衆議院選挙も投票日まであと4日。各地の候補者陣営は終盤戦の追い込みに必死だ。
自民党本部や報道各社の情勢調査によれば、自民党の単独過半数はかなり難しい状況。参議院静岡県選挙区の補欠選挙でも、当選が確実視されていた自民党新人が立憲民主党候補によもやの敗戦。無党派層の支持が野党に流れた結果だった。
同じような傾向が全国的にも見られる。ハンターのホームグラウンド・九州では、大臣経験あるベテランやスキャンダルまみれの現職が苦境に立たされている。
■福岡5区
福岡5区では、衆院当選8回の元環境大臣で自民党の原田義昭氏が、立憲民主党の新人・堤かなめ元県議に大苦戦。自民党本部が行ったとされる10月22日~24日の情勢調査では、原田氏が堤氏に3%のリードを許している。
今年に入って自民党が実施した数回の調査でも、終始堤氏が先行。報道各社の調査結果もほぼ同じ傾向だ。原田氏と公認を争ったあげく、党本部の裁定で引きずり降ろされた栗原渉元県議会議長の票が逃げた結果だ。
栗原氏を5区の支部長に就任させるという条件で実現した候補者調整だったが、地元の自民党関係者は、こう話す。
「原田氏は引退する予定だったはず。ところが、栗原さんが出馬の準備にかかると、急にまた出ると言い出した。派閥のボス、麻生太郎氏の援護射撃で公認になったが、高齢者規定(比例名簿登載は73歳未満)で比例重複はできない。ゴタゴタを印象付けたことで最も大事な無党派層が取り込めない。結局、堤氏が優勢で福岡5区の貴重な議席が消えてしまう可能性が高い。栗原陣営は冷めた目で選挙戦を見ている。原田氏は老醜を晒しているだけだ」
■福岡10区
福岡10区は、元地方創生担当相で当選8回の山本幸三氏の地盤。ここでは、立憲民主党の前職・城井崇氏との激しい争いが続いている。最新の自民党の情勢調査では山本氏が7%ほど城井氏に先行を許している。10月10日の調査では2%ほど山本氏が優勢だったが、逆転された形だ。
「過去、山本氏には歯が立たなかった城井氏だが、前回の選挙から労組中心だった選挙戦が市民目線のそれに変わってきた。城井氏の考えで選挙を戦うようになり、普通の労組選挙とは一線を画しているのがいい方向に出ているようだ。山本氏は73歳で小選挙区のみの出馬。『城井氏は比例復活するので小選挙区は山本へ』と弱気な選挙戦になっている。大臣経験者とは思えないね」(地元の市議)
■長崎4区
長崎4区では、当選7回の北村誠吾元地方創生・規制改革担当相が、立憲民主党新人の末次精一氏にかなりの差をつけられている。
自民党の最新情勢調査では、北村氏が10%ほど末次氏にリードされており、報道機関の調査でも大きく差をつけられる状況だ。北村氏の大臣時代の「失言」を問題視した長崎県連が、県議の瀬川光之氏を公認するよう党本部に求めて混乱していたが、総裁派閥(岸田派)の北村氏を選んでしまった結果だ。
「前回の総選挙では当選しましたが、北村さんの評判が悪過ぎた。自民党県連が瀬川氏公認を求めたのは当然ですよ。政権与党であっても、勝てる候補でなくては有権者は振り向いてくれません。だから瀬川氏がいいとなったのです。瀬川氏を支援した県議らは、ほとんど北村さんの応援には動いていません。末次氏の当選はかたく、午後8時に当確が打たれるかどうかが焦点という情けない選挙です」(自民党の地方議員)
■他のスキャンダル議員たち
この3人に加えて、他の「スキャンダル議員」も危うい。
まず、秘書が当て逃げ事故を起こすなど、これまで何度もスキャンダルが報じられた「魔の3回生」の一員で、宮崎1区から出馬している武井俊輔氏。自民党の情勢調査で、立憲民主党の新人・渡辺創氏が6%ほど優勢になっている。
鹿児島3区では、女子大生との「買春疑惑」が週刊誌で暴露された自民党の小里泰弘氏が、すべての調査で立憲民主党の元職・野間健氏にリードされている。地元では、小里氏のスキャンダルを報じた週刊誌のコピーが「紙爆弾」のようにバラまかれたともいう。
「父親は、大臣経験者で宏池会会長まで務めた小里貞利さん。息子の泰弘は当選5回で、次は大臣という時に大スキャンダルを引き起こした。地元の女性有権者は振り向いてもくれませんよ。自業自得」(鹿児島の地方議員)
同じ鹿児島の1区では、贈収賄事件を起こした鶏卵生産大手「アキタフーズ」(本社・広島県福山市)側からカネをもらっていた宮路拓馬氏が、候補者調整で選挙区公認を勝ち取ったにもかかわらず、立憲民主党の前職・川内博史氏と接戦を演じるという体たらく。重複立候補しているため、再び「比例区選出」の議員になる可能性が消えていない。