北海道警、警部補の強制わいせつ事件を隠蔽か?|処分記録では「不適切言動」

北海道警察で昨年8月に処分があった不祥事で、当事者の警察官が強制わいせつ容疑で捜査を受け、同事件が地元検察へ送致されていたことがわかった。道警は当該処分を報道発表せず、わいせつ事件も公表を控えていたが、公文書開示請求により事実があきらかになった。

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道警で「異性関係不適切事案」の懲戒処分があったのは、複数の公文書によると昨年8月24日。被処分者は北海道内のいずれかの方面本部管内の警察署に所属する警部補で、処分は6カ月間の減給(10分の1)だった。

同じ日にはもう1人の警察官(警察署巡査)が上司への不適切言動で処分されており、同日午後の発表を受けて地元報道が処分の事実を報じることになったが、先の異性関係事案については今に到るまで報道された形跡がない。疑問を覚えた筆者は、同事案が発表されたかどうか、及び事件として捜査されていたかどうかを確認するため、同時期の『報道メモ』や『事件処理簿』などを開示請求した。

これに道警が一部開示決定を出したのは、官庁御用納め直前の12月27日。年が明けて1月10日に関連文書が開示され、問題の処分が報道発表されていないことがあきらかになった。

6カ月間の減給処分は、決して軽い制裁とは言えない。それが公表を免れたのは、なぜなのか――。筆者は現在、道警に確認の質問を寄せているところで、現時点では回答を得られていないものの、これが不祥事の「隠蔽」にあたる可能性を強く疑っている。当該事案が事件捜査の対象となっていた事実がわかったためだ。

道警の『懲戒処分一覧』や『処分説明書』(*下、参照)などによれば、当事者の警部補は昨年6月25日夕、「異性」に対して「不快感を与える不適切な言動をした」という。

いかにも抽象的な言い回しで、これだけではどういう「言動」があったのかがはっきりしない。1月になって開示された文書を紐解くことで、これが「不適切」どころではない犯罪行為だったことがわかった。新たに開示された『犯罪事件受理簿』(*下、参照)の「罪名」欄には、はっきりこう記されているのだ――《強制わいせつ》。

事案は警察本部長指揮事件として捜査され、容疑者の警部補は昨年8月24日付で送検されていた。送致日は懲戒処分のあった日と同じだが、事件が起きたのは先述の通り6月下旬のこと。この間、道警の現職警察官による強制わいせつ事件が報道された形跡はない。

つまり、こういうことだ。道警は6月に起きた事件そのものを公表せず、事件2カ月後の当事者の処分も発表せず、公文書では「強制わいせつ」を「不適切な言動」と言い換えた。これは「隠蔽」を疑われてもやむを得ない対応ではないのか。

複数回の開示請求を重ねてようやくあきらかになった事実。とはいえ12月の開示決定も決して充分な情報公開を果たしていたとは言い難く、わいせつ事件の『事件指揮簿兼犯罪事件処理簿』は12枚中5枚が事実上全面不開示の「のり弁当」状態で、日付を除く事実関係がほぼまったくわからなくなっていた。

わいせつ事件には被害者がいる。そのプライバシーを保護するため事案の公表を控えるという考え方はあるかもしれない。だが参考までに付記しておくと、道警は今年に入ってから少なくとも2件の強制性交事件を報道発表し、公式サイトにそれらの概要を掲載した。容疑者はそれぞれ「自営業」及び「会社員」の男で、被害者はいずれも10歳代の少女。事件のあった市町村や捜査した警察署も明かされている。これらを容赦なく公表しつつ現職警察官のわいせつ罪を隠し続けることに、もはや合理的な理由は存在しないと言ってよい。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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