ捜査にあたらせていることを報じた(既報)。悪意を持った捜査指揮であることを疑う余地はないが、その後の取材でさらなる重大な問題が浮上した。
本筋の事件で告訴状が受理されたのは昨年1月。告訴状を受理し、捜査にあたったのは鹿児島中央署の「強行犯係」だった。ところが、Sの父親は、今年3月まで中央署に勤務していた警部補。<訴えられた人物の父親=利害関係者>を中央署内に置いたまま事を進めるという、公平性を欠く捜査だった。
本筋の告訴事案を他の警察署に捜査させるか、Sの父親を異動させるか、そのどちらかを選ぶべきだったが、県警は事態を放置。組織内部で、Sの父親を異動させるか、再任用を解くべきとの声が上がったが、無視されたという。
■「被疑者」が「被害者」ー 取調べ室の茶番
一方、本筋の事件で“被疑者”となったSは、同年3月に被害者側の関係者を「名誉棄損」で事実上の反訴。本筋事件の発覚前からもみ消しに動いていた可能性があるSの父親の警部補を勤務させたまま、警察幹部の意向で、西署ではなく中央署に告訴状を受理させ、同じ強行班係を捜査にあたらせていた。
その結果、ハンターが前稿で懸念を示した――《捜査員が被疑者Sに「あなたがやったんですね!」と追及しながら、「Sさん、被害にあわれて大変でしたね」と告げなければならなくなる》――という、テレビドラマでもお目にかかることのない取調室の茶番が、実際に演じられていたことが明らかとなった。
鹿児島中央署の強行犯係は、複数回にわたってSを“被疑者”として『取り調べ』。同日・同時にSを“被害者”として告訴事実についての『聴取』を行うという、前代未聞の捜査を行っていた。
調べ官の目の前に、被疑者であって被害者でもある男性Sが座っているという滑稽な状況―― ある警察幹部OBは、次のように話している。
「鹿児島以外の都道府県警ではあり得ない話だ。まず、被疑者の父親だという現役の警部補が勤務している鹿児島中央警察署が事件を扱うということ自体が問題。その時点で捜査の公平性を欠いている。事件発覚前の段階で、被疑者と被疑者の父親が鹿児島中央署で都合のいい話をしていたというのが事実なら、これも大問題。事件の初動を歪めた可能性が高く、見過ごした中央署の幹部は責任をとるべきだろう。取り調べ中の被疑者が、同時に被害者として聴取されていたというのも違法ではないが、聞いたことがない異常な状態。一連の捜査指揮を執ったのは、おそらく同一人物で、何らかの思惑があると考えてよさそうだ」
本筋の事件を巡っては当初、中央署が「犯罪捜査規範」を無視して告訴状の受け取りを拒否。弁護士の抗議を受けて受理したものの、国会で鹿児島県警の実態を追及されてようやく送検するという異例の展開となっていた。特定の県警幹部が、被疑者Sの父親である警部補の存在に目をつぶっただけでなく、捜査を私物化し、被害者側の関係者を陥れようとしている可能性さえある。ハンターは近く、県警幹部の不当な捜査指揮の実態を示す証拠を公開する予定だ。